複雑・ファジー小説
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- 超能力者の落ちこぼれ 参照7000突破感謝!
- 日時: 2016/11/23 09:31
- 名前: ユッケ (ID: K4YD00a4)
科学の発展と共に能力開発に成功し、能力者大国となった日本。
首都東京は東西南北中央の5つの区に分かれ、能力者のみが通う学校があり、能力を使いこなして未来を担う人間の育成に重きを置いている。
能力者には階級が存在し、下から能力者・強能力者・大能力者・超能力者となる。
能力者の中でも最も貴重で上級種に位置する超能力者。
とある噂がある……その超能力者の中には、落ちこぼれがいる。
【第一章】
はじまりについて >>1
超能力者の噂 >>2
夕暮れの公園 >>3
僕は使えない >>4
ゴールデンウィーク1日目 >>5 >>6 >>7 >>10
ゴールデンウィーク2日目 >>11 >>17
ゴールデンウィーク3日目 >>19 >>20 >>21 >>22
ゴールデンウィーク4日目 >>23
今回の一件の後日談 >>24
【第二章】
赤く燃える >>27 >>28
月明かりの下 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33
ダイアの心 >>34 >>35 >>36
夢の叶え方 >>38 >>39
心の奥底 >>44 >>46 >>50 >>56 >>57 >>60 >>62 >>63 >>64 >>65 >>67
今回の一件の後日談 >>71
【第三章】
闇の中で蠢くモノ >>73
シノノメグループ >>74 >>77 >>79
御影 鈴也 >>81 >>82
伝染 >>85 >>86 >>87 >>88
繋ぎ合う手 >>89 >>90 >>91 >>92 >>93 >>94
闇が光に変わる時 >>95 >>96 >>97 >>98 >>100 >>101
人形の世界 >>102
バジリスク捜索隊 >>103 >>104
パワーアンドドラッグ >>105 >>106 >>107
パワージエンド >>108 >>109 >>112
今回の一件の後日談 >>113
外伝 >>114
【第四章】
天使の園 >>115 >>116
東雲 凛人 >>117 >>118 >>119
兎の悩み >>120 >>121 >>122
兎の壊れていく日々 >>123 >>124 >>125
影、忍び寄る >>127
兎の壊れていく日々2 >>128 >>131 >>132
子供であること >>133 >>134
闇は囁き兎の涙は零れる >>135 >>136 >>137
今回の一件の後日談 >>138
【第五章】
悪逆無道 >>140
夏色バケーション >>141 >>142
A‐KISS >>143
星闇躍る夏祭り >>147 >>148 >>151 >>154 >>155 >>161
感情の種 >>162 >>165
中央能力学区の超能力者 >>169 >>170
ロシアのとある没落貴族の話 >>171 >>173 >>174
1番の重み >>175 >>176 >>178 >>179
ムーンライト・シャドウ >>180
Wolf Bite >>181 >>182 >>183
意識の奥、闇の中 >>184 >>185
王国の騎士 >>192 >>193
今回の一件の後日談 >>194
【第六章】
はじめに >>209 >>210 >>211
それぞれの夏休み最終日 >>212 >>213
二学期 >>214 >>215 >>216 >>217
それぞれの思惑 >>218 >>219 >>220 >>221 >>222 >>224 >>225 >>226 >>227 >>228
虚空の少女 >>229 >>230 >>231 >>235 >>236 >>237 >>240 >>241 >>242 >>243 >>244
空っぽ >>245 >>246 >>247
厚貌深情 >>248
動き始めた因縁 >>249 >>250 >>251
王国との激突 >>252 >>253 >>254
王国との激突2 >>259 >>260 >>262 >>263
最強の否定、最大の拒絶 >>264 >>265
降格者 >>268
今回の一件の後日談 >>269
登場人物紹介(能力など、ネタバレ含みますので、第二章以降に見ることを強くお勧めいたします)
三好 祐 >>76 >>172
千年 音羽 >>78 >>172
緋色 赤菜 >>80 >>172
宮本 みより >>99 >>172
一乗寺 クミ >>99 >>177
一乗寺 ミク >>99 >>177
御影 鈴也 >>126 >>177
七咲 千香 >>126 >>177
双葉 小春 >>126 >>177
レイラ >>206
東雲 三代 >>206
東雲 凛人 >>206
木戸 録 >>206
鷹東 キリエ >>207
式宮 アリス >>207
野上 鉄次 >>208
九十九 神矢 >>208
百目鬼 大地 >>208
どうも、ユッケです。
文体などメチャクチャですが、コメント・感想・メッセージ・指導などお待ちしております!
簡単ではございますが、よろしくお願い致します。
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.227 )
- 日時: 2016/01/23 17:56
- 名前: ユッケ (ID: tar6yAGP)
千香達が須崎 灯護を撃破する少し前
特殊骨格をブンブンと振り回していたミクにも、疲れの色が見えていた。
それ程に土御門 錦の能力はミクと三好を苦しめていた。
「お互いに決定打は無いが、俺としては充分に時間稼ぎが出来たとみるがね」
土御門の目的は最初から時間稼ぎだ。三好 祐を捕らえられれば、それ以上は無いが、任務としてはもう完遂と言ってもいいレベルまで来ている。
「クッソ! コイツッ! 嫌な能力だぜ!」
「根本が霊的能力だから戦い辛いんだ。突破口も見つからない。特殊骨格は軽いけど、そのスピードじゃあ相手の幽触には及ばない」
「チィ! なんかお前持ってねーのかよ! 奴の幽触とか、赤毛の炎とか、能力ストックしてねーのか?」
「そうか……幽触は触ってないから使えないけど、炎ならもしかしたら……」
赤菜が影に飲み込まれる瞬間。ギリギリで間に合わなかった。
だが、もし赤菜が炎を託していたとしたら……可能性はある。
「……ある……力を感じる……! 赤菜の炎だ!!」
三好が掌を前に突き出す! 土御門に向かって炎が放射される!
(これが……! 三好 祐の超能力っ!)
土御門は炎の放射を横っ飛びで転がり、なんとかかわす。同時に、これ以上戦えば負けるとも予感した。
「聞いた通りとんでもない能力だな。リーダーが欲しがるのも頷ける」
「キミ達のリーダー? 能力者優位の社会を作るだっけ?」
「そうだ。リーダーが目指すのは能力者優位の社会。能力者の理想郷だ」
「キミはなぜ王国にいるの? 能力者優位の社会って……なんだか……理由は解らないけど、違う気がするっていうか……違和感を覚えるっていうか……とにかく、僕には解らないよ」
「俺は、これからの社会がそうなると思ったから王国に入っただけだ。中にはエグい理由を持ってる奴もいるからな、これは本当だ。
実際、さっきの影の男。須崎 灯護は中学まで陸上部で活躍していた選手だった。
だが、結果を残せば周りからは、能力でインチキをしたのだと勝手を言われ、それは肥大に肥大を重ね、とうとうコーチからも強制退部を言い渡されたそうだ。
無能力者達の陰湿な嫌がらせによって、彼は大好きな陸上競技を奪われてしまった」
「それは……気の毒としか言いようがないよ。冷たい言い方だけど、僕達には関係ない! 僕達に、仲間に手を出さないでよ!」
「それは無理だ。キミには大きな力が宿っていて、その上、バジリスクやキリエと繋がっている。王国に必要な人材。そして、王国としては見過ごせない存在なんだよ」
その声は土御門とは違う声。三好達の前に現れた人物は、一見落ち着いた雰囲気を見せるが、なにやら寒気のようなものを感じるオーラを纏っている。
この人物の登場で、公園内の空気は一変して変わってしまった。
「三好……コイツ……」
「う、うん……」
「はじめまして、三好 祐君。僕が王国のリーダー。現人神 剣(アラヒトガミ ツルギ)だよ」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.228 )
- 日時: 2016/01/24 21:48
- 名前: ユッケ (ID: .JbKK/Zg)
「あなたが……王国のリーダー」
「へッ! キザッたくていけ好かねぇ野郎だ。今ここでぶっ倒しちまえばいいんだ」
「フフ、キミでは僕を倒す事は不可能だろうね。これでもリーダーなのでね、超能力者なんだよ僕は」
「んなこたァ想像ついてんだよ! 私達の怒りを……喰らいやがれッ!!」
「駄目だっ! ミク!」
「…………」
ミクが作り出し、王国リーダー剣に向かって放った特殊骨格の槍。しかし、槍は剣に届く前に先端からまるで蒸発するように消えていった。
「ん……だとォ……! このヤロォッッ!!」
ミクが特殊骨格で猛撃を放つが、全て蒸発するように消えた。前も後ろも左も右も上も下も全ての角度からの攻撃が消えた。
「このォ! このォォ!!」
「うるさいな……これでは三好君と話も出来ないじゃないか……消してしまおうか———」
その瞬間、ドォン! という轟音と共に、地面に亀裂が入った。
王国リーダー剣と土御門がいる地面は何とも無いが、ある範囲から亀裂が見える。
(バリアー……?)
三好は地面の亀裂を見て能力を予想する。
「レイラ・レオンチェフ……キミが来るとはね……」
「残念ながらあんたの計画は失敗よ。御影はこの通り、私が守ったわ」
「皆さん! 無事ですか?」
現れたのはレイラと鈴也。
「レイラ、どういう事?」
「王国は三好を従わせるために人質を取ろうとした。それは緋色だけじゃなく、御影もターゲットだったのよ。2人を強襲したってわけ、まさか2人も人質を取るなんて思わないでしょうからね」
「そんな事を……許さない……!」
「これはこれは、完全に嫌われてしまったようだね。仕方が無い、帰ろう錦」
「わかった。灯護はどうする?」
「彼なら問題ない。行こう」
「現人神 剣!!」
三好の声に剣が振り返る。
「キミの目的は……本当のところはどうなんだ!」
「三好君が言いたい事はよく解らないが、僕は能力者優位の社会を作りたいだけだよ。ではまたいずれ、キミはこの抗争からは決して逃れられない」
そう言うと、剣と土御門は再び歩き出した。
「レイラ、助かったよ。よくここが解ったね」
「クミが連絡くれてたのよ。ね?」
「はい、クミさんマジMVP。今度回ってない寿司でも奢るがいいです」
クミはいつの間にかミクと交代していた。
「よし! 赤菜を助けなきゃ!」
「そっちは問題無用ですよ三好さん。先程千香さんに連絡したところ、赤菜さんの救出は無事成功。皆さん無事だそうです」
「本当!? 良かった〜」
「これで奴らの計画は完全に潰れたってワケ、言った通りでしょ? ああ、それと、三好は千年と一緒じゃないの?」
「音羽? いや、赤菜と話をした後で皆を集めるつもりだったからまだ……」
「そうなの……家にも居なかったし、携帯も繋がらないのよね……」
〜〜〜〜〜剣と土御門 公園を後にして〜〜〜〜〜
「レイラが出てくるとは、意外だったね」
「あぁ、それに灯護からも連絡がない。おそらくしくじったんだろうな」
「バジリスクが相手じゃ仕方が無いさ。それに、“もう1人は簡単だからね”大丈夫さ」
「3人同時強襲……か、涼しい顔してエグい作戦考えやがる」
「予想を上回る計画を練らないと、キリエには勝てないからね」
「キリエか……そう言えばあの2人は大丈夫なのか? 俺は信用してないが」
「神矢と大地かい? 大地はともかく、神矢の破壊力は着実にキリエを追い詰めるよ」
「そうかい……」
〜〜〜〜〜神矢と大地とある廃ビルにて〜〜〜〜〜
「チッ! こいつらもダミーかよ」
部屋には刺青入りの不良達がバタバタと倒れている。
「キヒヒ、これで何個目だよ。グループ潰すの」
「うるせぇよ! あーイライラする!!」
「キリエがいつもやってる“掃除”を手伝わされてるって感じだけど? ちゃんと追い詰めてるのかなぁ? キヒヒ」
「そっちは問題ねぇだろ。……実際、向こうも動いてきてるしな」
途中から声のトーンを下げる。
それは百目鬼 大地も気付いていた。
姿の見えない何かが、自分達を見ている事に……。
〜〜〜〜〜千年 音羽〜〜〜〜〜
音羽は悩んでいた。これから自分達がどうなるのか解らず、学校でも三好と目を合わせることが出来ない程、どうしていいのか解らない。
そんなモヤモヤした気持ちに覆われ、堪らず外に出て散歩に出かけた。
(はぁ……皆どうしてるんだろ……)
音羽は知らない。赤菜の事も、三好達の事も、1人だけ状況を知らずにいる。
(あ……携帯忘れちゃった。まぁいいか、どうせすぐ戻るだろうし)
そんな音羽に近付く人影があった……。
「千年 音羽さん……だよね?」
「え? ……」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.229 )
- 日時: 2016/01/29 03:51
- 名前: ユッケ (ID: .JbKK/Zg)
■虚空の少女■
戻って来た千香達と合流した。
もちろん赤菜も一緒だ。
僕は伝える為に今日、赤菜と会う約束をした。
だから、口を開くのは僕からだ。
「赤菜。この前はごめん。僕は皆を巻き込みたくなかった。でも、それは本当の意味で皆を信頼してなかったって事だと思う。僕がやればいいってそう思ってた。その考えで昔、周りを傷つけた事だってあったのに……僕は同じ失敗を繰り返していた」
「祐は私の事信頼してないんだって、あの時思ったよ。何でも1人でやろうとして無茶する祐に腹が立って、何にも出来ない私自身に腹が立った。
私は1人で王国と戦おうなんて思っちまった。私1人が傷付くならそれでいい。祐に無茶させたくないから、私がやろうって思った。
でもそれって、祐がやってる事と一緒なんだよな。小春に言われて気付いたぜ」
「赤菜。勝手なお願いかもしれない。でも、僕と一緒に戦ってほしい」
「ああ! 一緒に王国もキリエもブッ飛ばしてやろうぜ!」
赤菜が突き出した拳に、僕の拳を合わせる。
温かく熱い何かが、拳に宿った気がした。
そこに皆の拳が合わさる。
「当然、私達も混ぜてもらうわよ」
「馴れ合いは好きじゃない。だが、本当の信頼関係ってやつは否定しない」
「私は姉御だけでなく、皆様に命預けるッス!」
「うっはー! チーム再結成ですよぅ! 宮本もやりますよー!」
「僕だって出来る事はたくさんあります!」
「1人で無茶をしてしまう。今回のお2人の行動には、根底に“誰かを思う気持ち”がありました。それはきっと、ここにいる皆にあるものです。
結局、私達はお互いにお互いが大事なのです。私も、ミクも、そう思っています」
皆で顔を見合わせる。なんだか照れくさいけど、何だってやれる気がする!
王国に、キリエ、敵は強大で謎が多い。でも、僕達は勝つ!
勝って日々を取り戻すんだ!
その為にも……。
「まず、音羽を迎えに行こう!」
「部屋にもいなかったし、電話にも出ないのよ。どこか、あの子の行きそうな場所って知らないの?」
音羽の行きそうな場所か……候補としては、溜り場か……お兄さんの所か……あとは…………。
「クレープ屋ですな」
「いや、一瞬考えたけど……」
「音羽先輩は甘い物将軍ですゆえ。こうなったら手分けして捜すでありますか?」
「う〜ん、いや、1つだけ音羽に連絡取る方法があるよ。気は引けるけど」
「方法があるなら使え。千年の事は早めに見つけた方がいいだろう。私はあっさりと退いて行った王国のリーダーの事が引っ掛かる。
奴は人質を取ろうとした。緋色と御影を同時に襲ってな。
なら、3人同時強襲も考えられる」
「か、可能性はありますね。王国のリーダーは、やけに自信があるというか、落ち着いているようでした。余裕があるようにも見えました。考えてみれば、とても作戦が失敗した風には見えません」
「なりふり構ってられないよね。ごめんなさい先輩。便利に使ってしまって!」
そう言って僕は電話をかける。
頼れる先輩、木戸 録先輩に。
先輩はすぐに電話に出てくれた。
「やあ三好君。最近よく連絡をくれるね。今日はどうしたんだい?」
「もしもし、木戸先輩。実は急用で、先輩の能力を貸していただきたいんです!」
「ワケありって感じだね。いいよ、今モバイルしてる。これで三好君がモバイルを使えるはずだ」
「いつもすみません」
「気にしないでよ。これも先輩の役目だよ」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.230 )
- 日時: 2016/02/01 06:01
- 名前: ユッケ (ID: pVbpOhVU)
そう言うと急用である事を汲んでくれたのか、理由などは一切訊かずに「それじゃ」と言って先輩は電話を切った。切れる前に一言感謝の言葉を言ってからこちらも電話を切り、先輩が快く貸してくれたモバイルで早速音羽に念話を試みる。
(音羽! 今どこに———)
「きゃああああああああああああああああああ!!!」
突然僕の脳内に響き渡る音羽の悲鳴!
まさか、何かあったんじゃないのか!
(音羽! 一体何が? 今どこに———)
「誰ーーー! 頭に声がぁああああああ!!」
(あ……ご、ごめんごめん。僕だよ、祐)
「え? 祐? どうして……」
(詳しくは会って話すよ。今どこにいるの?)
「うん、え〜っと……」
音羽がいる場所は東能力学区の街中にある公園。
利用した事はないけど、場所は知っている。
「じゃあ案内は任せたわよ」
「うん、歩いてもそんなに時間は掛からないはずだよ」
それから十数分歩いて音羽のいる公園へ向かう。道中の賑やかさに、なんだか安心する自分がいた。
街の中にある公園。都会の街並みの中に青々と映える樹木は癒しでもあり、異質でもあった。そんな公園に着いてからというもの、僕達の視線は音羽ではなく、その隣の金髪の青年に釘付けだった。
「まさか王国の———!!」
「違うの、彼女は泉川 日向(イズミカワ ヒナタ)さん。私を助けてくれたの」
「そっか助けて……ってええ!! 彼女!? 女の人?!」
「ふぅ〜ん、男装の麗人か……今までに無いキャラね」
「しかも二重人格なんだって」
「キャラ被りキタッ! クミさんレギュラー落ちピンチ」
「なんだか分かんなくなってきたでありますよ〜」
みよりが代弁してくれた。
本当に訳がわからない!
「じゃあ、これまでの事説明するね」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照3000突破感謝! ( No.231 )
- 日時: 2016/02/01 06:05
- 名前: ユッケ (ID: pVbpOhVU)
〜〜〜〜〜千年 音羽の回想〜〜〜〜〜
「千年 音羽さん……だよね?」
「え? ……」
突然名前を呼ばれて振り返ってみたものの、そこにいる灰色のパーカーにジーンズ、金髪が少し暗く見えてしまう眼鏡のその女性に、私は全く見覚えが無かった。
「あれ? ひ、人違いでしたか? すすすすみません! すみません!」
凄くドンくさそうな人だな〜と思ってしまった。私より年上に見えるのに、何と言うか自信無さ気だ。
「いえ、千年 音羽は私ですが。兄の知り合いの方でしょうか?」
私はこの女性に見覚えが無いので、思い当たるとすれば兄、真也の知り合いだろう。
「ほっ……良かった〜人違いじゃなかった〜。え〜っと、私実はこういうものでして」
彼女が取り出したのは警察手帳。いきなり見せられたもので一瞬ドキリとしてしまった。
兄の件だろうか? それとも私が知らず知らずの内に何かやらかしてしまったのだろうか?
「えっと、私にいったいどういうご用件でしょうか?」
「お話はどこか公園ででも……そう言えば向こうにありましたね。移動しましょう」
「はい……」
緊張と不安と共に街中の公園まで来た。公園にキレイに植えられている樹木達は、街中には不釣合いな緑だが、なんだか心休まる気がした。
「あ、申し遅れました。私は能力犯罪特務捜査班 東北支部 泉川 日向と申します。東雲 凛人さんをご存知ですね? 私は本部の凛人さんの同僚です。
私、今凛人さんが入院している間の穴埋めで呼ばれてきているのですけど、千年 音羽さん、あなたは鷹東 キリエという人物を知っていますか?」
「は、はい。この街で最も出逢ってはいけない人物だと聞いています」
「そうです、そのキリエです。率直に訊きますが、千年さんはキリエに出逢った事がありますか?」
「いえ、出逢った事は一度もありません」
「では、あなたの周りでキリエに出逢った事のある人はいますか?」
正直、その質問が1番困る。来ると解ってはいたが、答えに躊躇った時点でもうそれが答えになってしまった。
「…………」
「正直に、お願いします」
釘まで刺されてしまった。第一印象とは裏腹に、流石は警察だと思うほど取り調べ慣れしている。
「はい、本当かどうかは解りませんが、います」
「お話が聞きたいので、お呼びする事はできますか?」
ほらきた……だから嫌だったのだ。私達は今そういう事が出来る状態じゃない。王国という訳の解らない組織のせいで……半分は自分達のせいで、仲違いやすれ違いをしてしまっている。
しかし、これをどう説明すれば良いのか……。
初めから説明するしかないか……私は心の中で溜息をつきつつ、泉川さんに経緯を説明した。
「そうでしたか……それではお呼び頂くのは難しいですね」
「はい、すみません」
「いえいえ、お気になさらず。では、キリエに出逢った事のあるという人の名前だけ教えていただけますか?」
「はい、それくらいなら。えっと……」
祐達の名前を言おうとしたその時だった。
突然、目の前……私と泉川さんの間にまるで瞬間移動したように男の人が現れた。
それに加えて、泉川さんの雰囲気が少し違って見えた。というかかなり違った。クミちゃんとミクちゃんみたいな感じだ。
「え? ええ?!」
男の人は状況を理解できていないようだった。私もだけど……。
「悪いね、俺の能力で空間を入れ替えたんだよ。で、キミはなぁ〜んでさっきからこっち見てたのかな〜? 俺解るんだよね〜、狙ってる目っていうのがさ……もしかしてキミが王国とかいう組織の人?」
眼鏡を外してサラサラと金髪を靡かせながら尋問する泉川さん。っていうか俺って! 全く別人なんですけど!!
「は、ははは……だったらどうしたって?」
男はパニックを抑えつつ強気に口を開く。しかし、泉川さんは怯まない。
「俺さ〜こういう職種の人なわけ。ドューユーアンダスタン?」
ポケットからチラッと見せたのは警察手帳。金に輝く警察のマークを見て、男の顔はそれとは対照的に青冷める。
「じゃ、じゃあ……俺は失礼します!!」
流石にあっさりと帰って行った。しかも全速力で……無理もないか。
「あ、あの……ありがとうございます」
「うん? まぁ怪しかったからね。キミの可愛さに寄って来たのかと思ったけど、俺が一番乗りだから譲りたくなかったしね」
ぎゃああああああ全く別の人だぁああああああ!!
「あ、あはは……泉川さんって変わってるんですね〜」
「変わってなんかいないさ。そうだ、この近くにおいしいランチが食べられる店があるんだが、ご一緒にどうだい? 間違ってキミまで食べちゃうかもだけど」
「結構ですっ!!!」
「冷たいな〜、そういうキミも魅力的……だと……思う……よ…………ハッ! またやってしまったのでしょうか?!」
眠そうに目を閉じたかと思うとハッと目が開き、我に返えり落ち込む泉川さん。
「あ、あの〜」
眼鏡を装着すると、泉川さんはどんよりとした空気の中愚痴るように喋り始めた。
「はい、さっきのは別の私ですから……ええ、そうです……私はそういう人間なんです……子供の頃自信を持たなきゃって思って、自信家のマネ事をしていたらいつの間にか別の人格が……しかも女好きというオプション付きで……しかもしかも! ボンヤリと覚えているんですよ。入れ替わっている時の事……何度思い出して眠れない夜を過ごした事か!
……そのせいで目の下にはクマができて、高校の時は「目の下にクマ住んでるぞ〜」って言われて、以来アダ名が「クマさん」になって……ブツブツ……ブツブツ……イジイジ……」
「た、大変だったんですね。でも、お陰で助けてもらいましたし! 本当にありがとうございます! 私、能力も弱いから1人じゃ何も出来なかったと思います」
「千年さん……ダメだダメだ私! 私がしっかりしないと!」
「泉川さんは充分しっかりしてると思いますよ。取調べとか上手そうですし。なんというか、こう……静かなですけど迫力がありました。この人の前で嘘は吐けないだろうなって感じました」
「そ、そうですか? いえいえ、私はまだまだです。もっと頑張らないと!」
なんとか立ち直ってもらえたようで良かったと思っていると……。
(音羽! 今どこに———)
「きゃあああああああああああああああ!!!」
突然頭の中に声が響き、絶叫してしまった。
私の突然の絶叫に、泉川さんまで肩をビクゥッ! と跳ねさせていた。
私だめ! こういうビックリ系とかドッキリ系とかホラー系とかそういうのダメ!!
(音羽! 一体何が? 今どこに———)
「誰ーーー! 頭に声がぁああああああ!!」
(あ……ご、ごめんごめん。僕だよ、祐)
「え? 祐? どうして……」
(詳しくは会って話すよ。今どこにいるの?)
「うん、え〜っと……」
イマイチ状況がよく解らないが、確かに祐の声だった。
私はこの能力を知っている。木戸先輩のモバイルだ。
おそらく祐が先輩に借りたのだろう。でもなんで……あ、そうか……携帯家に置いて来ちゃってたんだ。
とりあえず現在位置を教え、待ち合わせる事になった。
祐から連絡があるなんて思わなかったから……なんだか嬉しい。
「えっと、キリエに出逢った事のある人に話を訊きたいんですよね? もうすぐ来ると思います」
「……そうですか、それは……………………」
眠たそうに目を閉じ、眼鏡を外す泉川さん……まさか……。
「キミ達のグループは可愛い女の子が多いらしいじゃないか! 皆きっと宝石のように美しく、子犬のように可愛いんだろうね〜」
「あはは……どう説明しよう……コレ……」
そして、現在に至る……というわけ。
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