複雑・ファジー小説
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- 超能力者の落ちこぼれ 参照7000突破感謝!
- 日時: 2016/11/23 09:31
- 名前: ユッケ (ID: K4YD00a4)
科学の発展と共に能力開発に成功し、能力者大国となった日本。
首都東京は東西南北中央の5つの区に分かれ、能力者のみが通う学校があり、能力を使いこなして未来を担う人間の育成に重きを置いている。
能力者には階級が存在し、下から能力者・強能力者・大能力者・超能力者となる。
能力者の中でも最も貴重で上級種に位置する超能力者。
とある噂がある……その超能力者の中には、落ちこぼれがいる。
【第一章】
はじまりについて >>1
超能力者の噂 >>2
夕暮れの公園 >>3
僕は使えない >>4
ゴールデンウィーク1日目 >>5 >>6 >>7 >>10
ゴールデンウィーク2日目 >>11 >>17
ゴールデンウィーク3日目 >>19 >>20 >>21 >>22
ゴールデンウィーク4日目 >>23
今回の一件の後日談 >>24
【第二章】
赤く燃える >>27 >>28
月明かりの下 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33
ダイアの心 >>34 >>35 >>36
夢の叶え方 >>38 >>39
心の奥底 >>44 >>46 >>50 >>56 >>57 >>60 >>62 >>63 >>64 >>65 >>67
今回の一件の後日談 >>71
【第三章】
闇の中で蠢くモノ >>73
シノノメグループ >>74 >>77 >>79
御影 鈴也 >>81 >>82
伝染 >>85 >>86 >>87 >>88
繋ぎ合う手 >>89 >>90 >>91 >>92 >>93 >>94
闇が光に変わる時 >>95 >>96 >>97 >>98 >>100 >>101
人形の世界 >>102
バジリスク捜索隊 >>103 >>104
パワーアンドドラッグ >>105 >>106 >>107
パワージエンド >>108 >>109 >>112
今回の一件の後日談 >>113
外伝 >>114
【第四章】
天使の園 >>115 >>116
東雲 凛人 >>117 >>118 >>119
兎の悩み >>120 >>121 >>122
兎の壊れていく日々 >>123 >>124 >>125
影、忍び寄る >>127
兎の壊れていく日々2 >>128 >>131 >>132
子供であること >>133 >>134
闇は囁き兎の涙は零れる >>135 >>136 >>137
今回の一件の後日談 >>138
【第五章】
悪逆無道 >>140
夏色バケーション >>141 >>142
A‐KISS >>143
星闇躍る夏祭り >>147 >>148 >>151 >>154 >>155 >>161
感情の種 >>162 >>165
中央能力学区の超能力者 >>169 >>170
ロシアのとある没落貴族の話 >>171 >>173 >>174
1番の重み >>175 >>176 >>178 >>179
ムーンライト・シャドウ >>180
Wolf Bite >>181 >>182 >>183
意識の奥、闇の中 >>184 >>185
王国の騎士 >>192 >>193
今回の一件の後日談 >>194
【第六章】
はじめに >>209 >>210 >>211
それぞれの夏休み最終日 >>212 >>213
二学期 >>214 >>215 >>216 >>217
それぞれの思惑 >>218 >>219 >>220 >>221 >>222 >>224 >>225 >>226 >>227 >>228
虚空の少女 >>229 >>230 >>231 >>235 >>236 >>237 >>240 >>241 >>242 >>243 >>244
空っぽ >>245 >>246 >>247
厚貌深情 >>248
動き始めた因縁 >>249 >>250 >>251
王国との激突 >>252 >>253 >>254
王国との激突2 >>259 >>260 >>262 >>263
最強の否定、最大の拒絶 >>264 >>265
降格者 >>268
今回の一件の後日談 >>269
登場人物紹介(能力など、ネタバレ含みますので、第二章以降に見ることを強くお勧めいたします)
三好 祐 >>76 >>172
千年 音羽 >>78 >>172
緋色 赤菜 >>80 >>172
宮本 みより >>99 >>172
一乗寺 クミ >>99 >>177
一乗寺 ミク >>99 >>177
御影 鈴也 >>126 >>177
七咲 千香 >>126 >>177
双葉 小春 >>126 >>177
レイラ >>206
東雲 三代 >>206
東雲 凛人 >>206
木戸 録 >>206
鷹東 キリエ >>207
式宮 アリス >>207
野上 鉄次 >>208
九十九 神矢 >>208
百目鬼 大地 >>208
どうも、ユッケです。
文体などメチャクチャですが、コメント・感想・メッセージ・指導などお待ちしております!
簡単ではございますが、よろしくお願い致します。
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.277 )
- 日時: 2016/07/10 23:24
- 名前: ユッケ (ID: aWtSrojt)
「超能力者のアンタらなら、この妙な現象だか能力だかに惑わされずに済むものね。じゃあ、私達は帰りましょう」
「そうですね〜。宮本は緊張しすぎて疲れたでありますよ〜。ああでも、先に帰った先輩達にこの事を伝えなくちゃじゃないですか?」
「無駄だろう……たとえ伝えたとしても、事実は変更される」
「うん、おそらくね」
「それはこちらでも実証済みだ……三代も神林さんも何度伝えても犯人がキリエになる」
本当に影響を受けないのは超能力者だけらしい。何度でも事実が変更されてしまう。まるで世界から僕達が切り離されたみたいに……。
「とにかく今日のところは帰りましょう。今日はホントに疲れたわ」
「そうだね。さぁ行こう! みより、ナギサさん」
「うぃ!」
「…………」
「ああ、お疲れ様。協力に感謝する。だが……静原 ナギサ。お前はここに残ってもらう」
入口に向かって歩いていた僕達の足が止まる。それ以前から動いてなかったのはナギサさんだけだったが、それも彼女の選択だろう。……いよいよ、断罪の時間がやって来たんだ。このままナギサさんとシレっと帰るつもりだったのに、彼女は既に覚悟を決めていたようだった。
「そうだ。私は人を何人も殺めた」
「警察として見過ごすわけにはいきません。静原 ナギサさん。あなたを逮捕します」
その細い手首に手錠が迫る。金属が響かせる冷たく嫌な音が耳障りだ。
「ま、待ってください!! ナギサ先輩はキリエに無理矢理命令されてやっただけで……仲間も目の前で殺されてしまったでありますよ! ナギサ先輩は被害者ですよ!」
みよりが一歩勇気を振り絞って前に出る。ナギサさんの境遇を想うなら当たり前に出てくる言い分。弁護の言葉。僕やレイラだって納得してるわけじゃない。でも、だからって罪は消えやしないし、結局そんな言葉は社会のルールに沿っていない子供の発言だ。
「やめないか宮本。でも、ありがとう。気持ちだけで充分だ。私は罰を受けなければならない。私は人殺しだから」
「そ、そんなぁ……」
「そうだ。理由がどうであれ殺人は殺人だ。善人を殺めようが、悪人を殺めようが、そこは決して変わらない」
冷たいようだけどこれがルール。人間が秩序とともに暮らすための掟なのだ。
「どうにも……ならないんですか?」
思うより先に言葉に出してしまっていた。分かっていながらもどうしても納得できない部分。子供だ、甘い考えだと言われても構わない。言葉にしないと気が済まなかった。
「…………今すぐに刑が執行されるわけではない。だからその間に、キリエを逮捕し、静原 ナギサがどの程度被害者であるか証言させる。そうすれば減罪の余地はあるだろう」
「ですから、静原さん。あなたには私達の監視のもと、今回の捜査に加わってもらいます」
「な!?」
「牢獄よりは遥かにマシだろう。それに超能力者ならば事実変更の影響は受けない。キリエの捜索にはうってつけだ。上に話は通してある。あとはキミの了承だけだ」
思わぬ提案に僕達は驚きを隠せなかった。まさかこんな事になるなんて……それに、凛人さんは上に話は通してあると言った。凛人さんも泉川さんも、警察としての立場を貫きながらも、ナギサさんの境遇を考えていてくれたようだ。
「解った。やらせてもらう。全力で協力する」
「減罪を確約することはできません。捜査には危険も沢山ついてまわります。それでも協力していただけますか?」
「私はもう覚悟を決めている。心変わりは無い」
「ありがとうございます。ご協力……感謝……いた……しま……す……」
泉川さんの様子がおかしい。ウトウトと立ったまま眠るように目を閉じて眼鏡をスッと外す。僕達は「あっ」と声を出し事を察し、凛人さんは片手で頭を抱え、溜息交じりに首を横に振っていた。ただ一人ナギサさんだけはキョトンとしていた。無理もない、彼女はこの事を知らないだろうから……。
「ね……眠ったぞ?」
「だ、大丈夫だよ。すぐ起きるから……ハハハ……」
頭に?を浮かべまくるナギサさん。どうやら状況を呑み込めずにいるらしい。まぁ、説明するより体験する方が早いだろう。
「やれやれ……固いんだよ。ね、子猫ちゃん」
「っ!?」
金髪サラサラヘアーにキラキラオーラの泉川さんを目の前に、言葉を失いギギギと軋む音を想像させるかのような首の動きで、こちらに顔を向けるナギサさん。
「まぁ、うん。そういう事だよ」
「静原……頑張りなさい」
「ナギサ先輩ファイトー」
「うむ、よく耐えた方だ泉川。あとは任せたぞ、静原」
「ちょっ!? ちょっと待て!!」
「月夜に照らされるキミはさぞ美しいんだろうね。さぁ子猫ちゃん、夜まで何をして過ごそうか……ナギサ、今夜は……寝かせないよ」
「ギャアアアアアアアアアア!!!」
ナギサさんの悲鳴が署内にこだまし、僕達はそそくさと警察署を出ていくのであった。後ろ髪ひかれる思いではあるが、まぁ、凛人さんや他の警官が何とか対処するだろう。
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.278 )
- 日時: 2016/07/21 23:06
- 名前: ユッケ (ID: aWtSrojt)
その日の夜、時刻は8時くらい、晩御飯を終えて適当なチャンネルでテレビを見ていると携帯端末が音を鳴らした。画面には 静原 ナギサの文字。
「きっとあの事だろうな〜」
端末のロック画面をスライドで解除し、電話に出る。
「やぁナギサさん。こんばんわ」
「う、裏切り者め……」
「ごめんごめん、話すより体験する方が早いと思って」
「背筋が凍ったぞ。あいつはいつもああなのか?」
「うん……まぁそんな感じ。ナギサさん美人だし綺麗だから」
「おだてても無駄だ。まぁ、晩飯一回で許してやる」
「うん、いつでもおいで。……どう? ナギサさんは今、楽しい?」
彼女は僕に自分を救ってほしいと、そう言った。呪われたこの世界から救い出してほしいと……。今はまだ迫る罰で先が見えないかもしれないけど、彼女は少しでも救われているだろうか? 僕は彼女の力になれているのだろうか?
「キリエのもとにいた頃よりはずっといいさ。ああ、救われているよ私は……なぁ三好」
「何? ナギサさん」
「私はお前を信じているよ。たとえ世界が丸ごと変わってしまったとしても、この世界の呪いが全てを覆いつくしたとしても、キミの可能性に私はかけるよ」
「どうして、そんなにも僕の事を?」
「さぁな、ただの猫の気まぐれさ。でも変わる事の無い信頼だよ」
「じゃあ僕はその信頼に全力で応えなきゃね」
「ああ、頼りにしてるぞ。じゃあまた、顔を出せる時は溜まり場へ行くよ。おやすみ」
「うん。おやすみ」
電話が切れるのを待ってから、端末をテーブルの上に置いた。少しでも彼女の力になれていたようで良かった。思えば最初に出会った時よりも印象が変わって見える。
彼女のために出来る事、それはキリエの逮捕だ。彼に証言させる事、それこそがナギサさんを救う道だ。そしてそのバックにいる姫と呼ばれる少女、式宮 アリス。なぜあんな年齢の子供が裏を支配している? 天使の園からどうやって生き残った? なぜ僕と繋がりがある? 彼女については本当に謎だらけだ。
「おっと、今度は誰だ?」
考え込んでいるとテーブルの上に置いた携帯端末が着信を知らせた。画面上には音羽とある。
「もしもし。やぁ音羽」
「もしもし。祐。今日レイラちゃんやみよりちゃんやナギサさんと一緒に警察に残ってたじゃない? なんだったのかな? って気になっちゃって」
「ああ、そういえば伝えてなかったね。あれは……」
ここで、ふと考えが浮かんだ。確かに世界が変わる現象が起きている。それをもう一度試してみようじゃないか。
「音羽、これは本当の話なんだけど……凛人さんをやったのは式宮 アリスという少女で、僕達が以前公園で出会った少女、彼女がそうなんだ。しかも、彼女はキリエに姫と呼ばれている人物で、天使の園の生き残りなんだよ」
「ええ!? ちょ、ちょっと待って! 色々衝撃的過ぎて内容が整理できないよ! えーっと、公園で会った子って夏祭り前に会った不思議な雰囲気の子だよね? それからえーっと……」
電話越しに相当の動揺が窺えた。僕もそうだったし無理もないか。……突如として、世界が暗転するような感覚。やはりきた! 式宮 アリスという証拠を消し去ろうと世界が変わったのだ。
「もしもし? 祐ー? 聞こえてる?」
「ああ、うん、聞こえてるよ。あのさ音羽……凛人さんに怪我を負わせて入院させた犯人って……」
「鷹東 キリエでしょ? くれぐれも気を付けておかないとだよ!」
この現象なのか能力なのか解らない世界を変える力は確かに存在し、式宮 アリスという証拠を消し去り、超能力者には影響を及ぼさない。
凛人さんや泉川さんも試したとは言っていたが、おそらく何度やっても結果は同じなのだろう。
「あ、そうそう! お兄ちゃんがね、もう少しで出てこれそうなの! 文化祭には間に合うと思うな!」
「本当?! 良かったね音羽」
「うん! 祐のおかげだよ、ありがとう」
「慎也さんの頑張りだよ。文化祭に来れるなら、僕達で盛り上げないとね!」
「うん、きっと成功させよう! 文化祭! 明日から準備にかかるだろうから、頑張らないとね」
「うん、じゃあまた明日。学校で」
「うん! おやすみ」
「おやすみ」
電話が切れる。そうか〜慎也さん、出てこれそうなのか。本当に良かった。慎也さんは音羽のお兄さんで、能力を発現させる薬物、パワーをデビルアクトに服用させられてしまい、一時期、中毒者となってしまっていた。
パワーを服用し、目覚めた慎也さんの催眠能力を超能力として僕が使用し、更生できるよう催眠をかけた事である程度回復したのだが、そこからは慎也さんの頑張りだ。慎也さんは戻って来たのだ。
「諦めなければ、可能性はある。呪われたこの世界も、きっと倒せる!」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.279 )
- 日時: 2016/07/30 09:44
- 名前: ユッケ (ID: aWtSrojt)
■やり残したこと■
ふと、誰かがプールへ遊びに行こうと提案した。もう10月に差し掛かろうとしているのにウォーターレジャーとは何だかおかしな話だが、ちょうど客足が引いてきてなおかつ温水プールだからほぼ貸し切りで快適に遊べるのだという。
「おお! それは盲点だったぜ! 今年は海も川も行けてなかったし、夏休みはそれどころじゃなかったしさ、いいんじゃねぇか?」
「そうだね。私も賛成かな!」
「デンキウナギ改めデンキウサギが暴走して皆感電」
「し・ま・せ・ん・よう! クミ先輩は宮本を何だと思っているでありますか!」
「ステキギャグ要員」
「ヒドッ! せんぱーい! クミ先輩がいじめますー!」
そう言いながら僕に泣きついてくるみより。
「おーよしよし。でもいいかもねプール」
「ちょ、ちょっと待ってください! 三好先輩! あの……その……だ、男女比を考えてください!」
「おーおー鈴也、照れ屋さんだなーお前はよ。そんなの気にしてたらモテねーぞ。先輩としてビシッと言ってやれ祐」
フ……そう言われちゃあしょうがない。僕も男だ。先輩として男のなんたるかを……いや、獣とは何ぞやという事を教えてやらねばなるまい。鈴也君の肩にポンと手を置き、優しく諭すように言う。
「鈴也君、これは……大チャンスなんだよ。もしかしたら……ポロ————」
「祐……変な事考えてるなら一発殴るけどいい?」
「久々のバイオレンスヒロイン来た!」
「や、やだなー音羽、何言ってんのさ〜ははは……」
「凄く不純な理由でしたよねー! 三好先輩最低です!」
「何を言うか鈴也君! こういう機会を経て、女性に対する耐性を培って行くんだ!」
「あーはいはい、アホが騒ぎ出したところで、七咲と双葉と静原も誘うんでしょ? 連絡するなら早めがいいわよ」
「うぃっしゅ! 通信部隊宮本が早急にコール致します! ピポパっと」
みよりが携帯をタップして千香の携帯に電話を掛ける。するとほぼワンコールで千香が電話を取る。相変わらず電話の対応が早い。皆に聞こえるようにスピーカーモードにして、かくかくしかじかビリビリウサギとプールに行くことを説明、すると……。
「絶っっっ対に断るっっっ!!」
予想通りの反応が返って来た。しかし、そんな事で諦める僕ではない! 千香の水着は絶対に見るんだ! そうともさ!
「みより君。餌で釣りたまえ」
「イエッサー! あのですね千香先輩、祐先輩が豪華なお弁当を作って来るらしいでございますよ!」
「む……三好の飯が食えるのか……こ、小春! どうする?」
「私は姉御が行くとこどこまでもついて行くッス!」
「そういう事だ。予定を空けておく……ではな」
手短にそう言ってから通話が切れる。千香……なんてチョロいんだ! キミはもうヘビなんかじゃない! たまに手を噛む可愛い仔犬だよ!
「さて、あとは静原ね」
「難しいかもね。彼女は今警察の監視下にあるし、そういう自由はきかないかも」
「駄目で元々! コールしてみるでありますよ! ピポパっと」
数コールの後通話が繋がる。すかさずスピーカーモードに切り替えるが、聞こえてきたのはナギサさんの声ではなかった。
「やぁ兎ちゃん。僕に電話なんて嬉しいな〜。薄暗い森の中で寂しくなったのかい? だったら僕の傍においで———」
プチッ(電話を切る音)。みよりはおっちょこちょいだな〜泉川さんに電話をかけちゃうなんて〜、皆で画面を凝視する。ナギサ先輩と表示されている画面をタップ。今度は1コールで通話が繋がる。すかさずスピーカーモードに切り替え……。
「兎ちゃんが二度も電話をくれるなんて、嬉しいな。デートのお誘いかな?」
「「「「「「「なんでだっ!!」」」」」」」(全員総ツッコミ)
「いやいや、必要な時以外は僕らが彼女の所持品を預かっているのだよ。彼女は王子の到着を待つ囚われのお姫様だからね」
「ある程度予想はしてたけど、やっぱり厳しい監視下にあるって事ですね」
「そりゃあね。僕もこんなだけど警察なわけだし、職務は全うしなきゃね」
「じゃあ、ナギサさんをプールに誘うのはやっぱり無理か……」
「———っ!? プール? いいんじゃない?」
「ふぁっ!?」
「うん、プールいいんじゃない? ナギサ監視の名目で僕も楽園に行けるわけだし、ほら、これ何て言うのかな。WIN WINってやつ?」
「要するに水着が見たいと?」
「イグザクトリー!!!」
「駄目ねこの警官。早く何とかしないと……」
「でもまぁ、これでナギサさんも一緒にプール行けそうだね」
「う、うん。予想外にもOKが出て良かったよ。それでは泉川さん、よろしくお願いします」
「うむ、お願いされた。……ああ! 夢のようだッ———」
最後になんか聞こえた気がしたが、まぁスルーしておこう。
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.280 )
- 日時: 2016/08/05 02:30
- 名前: ユッケ (ID: oGzh6o5z)
「じゃあとりあえず、細かい日程が決まったらまた連絡するという事で、今日はこれから何しようか?」
漠然と、プールに遊びに行くという予定だけを決めて、一旦この話はお終い。
家路につくにはまだ早い時間だ。もう少し、皆と一緒にいたい。
「そういや気になってたんだけどよ。皆は文化祭何やるんだ? 私達は男装&女装喫茶だけどよ」
そうなのだ。僕らのクラスは男装&女装喫茶で早々に決定してしまったのだ。何というかその場の一時のテンションというかノリで決まってしまった。もちろん僕は反対派だったのだが、多勢に無勢、抵抗する間もなく決定してしまった。ちなみに主犯は壮一郎だ。
「はいはいはーい! 宮本めのクラスはお化け屋敷ですよー!」
みよりのツインテールが激しくピコピコする。
「みよりちゃんはお化け役ですら怖がって出来なさそうだけどね」
確かに、いざやってみるとその場の雰囲気が怖くて、逆にお客さんにビビってそうだ。うん、容易に想像できる。
「レイラは? 文化祭は何するの?」
「…………レ……さ」
「え? 何だって?」
「コ、コスプレ……喫茶……///]
恥ずかしそうに顔を赤らめて言うレイラ。あれ? 今までレイラのこんな表情見たことあったっけ?
「銀髪ロシアンのコスプレとかマジGJ! 写真撮りまくって今後のネタにしまくりましょう」
「プラチナブロンド! っつーか来るな! 絶対に来るな!」
「へ〜レイラでもそういうのは恥ずかしいんだ」
「う、うるさい! 潰すわよ!」
思わぬタイミングでレイラの意外な一面を見たよ。絶対に行ってやる、レイラの学校の文化祭。
「鈴也は文化祭何するんだよ?」
「僕のクラスはベタにかき氷です」
「へー何着て作るの?」
「…………ちょっと待ってください、三好先輩。どうして特殊な服装前提なんですか!」
「わかった! 口調だ! 執事口調とかメイドさん口調とか」
「いやだから普通にかき氷を売るんですってばー!」
「かき氷のシロップの味は、全部同じ……色だけで味を誤認しているに過ぎないのです。そういう脳に支配されている私達人間は、所詮脳を守るためだけの器に過ぎないというサイコな思想を植え付けることが目的なのでしょう」
「んなわけないでしょーーー!!!」
「かき氷のシロップって、イチゴはイチゴ、メロンはメロンだよ?」
「そーですよ! クミ先輩のいつものジョークですよー!」
「いや、実はアレ、違うのは色だけで中身は一緒なんだよ。色だけで味を誤認させてるっていうのは本当の話」
「う、ウソーーー!!! な、なんかショック……」
「み、宮本もショックを隠し切れませんよーぅ!」
「……で、一乗寺は文化祭何するのよ」
「コスプレ銀髪ロシアンよりは恥ずかしくないものです」
「っ〜〜〜! こッのッ!!」
「どうどうどう……でも僕も気になるや、クミが文化祭で何するのか」
「クミさんはたこ焼き屋台やります。しゃーせー」
「おお、案外まとも」
「中身がタコとは言っていない。ニヤリ……」
「お前が言うと冗談にならねぇな。っていうかクミはイカとかタコとか好きだな。わかった! タコの代わりにイカとか入ってんだろ?」
「たこ焼きにイカ入れるとか邪道! そんな奴は国籍を剥奪します」
「いやもっとエグイやつ入れるつもりだろうがよ!」
- Re: 超能力者の落ちこぼれ 参照5000突破感謝! ( No.281 )
- 日時: 2016/08/08 23:46
- 名前: ユッケ (ID: r4kEfg7B)
「日程が被らなければ、全部の文化祭を回ってみたいかもね」
「まぁ、事実上不可能。だいたいどの学校も同じ日に実行」
「あーあ! つまんねぇな〜! どうせなら色んな文化祭を見て回りたかったぜー!」
赤名の言う通り、色んな学校の文化祭を見て回って、皆の学校での姿も見てみたかったと思う。
「……できるでしょ。実現は可能よ。アンタならね」
レイラが僕を真っすぐに見て言う。その眼は刃物のように透き通っていて僕を貫いた。
「レ、レイラ先輩! それは……!」
「そうですね。そこの僕っ子超能力者なら不可能は無い」
「クミ! やめろよ!」
ピリついた空気が一瞬にしてこの場を支配し凍り付かせる。その原因は僕の超能力、確率変換(パーセンチェンジ)。あらゆる確率事象を操る事のできる危険な能力。
「前もあったよね。こういう状況」
「そうね、何ならあの時の続き……やる?」
「レイラちゃんやめて! あの時とはまた違うでしょ!」
「音羽、大丈夫。レイラ、僕は今まで通りに能力を使うよ。今まで通りに、受けた能力を超能力として使う。これなら能力を使わないって事にはならないでしょ?」
「とんだ屁理屈ね。呆れを通り越したわ」
「フフ……僕っ子はもう答えを出していましたか……クミさん的には合格点。変わらないとは案外いいものです。今の関係も結構気に入ってます。さて、銀髪ロシアンコスプレイヤーNEOはどうですか?」
「言ったでしょ、呆れを通り越したって。でも、三好……アンタらしいわ。その能力の危険性も充分に解ってるみたいだし、今まで通りに能力は使うってんなら私は賛成。超能力は選ばれた人間のみが許された特別な力、誇りだけは忘れないことね。
あと、一乗寺! アンタは後で潰す!」
「まぁまぁまぁ、先輩方! 今日はこの辺にしませんか? 日も沈みかけています。そろそろ帰らないとですよ」
「お、そうだな。タイムキーパー鈴也の言う通りだぜ」
「誰がタイムキーパーですか! ほらほら、ここは風が強いですから、これ以上は冷えますよ」
鈴也君に諭されながら皆がドアへ向かい屋上を出る。
「あ、あのさレイラ、クミ、悪かったな。感情的になっちまって」
「私もごめんね。二人の方がよっぽど祐の事考えてたみたい」
「気にしてないわよ。それに、私はこんな方法しか知らないだけよ」
「クミさんはテケトーですから、考えてるようで考えてない〜」
「何ですかクミ先輩、その変な踊りは!? あー! プールの日程はいかが致すのですか?」
最後にプールに行く日にちと時間を決めてから、今日は解散となった。ちなみに千香と小春ちゃん、ナギサさんと泉川さんへの連絡は僕がする。
その夜、泉川さんに連絡を入れると、通常バージョンの彼女が酷く落ち込んだ様子だったのは言うまでもない。
「凛人さんに……凄く……すごーく……怒られました……グスン」
「な、なんかごめんなさい」
「いえ、悪いのは私です。私が自分を管理できてないからこんな事に……こんな……こと……に……で? プールの日程はいつなんだい? そして皆はどんな水着を着てくるんだい?」
収集がつかなくなりそうだったので日程と時間を素早く伝え、電話を切った。さて、当日が楽しみだ。
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