複雑・ファジー小説
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- 僕が贈る愛を【完結!】
- 日時: 2018/09/06 21:01
- 名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)
構想期間半年以上を費やし、ようやく執筆する事ができました。
本作のテーマは「自己犠牲による愛の形」です。
更新もゆっくりですが、それでも読んでいただけますと幸いです。
タイトルはゆづさんのアイディアです!ゆづさんありがとうございます。
- Re: 僕が贈る愛を ( No.31 )
- 日時: 2015/05/31 11:06
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
ヒカリさんへ
ありがとうございます。がんばります。
- Re: 僕が贈る愛を ( No.32 )
- 日時: 2015/05/31 12:05
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
不動仁王(ふどうにおう)。
それは、ハニーが最も恐れている男の名であった。
彼は彼女と同じ南斗十字星学園に所属している高等部二年である。
百八十七センチに九十キロという恵まれた体格を生かし、柔道部、空手部、レスリング部を渡り歩き、それぞれの主将を倒している猛者である。彼はストイックな性格で、般若のような凶悪顔であるためその強さも相まってクラスメートからも避けられていた。そんな彼の噂を耳にし、可哀想という同情から彼の力になろうとしたものの、彼と絡む事で誤解が生じ、カップル扱いされてしまったのである。
ハニーはその認識の違いを解こうとしたものの、それがますます恋人疑惑に拍車をかけるようになってしまった。それ以来、不動は彼女に対し強い怒りを抱き、事あるごとに鉄拳をお見舞いしてやろうと、彼女が行くところどこへでも追いかける復讐鬼と化していた。
その話を聞いた剛力は、自らの頭を押さえため息を吐く。
「お嬢さん、それなら俺に相談すれば、ここまで問題が拗れる事はなかったのではないですか」
「うん、ごめんね」
金髪碧眼の美少女は、俯きがちに呟く。
と、その時店の扉が開いて、凄まじい殺気を放つ人物が入ってきた。
茶色の長髪に猛禽類の如くするどい瞳、赤のカンフー服を着て威圧感を放出するその男こそ、ハニーの因縁の相手である不動仁王だった。
「やっと探したぞ、ハニー=アーナツメルツ!!」
「ふ、不動くん……」
彼女は睨みつける彼を見て、顔が青くなる。
すると剛力は振り向き、不動に向かって言った。
「ハニーお嬢さんから話は聞かせて貰ったぜ。不動、どうやらお嬢さんを苛めたいそうだな。
だが、そう簡単にお嬢さんを渡す訳にはいかねぇな。俺が相手になってやる」
剛力がボクシングのファイティングポーズを構えると、不動はニヤリと笑う。
「どうやら、少しはできるようだな。その構えを見ればわかる。いいだろう、お前の相手をしてやるとしよう」
ふたりの間に火花が散り、誰も介入することができない激しい闘いの幕は——
「君達、店が壊れたら困るから、喧嘩は外でやろうね」
アップルの父により外で切って落とされた。
- Re: 僕が贈る愛を ( No.33 )
- 日時: 2015/05/31 20:26
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
剛力と不動の対決は、アップルの店の近くにある公園で行われた。
見物客はハニーただひとり。
彼女は剛力の事が心配でついてきただけであったが、剛力にとってはそれで十分であり彼女の応援があるだけで百万の力を得たような感じがした。
「では行くぞっ」
不動は憤怒の形相で間合いを詰め、剛力にその剛腕を見舞ってくる。
けれど、日頃ボクシングでフットワークを鍛えている彼には、それを避ける事は容易であった。大きく空振りした自らの拳に目を見開き驚愕する不動。その隙を逃さず、剛力は彼の懐に潜り込みボディーブローを炸裂させた。だが、不動は僅かに後退するだけで倒れるけはいを見せない。普通の少年であれば今の一撃で確実に気絶しても不思議ではないのであるが、そうならないのは、不動が一般の少年とはケタ違いの戦闘力を誇るからに他ならない。
「どうやらお前はボクシングを得意とするようだな。今のパンチはなかなかの威力だった……だが、俺の敵ではないッ!!」
鍛え上げられた足から放たれるローキックは、まともに剛力の足首に命中する。
「確かにボクサーはパンチの威力は凄い。しかし、その反面、普段鍛えていない脚を狙われると脆いものだ」
「……ぐっ」
足に蹴りを受けた衝撃で、よろめく剛力。
「剛力くんっ」
幼馴染でもあり彼女でもあるハニーの声が響く。
『お嬢さんの前で、情けねぇ姿は見せられねぇな』
彼は体勢を立て直し、再び敵に突進していく。
「無駄だと言う事がわからんとは、愚かな男だ。そんなに俺に倒されたいか!」
不動は彼が愚直にも突進してくるものだと予想し、身構えていた。
だが、その予想は外れ彼は不動に拳を炸裂させると見せかけ、背を向け逃走を開始した。
「逃げる気か。そうはさせんっ」
剛力の後を追いかける不動。その様子を心配そうに見学していたハニーに対し、彼氏はアイコンタクトを出した。彼が彼女に伝えた内容、それは——
『俺が注意を逸らしている今の内に逃げてください』
そのメッセージを受け取った彼女の行動は早かった。
すぐさま彼の思いに答えるべく、全力疾走で公園の出口を走り抜けた。
公園を出ても走るのを止めず、体力が限界を来るまでひたすら走った。
それが彼の望んだ願いだったからである。
剛力は不動との戦闘中に考えたのだ。
敵の狙いはハニーただひとり。
自分はただ標的の邪魔者でしかなく、本気を出さずに戦っている。
それでも自分を圧倒するほどの力を持つ男。勝ち目は薄い。
ならば自分が犠牲になって愛する彼女を逃がす時間稼ぎを作るしかない、と。
大好きな彼の犠牲を無駄にするわけにはいかないと、小柄な美少女は涙を流し、街中を走り続ける。ふと後ろを振り返ると、そこには不動の姿はどこにもなかった。
- Re: 僕が贈る愛を ( No.34 )
- 日時: 2015/05/31 21:14
- 名前: 黒陽 (ID: gJy/GGb4)
普段は殺伐とした小説が大好物な黒陽と申す者でございます。
モンブラン博士さんの小説を読んだあとに自分の小説を読むと、無償に泣きたくなってくるのは何故なのでしょうか?
悲しい。更新頑張って下さい
- Re: 僕が贈る愛を ( No.35 )
- 日時: 2015/05/31 21:25
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
黒陽さんへ
それは……私にもわかりません(苦笑)
悲しく美しいけれど、最後に読んでよかったと思えるような作品を目指しています。