複雑・ファジー小説

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僕が贈る愛を【完結!】
日時: 2018/09/06 21:01
名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)

構想期間半年以上を費やし、ようやく執筆する事ができました。
本作のテーマは「自己犠牲による愛の形」です。
更新もゆっくりですが、それでも読んでいただけますと幸いです。
タイトルはゆづさんのアイディアです!ゆづさんありがとうございます。

Re: 僕が贈る愛を ( No.10 )
日時: 2015/05/18 19:06
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

愛欄さんへ
凄く好きと言ってくださって嬉しいです!

Re: 僕が贈る愛を ( No.12 )
日時: 2015/05/30 22:20
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

剛力の愛する彼女、ハニー=弥生=アーナツメルツは、フランス人の母と日本人の父に生まれた少女で、彼の幼稚園時代からの幼馴染である。
同年代とは思えないほど素直で好奇心旺盛な性格のため、幼い頃から大人びた性格だった剛力は彼女を妹のように可愛がっていたのであるが、中学二年のある日、彼女から愛の告白をされたのである。当初は渋った彼だったが、彼女の一途な心に動かされ、付き合う事を承諾したのである。彼は彼女を「ハニーお嬢さん」と親しみを込めて呼んでおり、これまで一度も些細な喧嘩さえなく、非常に仲良く付き合っている。それができるのは、彼女は幼馴染であるが故に、彼の性格をよく知っており、彼の自尊心を尊重しているからこそだ。
学園では孤高な彼を、プライベートで唯一癒してくれる存在が彼女なのである。この日は、日頃の感謝を込めて彼女が大好きなケーキをご馳走してあげようと、彼女を家まで誘いに来たのだ。幸いな事に、ハニーの両親は彼が娘と付き合う事に好意的であるため、突然彼が訊ねてきても驚く様子も見せず、笑顔で家に招き入れ、ハニーを部屋に呼びに行った。彼女は剛力が来たと知るなり、急いで部屋の階段を駆け下り、一階のリビングに来た。
ウェーブのかかった美しい茶色の髪が特徴で全体的におっとりとした雰囲気の漂う彼女は、愛する彼からの誘いを受け、ものの数分で着替えて一緒に家を出た。

「剛力くん、今日は私を誘ってくれてありがとう。ケーキを一緒に食べてくれるなんて、夢みたいだよ。
あれ……? 確か剛力くんって甘い物嫌いじゃなかったけ?」
「ハニーお嬢さん、それは甘口カレー限定です。ケーキはそこまで苦手じゃありませんので、ご安心ください」

その答えに、彼女はほっと胸をなで下ろし、安堵する。

「よかったぁ。剛力くんが甘い物苦手なのに私に合わせているのかと思ったけど、そうじゃなくて安心したよ」
「お嬢さんに喜んでいただけて、俺も誘い甲斐がありますよ」

ふたりは仲良く並んで歩く。
普通のカップルならばここは手を繋いでいるのだが、剛力はそれをしなかった。なぜならば、彼女のいない男子がその光景を見ると、妬むに決まっているからである。人に嫌な気持ちをさせてまで付き合うのは彼の良心が許さなかったのである。さて、ふたりはしばらく歩いていたが、ここにきてピタリとハニーが足を止めた。

「お嬢さん、どうかしましたか」

彼が彼女の顔を覗きこむと、ハニーの瞳はキラキラ輝き、ある一点の方向を指さして見つめている。

「ねぇ剛力くん、あのお店にしようよ!」

彼女が指さした先にあったものは、『ガブリエルのケーキ屋』と書かれた洒落たケーキ屋と、店前で客寄せをしているアップルの姿であった。

Re: 僕が贈る愛を ( No.13 )
日時: 2015/05/19 20:12
名前: 橘ゆづ ◆tUAriGPQns (ID: FpNTyiBw)

こんにちは。
ハニーお嬢さん……そこは、そこはっ((
天使もいいキャラですね。
そして剛力くん紳士……。
この作品がモンブラン博士さんのなかで一番好きだったり←
初心者が上からですみません!これからも無理なく頑張ってください!では。

ゆづ

Re: 僕が贈る愛を ( No.14 )
日時: 2015/05/19 20:38
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

橘ゆづさんへ
ハニーちゃんは少しおっとりしている天然として書いています。

Re: 僕が贈る愛を ( No.15 )
日時: 2016/08/12 21:44
名前: モンブラン博士 (ID: EBP//tx7)

「……お嬢さん、あの店に入るのですか?」

剛力は言葉を選びながら、彼女に訊ねる。
するとハニーは満面の笑みで頷き、

「そうだよ。私、なんとなくわかるんだ。あの店に行くと素敵な出会いが待っているって。だから、入ってみたいの」

大切な彼女の顔を涙に濡らせるわけにはいかない。
けれども、その店はよりによって後輩であるアップルの家なのだ。
剛力は、以前のやりとりで、少なからず彼が自分に対し性別という壁を超えた恋心を抱いている事に気づいていた。しかしながら、彼とはあれ以来学年が別と言う事もあり、話す機会に恵まれなかったため、その思いを確認するまでに至らなかったのである。
だがもしも本当にアップルが剛力に惚れていた場合、双方にとって最悪のシナリオが待ち受けているのは、日を見るより明らかだった。なぜなら剛力とハニーは、曲がりなりにもデート中なのだから。
彼はアップルの繊細で純真な心と彼女の気持ちを量りにかけ、思案した。剛力にとってひとりは同じ学園に通う後輩にして皆のアイドル、ひとりは大切な彼女であるため、どちらを悲しませる訳にはいかなかった。そこで彼はイチかバチかの賭けに出る事にした。
もしも失敗すれば、確実にアップルは枕を涙で濡らすだろう。
けれども今は、彼が恋愛感情を持っていない可能性に賭けるしかなかったのである。

剛力とハニーの存在に気付いたアップルは、胸を強く締め付けられるような苦しみを覚えた。

『あの女の子は、剛力の彼女なのかな……』

ふたりが仲良く会話をしながら、自分の元に近づいてくる。
その光景を、彼は錯覚だと信じようとした。
けれども、それは事実であり、目を逸らしたくても逸らす事のできない、辛すぎる現実であった。彼は、剛力の性格なら女子に好意を抱かれてもおかしくはないとある程度の覚悟はしていた。だが、面と向かってそれを突きつけられると、いかに聡明である彼でも深い哀しみを覚えずにはいられなかった。
けれど彼は溢れ出る涙を手の甲で拭い失恋を受け止め、恐らく客として入るであろう彼らに自分が今できる精一杯のおもてなしをしてあげようと決心した。
それは、並の人間にできる行為ではない。
普通の少年ならば、自分が好意を抱いている人は知らない人間と一緒に仲良く歩いていると、嫉妬の感情をたぎらせるものである。
しかし彼は、まじまじと辛い現実を間近で見せつけられても決して妬みを抱かず、それどころか愛する剛力にとって一番喜ぶ事は何かを考え、身を引いただけでなく、ふたりを歓迎してあげようというのである。
それは、自分の気持ちを犠牲にしてまで愛する人に幸せになってほしいという自己犠牲の精神そのものであった。


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