複雑・ファジー小説

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僕が贈る愛を【完結!】
日時: 2018/09/06 21:01
名前: モンブラン博士 (ID: mrjOiZFR)

構想期間半年以上を費やし、ようやく執筆する事ができました。
本作のテーマは「自己犠牲による愛の形」です。
更新もゆっくりですが、それでも読んでいただけますと幸いです。
タイトルはゆづさんのアイディアです!ゆづさんありがとうございます。

Re: 僕が贈る愛を ( No.3 )
日時: 2015/05/17 07:02
名前: ゆづ ◆zFgdS3PhOg (ID: 9AGFDH0G)

こんにちは。雑談ではお世話になりました。
素晴らしいですね……。
読みやすいし、すっと文字が頭に入ってきます。
続きがどんどん気になります。
なにより人物描写が凄いです。掘り下げてますね……。
と、初心者のざれ言でした。
凄く面白いです!モンブラン博士さん、これならも無理なく頑張ってください。

Re: 僕が贈る愛を ( No.4 )
日時: 2015/05/17 07:10
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

ゆづさんへ
ありがとうございます。登場人物の描写が掘り下げていると言ってくださって非常に嬉しいです。ありがとうございます。

Re: 僕が贈る愛を ( No.5 )
日時: 2016/08/12 21:41
名前: モンブラン博士 (ID: EBP//tx7)

剛力とアップルは、三年の教室を出て歩きながら会話をする。

「えっと、剛力先輩って呼ばれるのと剛力さんって言われるの、どっちがいいですか」
「どっちでもいいさ。お前が好きな呼び方で結構だ。なんなら、呼び捨てでもタメ口会話をしてもいい。その方がお前も話しやすいだろ」
「それはそうですけど、先輩に対して失礼じゃないですか?」
「そんな事どうだっていいじゃねぇか。俺がいいって言うんだから、お前が気にする事なんか何もないと思うがな……」

彼のその言葉に感銘を受け、アップルは母国アメリカでいた頃のように、タメ口で話す事にした。

「剛力は、嫌いな食べ物とかある?」
「嫌いな食べ物か……基本的に何でも食べるから、好き嫌いはあまりないが敢えてあげるとするなら、甘口カレーライスだな」
「甘口カレー!?」

予想だにしない答えに、彼は驚愕した。彼は転校してきた当初から、日本人はカレーが大好きという情報を耳にしていたし、実際クラスメートが給食でカレーが出た時に歓声を上げたのを見て、その情報は事実なんだなと思っていた。だが、ここにきてカレーが嫌いという人間が現れたのだ。彼の中にあった日本人の常識は早くも崩れ去ってしまった。常識だと思っていたことが覆されてしまったのでアップルは少しの間ポ〜っとしていたが剛力に名前を呼ばれ我に返る。

「お前は、何が好物なんだ」
「僕が好きなのはね、アップルパイだよ」
「アップルパイか……確かそれはアメリカの伝統的なデザートだったな。よく作ってくれるのか」
「僕のお母さんとお父さんはケーキ屋さんだから、よくアップルパイを焼いてくれるの」
「そうか……俺も食べてみたいもんだな」

彼は自分の両親が得意としている料理を好きな人に褒められて上機嫌だった。


それから暫くふたりは無言で歩いていたが、ここで校内の中庭に到着した。北徒十字星学園は、剛力の尽力のおかげもあり環境が非常に整っており、中庭もそのひとつだった。まるで花畑のようにバラやひまわり、チューリップやパンジーなど様々な草花が植えられており、見る物を癒す。腰かけるベンチに自動販売機まで設置されているのだから、他校と比べると十分に豪華である。しかしながら、学園のこの中庭は土日は一般の人も入って寛げるように解放してある。

「この中庭素敵だね。いったい誰が設計したのかな」
「さぁな。ただひとつ言えるのは、この中庭を設計したのは匿名の誰かということだけさ」

事実を語るならば提案し設計したのは剛力の手腕によるものであるが、彼は自慢する事をよしとせず、他の生徒には「匿名で中庭設置の案と設計図が送られてきた」と公表している。だが、これは彼のもうひとつの考えによるものであった。
敢えて設計者不明にする事で学校内の七不思議として残しちょっとしたミステリーにしたかったのだ。

Re: 僕が贈る愛を ( No.6 )
日時: 2016/08/12 21:42
名前: モンブラン博士 (ID: EBP//tx7)

魔法は、十二時になったら切れる。
それは、ヨーロッパの昔話を読んだ事のある子どもなら誰がも知っているだろう。魔法が解けた後に残るのは、何だろう。
答えは、想い出である。
夢のような一時を過ごしたという想い出だけが、心の中に残る。
けれど、その想い出は決して消えずに、その人の心でいつまでも輝き続ける。そして、アップルにとっての「夢のような時間」も終わりを迎えようとしていた。
剛力は座っていた長椅子から立ち上がり、男らしいワイルドな笑みを浮かべ、どこかとおくを見て過ぎ去った思い出を懐かしむような口調で告げた。

「そろそろ、下校時刻だ。今日は、お前と話せて楽しかったよ」
「僕も、凄く楽しかった——」

喜びと別れの時間が差し迫る悲しさで、アップルは胸が押しつぶされそうになりながらも、彼に心配をかけさせてはいけないと、敢えて笑顔で言った。立ち上がった彼は自分より背の高い先輩を見上げる。
身長差は十センチ程あるが、この時ふたりは互いの瞳をじっと見つめていた。

「お嬢さん(フロイライン)、じゃあ、また機会があれば、話しましょう。あばよ」

今にも泣きそうな彼の肩にポンと優しく手を置き、夕日をバックに自分のクラスへ向かって歩き出す彼の姿をアップルは一瞥し、踵を返し思い人と同じく教室に帰って行った。

帰り道、アップルの瞳から一筋の雫が流れ落ちた。
それは、自分のためにここまで尽くしてくれた剛力に対する感謝の涙であった。彼は上品でおとなしい性格であるため、感情を高ぶらせる事はない。けれど、その代わり、嬉しさや悲しさを表情と涙で表現するのである。嬉しい時には笑顔で涙を流し、哀しい時は俯き、ポロポロと涙を地面に落としていく。
それが彼なりの感情表現方法なのである。
彼が泣くと、周囲の人間皆が悲しい気持ちになり、笑顔を見せるとそれだけで、皆の心に光が灯るのである。
アップル=ガブリエル。彼は北徒十字星(ほくとじゅうじせいがくえん)のアイドルであるとともに、常に優しく温かな光を照らす太陽であった。

Re: 僕が贈る愛を ( No.9 )
日時: 2015/05/18 13:04
名前: 愛欄 (ID: 8pbPlA7p)

モンブラン博士さん

新連載おめでとうございます!
というか私が見つけてなかっただけなのかもしれませんが…
でも半年かけて考えた作品だけあって、やっぱり奥が深いです
でもやはりモンブラン博士さんらしさも入っていて、この作品凄く好きです!
これからも楽しみにしていますね!


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