複雑・ファジー小説
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- 【合作】IDOL−A Syndrome ~全世界英雄症候群~
- 日時: 2015/12/13 03:31
- 名前: IDL:Project (ID: EZ3wiCAd)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=70
『カミサマを信じてないわけじゃない』
『でも選ぶのは個々の勝手だろう』
『何に使って結果どうなろうが』
『それはあくまで手段に過ぎないのだから』
『使うも自由、使い道も自由』
『思うが侭に楽しめばいい』
『誰だって』
『自分の人生で』
『主人公だろう?』
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【基礎情報】
タイトル:IDOL-A Syndrome 〜全世界英雄症候群〜
小説形式:リレー小説
投稿場所:複雑・ファジー板
ジャンル:複雑
投稿形式:順番制
【参加者様】
現在、リレーに参加している書き手=IDL:Projectのメンバーです。敬称略。
番号がそのままリレーの順番です。何かメッセージがあれば行間にどうぞ。
①空凡
「最近家事手伝いにはまった」
③戦崎トーシ
「こけおどしのししおどし」
④Satsuki
「そろぼち落としどころを考えましょうか」
⑤チャム
「忙しさは12月いっぱい続くんじゃ >年末に向けてバイトの日数増やしたら嫌がらせのような連日出勤の塊が生成されておりましたとさ。うわばらー」
休参者
②Orfevre(高坂桜)
【次回投稿予定者】
空凡 12/12経過
戦崎トーシ 12/18迄
【連絡事項】
参加者様や読者様に宛ててメッセージがある場合ここに追記していきます。
・プロローグが終わりました、これより本編に片足を突っ込んでいきます。
・現在、リク板スレにて追加参加者を募集しています。
【目次】
Prologue:>>1-12
Chapter 1「Mate is behind Team , cannot In」 >>13-36
>>1-36
- Re: 【合作】IDOL−A Syndrome ~全世界英雄症候群~ ( No.1 )
- 日時: 2015/07/30 20:58
- 名前: Satsuki (ID: 3i70snR8)
『
イデア(英:IDEA)とは、人類が手に入れた超能力の一つである。
20AA年に"カミサマ"という存在から啓示を受け、賜ったものだとされている。啓示を受けた者の詳細は明らかになっていない。
この"カミサマ"が一般の宗教的な存在としての"神"と同義であるかは定かではない。一神教の地域では様々な他称がつけられている模様。
今日に至るまで人類はイデアを用いた研究を盛んに行ってきている。
代表的なものでは——
「チッ」
イデアの習得方法は——
イデアによって得られる恩恵とは——
イデアによって人類はどう変わったか——
——など、まだまだ謎は多く、解明には長い期間が必要である。
しかし、人類の発展に関し、このイデアという存在が新しい線路を生み出したのは確かである。
現在、人類が直面している様々な問題に対する解決策としても、超能力という存在が未知の可能性を秘めていることは想像に難くない。
こういった意味でも、イデアの解明は各国が総力を決して研究に取り組むべき案件である——』
「結局全部テンプレ乙、かよ」
男は言葉を吐き捨てた。
右手に握った球体を荒く叩くと、男の前にあったパソコンの白い画面が青く染まる。
《アカウント[江藤遼火]をログアウトしますか?》というポップアップを見ないで前におかれたキーボードのEnterキーを連打すると、青い画面は真っ黒に塗り潰された。
窓から差し込む淡い光に薄く反射した自分の顔を見ながら、はぁ、と男——江藤遼火はため息をついた。
「情報が少なすぎるな。取っ掛かりすら見つからないのはやっぱり辛いか……?」
呟いて、遼火はキーボードの傍らに置いてあったコップを取り上げて口に付け、たところでその中身が空になっていることに気づき、また小さく舌打ちをした。
コップを持ったまま椅子から立ち上がり、部屋を——遼火一人にしてはやや広い部屋を歩き、着いた場所は冷蔵庫の前。
扉を開けて、ドアポケットからガラスボトルを持ち上げ、冷やし貯めしていた麦茶をコップに注ぐ。小さく音が零れた。
中身ができたコップに再び口を近づけ、付け、傾け、一息にそれを飲み干した。カタン、と音を立ててコップを置き、遼火はもう一度ため息をついた。
突然、ジリリリン!と古臭い電話のベルが部屋に鳴り響いた。
静かな部屋に一気に満たされる大音量に、しかし遼火は驚くこともなく電話機を一瞥すると、二度目のベルが鳴る前に受話器を手に取った。
「はい江藤です」
江藤遼火はごく普通の学生である。
何か任務を負っているわけでもない、極秘の研究をしているわけでもない。
先ほど調べていた『イデア』のことも、ただ学校の論文のネタとして使えないかと考えてのものだ。
しかし、ごく普通の学生と表現するには、明らかに、かつ異常に、冷めた目が彼にあった。
「……あーすみません、江藤探偵事務所は閉業しておりまして」
江藤遼火は、探偵だった。
否、正確には違う。遼火の父が探偵だった。このやけに広い部屋も、その名残。
人手不足と言って、遼火はよく父の探偵行の補佐として学業の合間に駆り出されていた。
「届けは出したはずなんですけどね。こちらでももう一度確認してみます。すみません」
常人が普通に過ごしていれば決して出会うことのないような闇を、覗いてきた。
常人から『その道』に堕ちてしまった人の末路を、幾度となく目撃し、時には対峙してきた。
人の闇を追い、覗き、暴くことを繰り返してきた遼火の心もまた、いつしか闇に包まれていた。
その経過か、あるいは賜物というべきか。
いつしか遼火には、物事を黒い視点からをも見て、その真理を有限大に推測する能力が芽生えていた。
人は遼火のその能力を『鋭い観察眼』と言って褒め称えた。
そんなものは遼火は全く必要なかったが。
「いえ、こちらの手違いでもあるかもしれないので。お手数おかけしました、失礼します」
言葉だけは丁寧に締め、遼火は受話器を置いた。再び部屋に静寂が戻ってきた。
今は父は探偵から警察官にジョブチェンジをし、そこでいい女性と知り合って、別の住居を手に入れた。それに伴って、一時的に名義を預かることとなった。
特に異論はなかった。一人でいればお金にも学業にも困るわけでもない、そして一時的にだが広い住居が確保できたのは大きい。
しかし何故か、ひとつ残された電話機からは未だに探偵行の依頼の電話がかかってくるのだ。
この応対も、そろそろ何十度になるだろうか。遼火自身ケータイを持っている身なので、この電話回線そろそろ解約しようかと遼火は考えている。
江藤遼火は、探偵になる気は全くなかった。
かつての父の業績がいくら名高いもので、それに時々とはいえ遼火自身も貢献していたとはいえ、遼火は江藤探偵事務所の看板を受け継ぐ気は全くなかった。
探偵だから得られたものより、探偵のおかげで失ったものの価値に気づいてしまった。
今更取り戻すことはできないだろう。それでも遼火は、せめて限りなく普通に生きていたかった。
「おっと」
再び冷蔵庫を空けて、手を伸ばした先を見て遼火はひとつ声を上げた。
遼火のお気に入りで、逐一買い溜めしていたチョコレートを切らしていた。
このタイミングでか、と遼火は苦笑いを浮かべた。完全に遼火の失態である。
そういえば今月はまだ一回も行ってなかったな、となれば食材の備蓄もそろそろ危ういはずだ。
「買出し行くか」
苦い気分で行くのは気が進まないが、苦い気分のままで過ごすくらいなら軽く運動でもしようじゃないか。
遼火はパソコンデスクから財布を取ると、箪笥横にかかっていた無難な黒いジャケットを羽織り、羽模様のチェーンネックレスを首にかけた。
玄関先まで歩き、そこで黒いスニーカーを履く。少々地味すぎる組み合わせだが、別に女友達と遊ぶわけでもなければ十分適当な服装。
玄関のドアを開ける。隙間から見えた天候は曇り。
雨の匂いを感じ、遼火は黒い傘を手にとって、外に出た。