複雑・ファジー小説

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プリンセスは突然に
日時: 2017/10/14 00:45
名前: 梶原明生 (ID: SKF4GgT1)  

あらすじ

イギリスのケンブリッジ大学に通うジョージ。彼はテレビカメラの前で大変不思議な体験を語っていた。「私は凄く日本に興味がありまして、いえ大好きといっても過言ではありません。しかし私は貧乏学生で、とても日本には行けない有り様でした。しかし、ある人物が声をかけてきて、日本に行かないか。費用は全部こちらが出すからと言われました。すると私は何故かいきなり、憧れの日本に、いえ東京にいたんです。途方に暮れていた私を助けてくれたのが、知也と美子でした。しかし美子は何と、この国のプリンセスだったのです。正式には園部宮美子と言う名前で、天皇陛下の次男のお嬢さんになります。知也は全くの一般青年でした。これからお話しするのは、この二人の不思議な不思議な美しい叶わぬ恋の物語です。」旧知の親友を思い出すかのようにジョージは優しい目をしていた。果たして彼が体験した世界はパラレルワールドなのか現実なのか。憧れの美しき国「日本」のプリンセスを語った御伽噺は今始まる。

Re: プリンセスは突然に ( No.30 )
日時: 2018/07/07 08:55
名前: 梶原明生 (ID: CrTca2Vz)

「プリンセス美子」               1月2日一般参賀。「久美さん。緊張なさらずに。リラックスして自然体に。」お優しい規子妃殿下が久美にお声をかけていた。女官姫川由美氏により、園部宮家全員が事情を知って協力的になったのだ。おかげで久美は暖かく迎えられ、美子殿下をそつなく演じきっていた。それと同時に、皇室に対する考え方が180度も変わっていた。それまでは、お高く止まった人達が国の税金で贅沢にちやほやされてるだけかと思っていた。しかし、現実は全くちがっていた。それが久美の心を入れ替えさせて、涙させるきっかけにもなっていた。そんな感動する久美に規子妃殿下はいつも寄り添ってくださった。「いいのよ。むしろごめんなさいね。うちの娘のわがままのために。」「いえ、とんでもありません。美子様の心中を考えると、私がこんな大役を仰せつかってもったないくらいです。」「久美さん・・・ありがとう。」二人はやがて一般参賀のメインステージへ。割れんばかりの歓声が日の丸の手旗と共に久美の視界に入ってきた。「これだけの人が、皇室を・・・」感動のあまり思わず涙する。「皇室は日本人の心・・・なくしてはいけない。」そう心に固く誓う久美だった。一方、すっかり打ち解けた美子殿下と知也、ジョージ、青木、福岡、香椎はログハウスで寛ぎながらテレビでこの様子を見ていた。「不思議です。自分で自分を見ているような。」・・・続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.31 )
日時: 2018/08/03 06:51
名前: 梶原明生 (ID: eVM80Zyt)

・・・「僕もです。すっかり見違えた妹を見ていると、どっちがどっちかわからなくなる。こんな奇跡、もうこれが最初で最後なんだろうなって思うと、光栄なのと、どこか侘しいというか寂しいというか・・・何とも言えない心持です。」知也はそう呟いていた。時は流れ、ログハウスでの生活にピリオドを打つ時がきた。1月4日早朝・・・「準備はよろしいですか美子様。」「はい、知也さん。でも・・・まだ様付けですか。美子と呼んでもかまいませんよ。この時だけは。」「そんな、美、美子様は美子様です。恐れ多い。」「そうですか。すみません。でも、あなたにはそう呼んでほしかった。」「え・・・」少し気丈で、しかしどこか淋し気な表情を浮かべる姿に、知也は何かを悟った。「まさか・・・」「美子殿下、お時間です。ここを出ますがよろしいですか。」勢いよく青木一尉がドアを開けてきた。「はい。いつでも。」「それでは車へ。」知也は言いかけた言葉を飲み込んだ。やがて日産xトレイルに分乗し、環状線を避けて一路東京を目指した。赤坂御所を目指して。一方その赤坂御所近辺はマスコミやテレビ局関係者でごった返していた。そればかりかYouTuberまで。一体何が起きたのかと言うと、キム達がデマを撒き散らしたのだ。「フフフ、来るなら来い。この間抜け共が寄って集ってくれるから便利だ。後は聴衆の面前で晒し首にすればいい。」ビルの屋上からほくそ笑むキム達。「どうします。この渋滞じゃ、今日中に赤坂御所まで辿りつけませんよ。」福岡一曹がトラックのハンドルに手をかけて呟く。「まさかこんなにとはな。後5キロ先が500キロ先に見えるぜ。ん・・・」助手席にいた青木一尉がスマホが鳴ったのに気付いた。「何ですって。それはいけません美子殿下。5キロ先とは言え、何が待ち構えているかわかりません。この聴衆の前に出て行ったらお守りできるか保障できません。したがってここからお出しするのは不可能です。」「それでも構いません。もう逃げも隠れもしません。このトラックから出て歩いて向かいます。」「何ですって。」・・・続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.32 )
日時: 2018/08/11 18:55
名前: 梶原明生 (ID: vtamjoJM)

・・・「このことが明るみになってはいけないのはわかります。しかし日を改めても結局同じように妨害や罠があります。そうであるなら、逃げも隠れもしない堂々とした毅然とした態度で臨むべきではないでしょうか。正しく行かば鬼神もこれ道を譲る・・・ですよ青木さん。」その言葉に青木一尉は何か決心した面持ちになった。「本当に不思議なお方だ。皇室の方々には何か人を動かす目に見えない力があるのかもしれませんね。分かりました。この青木班、命に代えましてもお守りいたします。」福岡一曹が血相を変える。「そんな無茶ですよ。この人込みにもし工作員が紛れ込んでたら守りきれません。」「大丈夫だ、やれる。何故なら彼女は日本の最強プリンセス美子殿下だぞ。」p8拳銃を抜いてスライドを引きながら、サラリと言う。「了解。」「全隊員に継ぐ。もし美子殿下に危害を加えようとする輩がいたら。迷わず撃て。」「了解」無線で話を聞いてた香椎達は速攻で答えた。一方そのころ、赤坂御所で来賓との謁見を園部宮家で予定していたのだが、知らせを受けた女官、姫川由美は大慌てで本物の美子殿下が帰ってくることを伝えた。「まぁ大変。久美さんをどこかに匿わないと。」規子妃殿下が慌て始めた。そこへ黒宮が現れる。「ご心配ご無用。久美さんを女性護衛官に紛れさせて一時護衛所にて預かります。さぁ、久美さん、これに着替えて。」彼は紺色の制服を手渡した。そうこうしている間に赤坂は騒然となった。青木班に護衛されながら美子殿下並びに智也とジョージが歩き始めたからだ。「美、美子様だ。」「え、え、美子様、美子様ーーっ」危害を加えるどころか、圧倒的なオーラに、あの無法な野次馬が一斉に道を開け始めたのだ。気さくにお手を振られる美子殿下。「やばいぞ。偽物が姿を消した。このままでは外出していた美子が普通に赤坂御所に入るだけになっちまう。」工作員達は慌て始めるものの唯一キムだけは落ち着いていた。「ふん、なら入院してもらうまでよ。本人が病院で、赤坂御所に身代わりがいたらYouTuberもマスコミも黙ってないだろ。最大の皇室スキャンダルになる。フフフッ・・・」徐にスコープ付きガリル狙撃銃を構えるキム。「動くな、公安だ。」いつの間に来ていたのか、特殊作戦群の隊員とスーツ組の捜査員が一斉に銃を構えていた。「あ、あ、動くなよ動くなよ。あんたらの正体はわかってた。悪いことは言わん。このまま大人しくすれば君達はいなかった。今までのこともなかったことにして万景峰号まで無事送りとどけてやる。なーに、あんたらの国ももう昔と違って死刑にはしないだろ。階級は下がるだろうがな。それともここで一戦交えて死ぬかね。」「ちっ、チョッパリが・・・」やむなく遂に銃を下に置いて手を挙げるキム達。それを知らずに美子殿下はとうとう赤坂御所の門まで来ていた。青木班は一発の銃弾も撃つことなく。「皆さん、ありがとうございます。身を挺してまで影なり陽なりして私を守ってくださったこと。生涯忘れません。そして、・・・知也さん、ジョージさん。できればもっと一緒にいたかった。お話もしたかった。本当にありがとう。さようなら。」「美、美子様。・・・」護衛官に引き継がれて赤坂御所の門内に入っていく。プリンセス美子に戻った瞬間だった。それまで泣いたり笑ったり思い出を作ってきた美子様が、一瞬にして永遠に手の届かない世界に入っていったかのような心地になった。青木一尉が肩に手を置く。「気を落とすな。君の気持ちは始めから悟ってたよ。」「え、まさか。」「そのまさかだ。だがな。この世の中どんなに恋焦がれてもそばにいられないこともある。君はこの数週間で随分成長した。それを糧にこれから生きていけ。」「青木さん。」感動しつつ、また来た道を帰っていく知也達であった。その頃、美子殿下の婚約相手と噂される太田急行の御曹司。「太田博之」氏が父である太田源三氏とテレビでこの様子を見ていた。源三氏が血相を変える。「と、知也・・・」・・・次回「旅立ちの奇跡」に続く。

Re: プリンセスは突然に ( No.33 )
日時: 2018/08/26 07:04
名前: 梶原明生 (ID: vtamjoJM)

「旅立ちの奇跡」                         ・・・鏡の前に淡い水色のスーツ姿で座っている美子殿下。「お美しゅう御座いますよ美子殿下。」髪を梳きながら話す由美。「ありがとう由美さん。こうしてあなたに髪を梳いてもらうのは後何回かと思うと、とても寂しいわ。」「もったいないお言葉・・・」終始涙ぐむ二人であった。今日は太田急行の御曹司、太田博之氏との婚約発表の日。しかし美子殿下は浮かぬ顔をしていた。それは記者会見会場控室にいた博之氏も同じだった。そこへとある青年を連れた父、太田源三会長が急遽現れた。「博之、お前言ってたな。僕も叔母さんみたいになりたいよと。その願い、かなえてやるときがきた。」「どういう意味ですか、お父様。その方は一体。」「おまえの従弟にして、兄弟となった知也だ。」「な、何ですって・・・」そう、そこに現れたのは間違いなくあの鎹知也だった。話は2ヶ月前に遡る。例のテレビで知也の姿を見た源三は、お忍びで知也の実家「うまいもん亭」を訪れた。「いらっしゃいま・・・兄さん。」気さくに客を出迎えた知也の母美佐江は驚いた。「やあ。元気で何よりだ。」「お、お義兄さん。」「雅也君、久しぶりだな。ただのフリーターが今じゃ一国一城の主とはな。ま、始めからこの店は知ってたがね。早いものだ。あれから25年くらいか。美佐江がまだ大学生のころ、美佐江を唆して私や父との反対を押し切って二人で東京を出ていったんだよな。美佐江は勘当同然。」冷や汗混じりに反論する雅也。「唆したは余計でしょ。美佐江とは愛し合って結婚したんです。」「わかってたよ。」「え・・・」「わかっていながら父の偉大さに勝てず、反対してもいないはずなのに反対するふりをしていた。そして恋人のいる私の息子博之にも同じことを・・・だから罪滅ぼしにきた。美佐江、すまんが知也を私の養子にくれないか。」「え、どういう意味。」混乱する二人だったが、事情を知って承諾した。最も驚いたのは知也だ。まるで逆シンデレラとはこのことかと卒倒しそうになった。そして記者会見の時。浮かぬ顔で現れた事を後悔することになるであろう美子殿下が、記者会見会場に現れたのが知也とわかって驚愕し、そして涙ぐんだ。「嘘ではないんですよね。知也さんが・・・」「本当ですよ美子さ・・・いや殿下。あなたとこうしてまた会えた。もう諦めたりしません。」「知也さん・・・」記者達はこの異例の突然のサプライズに色めき立った。やがて美子殿下の留学の時。知也も、太田急行建築課の分野に就くため、ジョージがお目付け役として一緒にケンブリッジ大学に通うことになった。ジョージがいなければ実現しなかった。

Re: プリンセスは突然に ( No.34 )
日時: 2018/08/26 07:48
名前: 梶原明生 (ID: vtamjoJM)

・・・やがて3人はまた奇跡の再会を経て、英国行きの飛行機に護衛官付きで搭乗した。「ようこそ当機へ。イギリスまで我々が同行します。」「あ、青木さんに福岡さん。香椎さんまで。」何と且つての戦友が護衛官に扮して搭乗していた。「特別に許可をもらってね。御結婚おめでとうございます美子殿下、太田知也様。」「そんな青木さん。知也様なんて、性に合ってませんよ。」「こいつ・・・」「ハハハハハッ。」全員に笑いがどっと押し寄せた。「さて、それではもうすぐテイクオフですよ。未来へのテイクオフ。」青木一尉の掛け声で席に着く3人。ジョージが呟く。「こうして、ようやく、イギリス、帰れますね。ありがとう知也。プリンセス美子。」「何言ってんだよジョージ。君がいたからこその縁だった。僕たちの方こそ感謝してる。」知也は美子殿下と見つめあい、アイコンタクトで永遠の気持ちをたしかめあった。青木一尉は宗方一佐の隣席に座りながらぼやいた。「あのジョージ、異次元対策班の連中が仕込んだキーパーソンでしょ。どっからどこまでが計画だったんですか。とぼけないで下さいよ一佐。」「ん、さあな、何の話だ。」「また出た、お得意のお惚けですか。ま、別班の情報は基本共有しないのが慣わしですが。どう考えても偶然なわけないですよね。」「だとしても、めでたしめでたしならいいんじゃないか。」「知らぬが仏。結果オーライ・・・なるほどね。」納得いかない顔で窓外を見る青木一尉。飛行機はすでに滑走路を走っていた。プリンセスは突然に。そして突然の恋にして突然の愛。人は突然を突然として受け止めるのではなく、その突然を既に心のどこかで待機していることに気付かないのかも知れない。それでも二人の幸せの物語は今、始まったばかりだ。                プリンセスは突然に 了


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