複雑・ファジー小説

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Flight doctor stories 2
日時: 2017/10/21 12:53
名前: Rain (ID: MHTXF2/b)

帰ってきた!フライトドクターストーリーズ!
タイトルもカッコつけて英語に。
ここから始まる新たな物語。

<主人公>

仙崎海翔(せんざきかいと)

北海救命救急センターにやって来た新人ドクター。フライトドクター候補生。
黒渕メガネをかけている。
肩につくほどの長さの黒髪を、後ろで一つにまとめている。
身長175㎝。
めったに怒らない、優しい性格。
弟的キャラクターのためか、先輩ドクターの弄りのまと。本人はさして気にしていない様子。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.6 )
日時: 2017/10/29 11:27
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

ブロロロロロ・・・。
ドクターヘリのエンジン音が聞こえる。
「よし、来たね。杉野先生と五十嵐さん、迎えに行ってくれる?」
「おっしゃ、任せろ!」
さっき僕を「ワイルド」といった男性ドクター、杉野先生とショートカットの女性ナース、五十嵐さんが走っていった。
初療室には、なんとも言えない空気がある。
今から患者が来るという緊張感と、どうかそれほどひどくありませんようにという祈りの気持ち。
その二つが入り交じって、この空気を作り出している。
その空気をぶち破り、患者が来た。
「アラキ・ショウタ君、12歳です!」
運ばれてきたショウタ君は、青白い顔をしていた。ショック症状。すぐにわかった。
痛いのを我慢しているのか、唇を噛んでいる。
「ショウタ君!自分の名前、言える!?」
「身長と体重、わかる!?」
「今から検査するからね!」
ナースたちが機関銃のように質問を投げ掛ける。
前の研修先では、ここまでの質問はしてなかった。
「容態、安定してるよね?」
「CT室、運ぶよ!」
ショウタ君を、CT室で詳しく検査するみたいだ。
「新入り君!こっち入って!」
いきなり呼ばれた。
「はい!」

長い廊下を、ストレッチャーを押しながら歩く。
「どう?すごかったっしょ、うちのナース。」
杉野先生が話しかけてくれた。
「はい、すごかったです。あんな一気に質問を投げ掛けられるなんて。担当でも決めてるんですかね?」
「それがさぁ、違うらしいんだよ。俺も不思議に思って一回聞いたんだよね。そしたら『そんなの決めてるわけないじゃないですか』って笑われた。よっし、CT室ついたよ。」
目の前には、CT室。
ここで、傷ついているはずのお腹のなかを詳しく検査する。
場合によっては、緊急手術になるかもしれない。
ドクターたちが群がるパソコンに、検査結果が映し出される。
画像は、胸からお腹へと移動していく。
問題のお腹のあたりが映し出されたとき。
ドクターたちの表情が変わった。
もちろん、僕も気づいた。
CT技師も、その異変に気づいた。
「ちょっと、お腹のあたりもう一回見せて・・・。」
「これって・・・。」
これは、マズイ。
本当に、命に関わる状態だ。
「大動脈が・・・。」
「やられていますよね・・・?」

Re: Flight doctor stories 2 ( No.7 )
日時: 2017/11/03 13:24
名前: Rain (ID: v8Cr5l.H)

そのとたん、ドクターたちが弾かれたように動き出した。
「新人君!赤川先生に走って伝えて来て!」
赤川先生!?どなたですか!?
「ああ、わかんねえか。えっとな、メガネかけてないイケメンの先生だ!とりあえず、初療室にいる一番のイケメンに言ってこい!」
なげやりすぎる・・・。
でも、患者は重症だ。立ち止まっている暇なんてない!
僕は、初療室に向かって走り出した。
後ろでは、たくさんの声が聞こえる。
「風間教授に連絡して!」
「オペ室、大至急準備!」

風間教授・・・?
確か、この救命救急センターのセンター長だったはずだ。
そして、腕は超一流。
医療界では、言わずと知れたカリスマなんだ。

長い廊下を走りきり、初療室に駆け込んだ。
「赤川先生ー!いらっしゃいますかー!」
どうせなら本人から出てきてもらった方が早い!
「どうした!なんかあったのか?」
赤川先生と思われる男性ドクターが来た。
・・・確かにイケメンだ、うん。
って、そんなこと思ってる場合じゃない。
「さっき運ばれてきたショウタ君、腹部大動脈損傷です!」
「なにっ?腹部大動脈損傷?」
赤川先生の表情が変わった。
そして、院内PHSをひっつかむ。
「おい、杉野。腹部大動脈損傷って本当か?」
2、3回うなずいて、また言葉を発した。
「風間教授はダメだ、今日は家族サービス中らしい。流石に呼び出すわけにはいかんだろ。」
杉野先生の返事も待たずに、通話を切る。
「俺が入って、もう一人誰を入れるか。」
「どーかしたんですかー?」
初療室のドアが開いて、女性ドクターが入ってきた。
「おお、工藤。ちょっと、オペの人員が足りなくてな。」
「なんだ、そんなことですか。」
え、そんなことって・・・。
「私、入りますよ。ちょっとCT室行ってきますね。」
えー、なんか頼りない・・・。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.8 )
日時: 2017/11/05 15:18
名前: Rain (ID: w4lZuq26)

CT室に走っていった、頼り無さそうな工藤先生は、1分程で帰ってきた。
ショウタ君も、オペ室の準備ができるまで待機のため、今は初療室にいる。
「輸血、今いくつですか?」
その声を聞いて、驚いた。
工藤先生の雰囲気が豹変している。
さっきまでとは声のトーンが違うし、目もキリッとしている。
つい1分前ほどの頼りなさは、どこにも感じられなかった。
「200cc。かなりヤバイぞ。」
それを聞き、工藤先生の目がさらにつり上がる。
「わかりました。オペ室行きますね。」
おそらく、オペの準備をしに行くのだろう。
と、工藤先生と入れ替わりにヤンキーみたいな髪形のナースが駆け込んできた。
「オペ室、準備出来ました!」
「ありがと。オペ室運ぶぞ!」
急いでストレッチャーに駆け寄る。
確か、オペ室は四階にあった気がする。
僕の記憶は正しかったらしく、ストレッチャーはエレベーターへと向かっていた。
ストレッチャーごとエレベーターにのせられたショウタ君は、不安そうな顔をしている。
そりゃそうだよな。行き先も告げられてないんだから。
「安心して。大丈夫だからね。」
思わず声をかけた。そしてショウタ君の手を握る。
それに安心してくれたのか、ショウタ君の表情がふっとやわらかくなる。
よかった。
エレベーターがとまった。
大動脈が傷ついていると分かったからには、
上げ下ろしも慎重にやらなければならない。
息を止めて、ストレッチャーをエレベーターからおろす。
慎重に、でも急いで。

オペ室の前に来ると、自動ドアが開いた。
中には、オペ着を身につけた赤川先生と工藤先生。
赤川先生はサムズアップ、工藤先生はピースサインをしている。
顔は、目しか見えないけど、任せろという思いが伝わってくる。
ストレッチャーをオペ室のスタッフに引き渡す。
後ろに下がると、自動ドアが閉じた。
そして、赤いランプが点く。
どうか、ショウタ君が助かりますように!

Re: Flight doctor stories 2 ( No.9 )
日時: 2017/11/11 13:14
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

オペ室から離れ、再び運航管理室。
テーブルに置いてあるポテトチップスを、杉野先生が食べている。
「あー、そういえば、新人君の名前聞いてなかったな。何て言うん?」
「仙崎海翔です。」
「なるほどね。よろしく、海翔君。」
杉野先生が右手を差し出す。
「はい。よろしくお願いします。」
その手を握り返した。

と、そのとき。
「先生!ショウタ君のお友達が見えています!」
さっきの、ヤンキーみたいな髪形のナースが飛び込んできた。
「わかった、すぐいく。海翔君も来て。」
「はい!」

ショウタ君の友達がいたのは、初療室前の長椅子。
男の子と女の子が座っている。
男の子は歯を食い縛り、女の子の方はハンカチを顔に当てている。おそらく泣いているのだろう。
「君たち、ショウタ君の友達?」
杉野先生の問いに、首を縦に振る二人。
「あのっ・・・せんせっ・・・。」
「どうしたん?」
しゃくりあげながら、女の子が話し始めた。
「ショ、ショウタはどうなったんですか・・・?こ、ここに運ばれた・・・って聞いたんですけど・・・。」
「ショウタ君な。お腹のなかをケガしとったから、今、手術してるんや。」
二人の表情が変わった。
少なくとも、僕にはそう見えた。
「手術・・・?ショウタ、死んじゃうんですか?」
腹部大動脈損傷。危険な状態。
決して大丈夫とは言えない。
「うわあああああん!」
何かの糸が切れたかのように、男の子も泣き出した。
「ショウタが・・・死んじゃったら・・・。」
そうだよね。
大事な友達が、死ぬかもしれないんだもんね。
怖いよね。
ふと、昔のことを思い出した。
僕のせいで死んだと言ってもおかしくないあの人のことを。
今目の前にいる二人と、幼い僕が重なって見える。
あのときの不安な気持ち。
今でも忘れないし、これからも忘れられない。
そして、あの人の命の灯火が消えたとき。
あのときの悲しみも忘れられない。
忘れることなんてできない。
二つ目の気持ちは、この二人には味わってほしくない。
お願いします、赤川先生、工藤先生。
どうか、ショウタ君を助けてあげてください。
僕と同じ道を、彼らが歩まないように。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.10 )
日時: 2017/11/12 19:37
名前: Rain (ID: v8Cr5l.H)

泣きじゃくる二人を抱きしめた。
僕には、その気持ちが痛いほどわかるから。
「辛いよね。とてもわかるよ。」
今、彼らに必要なのは、同情してあげること。
励ましの言葉なんて、今はいらない。
「先生もね、君たちみたいなことがあったんだ。」
「ほんと・・・?」
女の子のか弱い声が耳元から聞こえる。
「うん。本当。でもね、君たちはとってもラッキー。ショウタ君、すぐに病院にこれたでしょ?どっちが、救急車よんでくれたの?」
「僕が、呼んだ。とっても、怖かった。」
そうか、君が呼んでくれたんだ。
「やっぱり、怖かったよね。でも、すごいよ。」
「どうして?」
腕をほどいて、二人の目をみつめた。
「先生ね、君たちと一緒で、とっても怖かった。でもね、先生は怖がってるだけだった。救急車を呼ぶなんて、考えもしなかったんだ。大人の人が来てくれて、それでやっと救急車を呼べたんだ。」
目の前で倒れた彼女を見て、震えてるだけだった僕。
彼らは、僕とは違う。
「きっと、大丈夫。上手な先生がやってくれてるから。」
二人がこくりとうなずいた。
「長くかかるよ。ここで待つなら、お母さんに言っておいてね。」
お母さんに言うためか、二人は走っていった。


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