複雑・ファジー小説

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Flight doctor stories 2
日時: 2017/10/21 12:53
名前: Rain (ID: MHTXF2/b)

帰ってきた!フライトドクターストーリーズ!
タイトルもカッコつけて英語に。
ここから始まる新たな物語。

<主人公>

仙崎海翔(せんざきかいと)

北海救命救急センターにやって来た新人ドクター。フライトドクター候補生。
黒渕メガネをかけている。
肩につくほどの長さの黒髪を、後ろで一つにまとめている。
身長175㎝。
めったに怒らない、優しい性格。
弟的キャラクターのためか、先輩ドクターの弄りのまと。本人はさして気にしていない様子。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.1 )
日時: 2018/01/31 22:33
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

プロローグ

海翔side

僕の寂しい部屋に、朝日がさしこむ。
いつもだったら憂鬱な朝だけど、今日は最高の気分で目覚めた。

いつもはしないけど、今日は部屋のカーテンを開けてみる。
ああ、僕の新しい朝を街が祝っているようだ。

なんせ、今日からフライトドクター候補生!
今までのしたっぱ研修医からはおさらばだー!

長い髪を、新しいゴムで結ぶ。
この髪はまだ切るつもりはない。
・・・あの人との約束を果たすまでは。


新しいスーツに袖を通した。
今日のためだけに新調したんだ。
と、いっても。どうせすぐスクラブに着替えちゃうんだけどね。
まあ、ちょっと気持ちを切り替えるために。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.2 )
日時: 2018/01/31 22:36
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

Episode1 風切医科大学北海救命救急センター

【風切医科大学北海救命救急センター】

目の前の看板が、まぶしく見える。
ここが、僕の新しい仕事場だ。

病院の外に植えられた、桜並木が揺れて桜の花びらを落とす。
そんな普通の光景でさえ、今日は美しく見える。
憧れのフライトドクターへの一歩をやっと踏み出せた。
その喜びで、何もかもが美化されてしまっているのだろう。

病院の中に入ると、白衣を来た女性がこちらに駆け寄ってきた。
「仙崎海翔先生ですよね?」
せ、先生?でも、名前は合ってる。
「はい。仙崎海翔です。」
「私は、医局秘書の園崎和葉と申します。今日から新しいドクターが来るから迎えにいくようにと、先生方から言われたので、迎えに参りました。」
わざわざ迎えに来てくれたのか。
なんか申し訳ないな。
「それでは、救命救急センターの方に向かいましょうか。こちらです。」
そういって、園崎さんは歩きだした。

「・・・仙崎先生って、髪長いですね。」
あー、やっぱり長いよな。
「やっぱり長いですよね。とある事情で切ってないんですけど。」
「そうなんですか。」
僕の髪は、下ろすと肩につくぐらいの長さ。
最近はもっと伸びてきて、肩に余裕でつくようになった。
だから、最近はヘアゴムで結んでいる。
もちろん100均。色は黒がお気に入り。

またしばらく歩いて、ふいに園崎さんが立ち止まった。
そして、すぐ横のドアを指差して。
「ここがロッカールームです。ちょっとスクラブとってきますね。」
園崎さんが中に入って、またすぐに出てきた。
手には、透明な袋に入ったスクラブがある。
「こちらが仙崎先生のスクラブです。ちょっと着替えていただけますか?その後また別のところを案内するので。」

スクラブを着てみた感想を正直に。
うえーーーーーい!!!!!!
テンション最高潮!
なんか、凄腕救命救急医になった気分!
・・・ま、見た目だけね。
ちょっと落ち着いたところで、園崎さんの待つ外に出た。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.3 )
日時: 2017/10/24 20:08
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

その後、いくつかの部屋を案内してもらった。
救急患者の状態を家族に説明する「医師説明室」。
治療に使うタオルや、ガーゼなどを大量に置いておく「備品室」。
ナースの控え室であり、仮眠のできる「看護師室」。
そして、ドクターヘリの司令官と言っても過言ではないCS(コミュニケーション・スペシャリスト)のいる、運航管理室。
かつ、患者の初期治療にあたる、初療室。

あれ、ちょっと待てよ。
1つ、大事な部屋がないじゃないか。
「あの、園崎さん。」
「はい、どうしました?」
僕は、思っていた疑問をぶつけてみた。
「えっと、医師控え室ってどこにあるんですか?」
「ああ、医師控え室ですね。今から行きましょうか。」
なんだ、まだ行ってなかっただけなんだ。

ところが。
僕が案内されたのは、運航管理室だった。
「・・・ここって。」
運航管理室だよね。
再びやって来た僕と園崎さんをみて、CSの人が不思議そうな顔をする。
その時、園崎さんの携帯がなった。
「すいません。倉橋さん、後はお願いします。」
そういうと、園崎さんはどこかに走っていった。
「つい先程お会いしましたよね。どうぞお入りください。」
運航管理室の入口で立ち止まる僕に、CSの倉橋さんが話しかけてくれた。
「どうぞ、お掛けください。今お菓子でも出しますので。」
なんか、手間かけちゃってるかな。
「マンゴープリンでもいいですか?教授が出張に行く度にマンゴープリン買ってくるもので。」
「ありがとうございます。手間かけさせてごめんなさい。」
「構いませんよ。私、仕事がないときは暇ですから。」
僕の言葉に、倉橋さんは笑顔で言葉を返してくれた。
「さて、仕事がくるまで雑談でもしますか?」
あっ、そうだ。さっきの「医師控え室」のこと聞かなきゃ。
「あの、園崎さんがここを医師控え室だって言ってたんですけど・・・。」
さっきから気になってたんだよね。
「そのことですか。ちょっと色々ありましてね。」

倉橋さんの話によると、こういうことだった。
○ドクターヘリを導入するにあたって、運航管理室が必要だった。
○運航管理室は初療室の近くにあることが理想らしい。しかし、北海救命救急センターにはそれにあてはまる空き部屋がなかった。
○そこで、医師控え室が運航管理室にリフォームされてしまったらしい。

・・・悲しすぎる。医師たち、悲しすぎる。
「まあ、そんなわけで・・・。」
プルルルルルッ!
倉橋さんの言葉を遮るように、何かの音がなった。
「仕事ですね。すいません、少し待ってていただけますか?」
仕事?もしかして・・・。
「ドクターヘリ、エンジンスタート。ドクターヘリ、エンジンスタート。」
やっぱりいいい!!!
僕は思わず運航管理室を飛び出していた。
ヘリポートが見える窓に駆け寄る。
青いヘリポートの中央で、ドクターヘリが飛び立つのを待っている。
やがて。白と赤の機体が、青空に舞い上がった。
・・・かっこいい。
僕も、いつかは乗れるようになれるかな。

Re: Flight doctor stories 2 ( No.4 )
日時: 2017/10/26 18:45
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

ん、というか。
僕、一応ここのドクターだよね。
行かなくていいのか?
いや、行かなきゃダメだ!

廊下をダッシュして、初療室に向かう。
そうだ、今から患者が来るんだ。
歩いている余裕なんてない!
初療室の自動ドアが開くほんの少しの時間すら無駄に思える。
「えっ!?」
「もう来たの!?」
「いや、連絡なかったろ!」
いきなり現れた僕を見て、驚く先輩たち。
いやっ、そのー。
「あっ、なんだ。新人君じゃん。」
パニックな空気を取り繕ったのは、小柄で童顔な男性ドクター。
「いきなり飛び込んでくるとはね。ワイルド〜。」
ちょっとまて!バカにしてませんか?

Re: Flight doctor stories 2 ( No.5 )
日時: 2017/10/27 18:14
名前: Rain (ID: OZxqQ4OG)

「んー、今日が初日でしょ?とりあえず、初療室の隅っこで見てて。いきなり本番って、キツいでしょ?」
あ、まあ、そうですかね・・・。
「それに、ウチにはウチのやり方がある。研修医時代の病院とは違うはずだからね。今日は見てて、明日から頑張って。」
はい。
さっきの勢いはどこへやら。
今日は見学と。
ああ、さっきまでの自分が恥ずかしい。
いざ武勇伝!と言わんばかりの駆け込み方をしたのに、まさかのバカにされる始末。
恥ずかしい、恥ずかしい・・・。
これじゃあ、初日からでしゃばる変な新人と思われるじゃないか。
あーあ、やらかしたな、僕。

そのとき。
『北海ドクターヘリから、風切北海!』
女性の声がスピーカーから聞こえた。
「おお、秋ちゃん!待ってたよー!」
秋ちゃん?
話してる女性ドクターが秋さんって言うのかな?
『患者情報、送ります。患者、12歳、男児。高さ2メートルほどのフェンスから落下。フェンスの下に自転車があり、そこに落下した模様。』
高さ2メートル?
別にドクターヘリを呼ぶほどでもないような。
救急隊員さんたち、心配しすぎ・・・。

僕のその考えは、次の言葉で粉々に打ち砕かれた。
『FAST、ポジティブ!ショックあり。以上、北海ドクターヘリ。』
・・・・・・ウソだ。 
FAST、ポジティブなんて。
たった2メートルの高さから落ちただけで、腹腔内出血を起こすなんて。

僕の考えは、甘過ぎたようだ。
こんなんで、やっていけるのだろうか。
唐突に突きつけられた、救命の厳しさ。
急に、目の前に暗幕が垂れ下がったような気がした。


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