複雑・ファジー小説

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 最強魔導師は商人をしている
日時: 2020/03/27 20:37
名前: マッシュりゅーむ (ID: .pwG6i3H)

 
 『セイカゲ』で知ってくれた人はこんにちは。はじめましての方は初めまして。マッシュりゅーむです。
 今作品は、僕が仲間と書いている『セイテンノカゲボウシ』、閲覧数4,000回を記念——ということを名目上に、僕が前からやってみたかった、僕個人の小説となっております。


〜文章での注意事項〜
 ゴリゴリのファンタジーにしたいと思います。読みやすく、面白い小説になるように頑張りますので、よろしくお願いします。

 題名で分かる通り、主人公は無自覚最強——最強まではいかずとも、そんな感じです。
 こういった設定が嫌いな方もおられると思いますが、ご了承ください。

 物語の世界は、この世界と違いますが、㎝やkmなどの物理の単位を新たに作るとややこしくなるので、それはこの世界でも同様とします。

Re:  最強魔導師は商人をしている ( No.35 )
日時: 2020/06/27 19:45
名前: マッシュりゅーむ (ID: T.7CB5Ou)

 さて、何の魔法を使おうか。

 僕はその選択肢の数々を頭の中で張り巡らせる。
 【高速思考】の魔法で考える時間を短縮しながら考える。

 【蛇竜】というのは昔読んだ本によると、風属性の蛇のモンスターと、火属性の竜のモンスターをかけ合わせた『魔道具』だったはずだ。
 つまり火、風属性の耐性があるはず。その証拠に、僕の放った【灼熱黒牢】が全く効いていなかった。

 凡人の魔法だから仕方が無いというのもあるのだろうけど、それでも超常魔法をほぼ無傷で耐えられる怪物は聞いたことがない。
 僕の魔法の中で一番威力がたいのは超常魔法。火属性で見た感じ、風の超常魔法でも同じ結果になりそうだ。

 なのでこの二つの属性は却下。

 そして残るは水、土、闇なのだが、土は彼のモンスターは翼があるため、あまり効果がないと思う。
 飛ばれたらおしまいだ。
 闇は出来るなら使いたくない。なぜかと言うと、対象を欠片も、細胞の一個も残さず消え去るというものだからだ。
 そこまで聞けばそれでいいじゃないかとなるところだが、それは効果範囲が馬鹿でかく、的を中心に球体のような形で闇の瘴気が広がり、そこがすべて抉り取られた後みたいになる。

 つまり、巻き込まれる。

 【ピュトン】と死ねるなら本望だが、流石に享年15年と言うのは自分で言ってもなんだが、悲しい。
 後、欲を言えば消え去りたくない。【ピュトン】は最高の『魔道具』だ。是非残したい。

 あわよくば【アイテムボックス】でお持ち帰りしたい。

 容赦はしないと言った。しかしそれはそれ、これはこれである。

 残る一つは水属性。
 もうこれしかないと思う。
 ただ一つ、この魔法には欠点が存在する。それは———名前にもある通り、『祈祷』を捧げなくてはならないのだ。

 いやお前、魔法に祈りもクソもないだろうと思うのも分かる。しかし現にすぐ発動させようとすると、魔力が上手くまとまらず、失敗するのだ。

 原理は、謎である。

 昔、聖属性の唯一の使い手だった【聖女】様が同じく当時の【賢者】と共同で制作した魔術式という事は知っているのだが、だから何なのだ、で終わる。

 ほんと、何なんだろう。

 おっと、話がそれた。この【高速思考】、頭の回転が速くなり、思考能力も上がるという優れモノなのだが、短所として思考が行き過ぎてしまうということがある。
 つまり、関係のないことまで考えそうになる。
 まぁ、それはともかく、水の超常魔法は発動に無駄に時間がかかる魔法、という事だ。
 別にこれは魔力を使わない、純粋な祈祷なので、時間さえあればイケる。

 時間さえ、あれば。

「………」
 ちらりと前を見る。そこには、衰弱した唯一の仲間が。

 他のパーティーメンバーは既に【転移】で地上に送ってある。戦闘不能で、こういっちゃなんだが足手纏いだからだ。
 【転移】が使えるなら僕とハイネさんも一旦地上に出て、態勢を整えてからまた挑めばいいじゃないか。そう思う人もいると思う。

 でもね、実は【蛇竜】って【転移】………出来るんだ。

 は?って思うよね。この魔法は人間独自の魔法。ユニークマジックだ。
 それを人間じゃないモノが使うんだから。
 でもここで考えてほしい。【蛇竜】は何なのか、そして誰が作ったのかを。
 
 ………。

 あぁ、また話がそれた。

 えーと、話を戻すと、つまり、【ピュトン】を倒すには時間を稼ぐことが必須。
 僕は祈祷に集中して身動きが取れない。
 ハイネさんは手負いの状態。

 あれ、ツミじゃないか?

 うーん、彼女に無理を言うか。いやでもしかし———
 もう一度、彼女を見やる。
 その視線に気づいたのか、彼女もこちらに目を向けてくる。



 交差し、その視線には———決意と、意地と、熱意が込められていた。
 その鋭い瞳を見た僕は———少しでも逡巡してしまった自分を恥じた。

 そうだ、彼女は言ったじゃないか。
 絶対、勝つと。

 その決意を。

 意地を。

 熱意を、無駄にしてはいけない。

 そう、思った。

『ハイネさん———』

 【思考共有】で話しかける。

 思えばこの人に強引に連れられたところから始まった、この事件。
 こんなことになって憤っても仕方が無いが、しかし、不思議とその感情は浮かんでこない。

 僕は、商人だ。彼らは、冒険者だ。

 そんな、ほとんどつながりを持たないであろう二者が、こうして一緒に戦っている。

 笑える。

 彼女は冒険者としての覚悟を見せた。
 それに僕は、答えなければならない。


 商人の、商業者としてのプライドを———


『———僕に、考えがあります。』



 そして、時は終戦の間際へ—————



——————————————————————————————————————————————

———商業者のプライド、とは。

Re:  最強魔導師は商人をしている ( No.36 )
日時: 2020/07/08 20:25
名前: マッシュりゅーむ (ID: DTbnjiLY)

***

———ありがとう、ハイネさん。

 祈りが完成した時、遮断していた集中を切り、時間稼ぎを頼んだ己の仲間に心の中で礼をする。
 閉じていた目を薄く開け、狙いを定める。
 視線の先では、自分を信じてくれた勇敢な女戦士が、今まさに蛇の怪物に負けを認め、体を委ねているときだった。
 ただしそれは彼女自身の敗北。アースら全員の敗北など、微塵に疑っちゃいない。
 それは、彼女の依然とした様子から明らかだった。

 その期待に、応えよう。

 魔力を、思いを、解放させる。

「———【断罪冰祈祷(レヴルエヒム)】」

 放たれた、淡く、そして濃い蒼の魔法。一瞬間を置き、【蛇竜】もその魔力に気付く。
 その魔法をハイネ以上の脅威ととったのか、緊急でハイネに向けた魔法を中断、そしてこちらに全く同じ風のブレスを放ってくる。

 しかし、残念ながら祈祷は完結し、届いてしまっている。

『———!』
 【蛇竜】から驚きの様子が伝わってくる。『魔道具』なのに感情を持っているのは定かではないが、確かにアースはこの時そう感じた。

 発せられた蒼の魔力が『冰』の渦となり、そして壁となって攻撃を防ぐ。
 真正面から当たり、そのまま削られ、摩耗していくが———壁は一向になくならない。

 そして、遂には風を霧消させ、今度はその攻撃を放った怪物に刃を向ける。
 【蛇竜】は己の耐久力を信じているのか、避ける気配はない。
 首を低くし、防御の姿勢をとっている。

 そして。事実その通りに、『冰』は彼の外皮を削り取ることは出来ない———が。

「———【液化】」

 小さく呟く。その瞬間、『冰』の粒は意志を持ったように動き———液状と化する。
 そして鱗の隙間から肌の中に浸透していくと———

「———【固化】」

 一気に『冰』へと姿を戻す。そして、それらに圧迫され、耐えきれなくなった【蛇竜】の鱗が———弾け飛ぶ。

『———ッ!!?』

 たじろぐ【蛇竜】。丸裸にされた彼の怪物は、動きを止め———今度は負けじと炎のブレスを放つ。
 確かに氷には火が有効だ。だがこの『冰』は普通のそれとは違う。

 渦を巻き、ゴオォ……と音を立て放たれたその炎は『冰』に当たり———凍る。

『———』

 絶句。
 そんな言葉が、いまの【蛇竜】に一番よく似合うだろう。
 この『冰』は、水では出来ていない。術者の———つまりアースの魔力と祈りで出来ている。

 氷は火で溶かせる———そんな理など、この魔法の前では存在しない。

「———終わりにしよう」

 誰に聞かせるつもりもなく、ただ独り言のつもりで発した言葉。しかし、【蛇竜】はその言葉に身を震わせ———恐怖する。

 そして、その言葉と同時に『冰』の渦が【蛇竜】の周りを高速で旋回、【液化】、そしてその身にぶつかり瞬時に【固化】され、美しい氷の像が完成された。

 それを見たアースは、終戦を告げる様に、死を宣告する様に、言葉を発する。

「———【断罪】」

 纏っている『冰』の内側から無数の杭が打たれ、蒼い像を真っ赤に染めた。



————————————————————————————————————————————

《スキル》
【魔眼】
  ・効果対象の魔力探知。
  ・魔力の流れ、大きさ、色によって、その対象の力、性質等が分かる。
  ・瞳に流す魔力量により効果持続、上昇。
  ・任意発動。      
【大魔術師(グランドウィザード)】
  ・魔法発動時における、知力、魔力の超高補正。
  ・全属性に対する高耐性。
  ・魔術行使時における詠唱省略。
  ・【賢者】専用。
【神聖(セイント)】
  ・聖属性魔法の実行権。
  ・不死怪物(アンデット)系との戦闘時における全能力の高補正。
  ・回復魔法、聖属性魔法の効果増幅。
  ・【聖者】専用。
【】
【】
【】

Re:  最強魔導師は商人をしている ( No.37 )
日時: 2020/07/23 10:08
名前: マッシュりゅーむ (ID: PboQKwPw)

***

———それから。

「あっ!!!帰ってきた!」

 【ワイルドダモクレス】の斥候の女性———確か、ユミラさんが僕とハイネさんを見てそう叫ぶ。

 場所は彼らが寝泊まりしているという宿の一角。見事【蛇竜】を倒した二人は、無事地上へと生還することが出来ていた。

 まぁ、面倒くさいから【転移】したんですけども。

 ハイネさんの傷は思ったより深いもので最初は焦ってしまったが、無属性ではなくそれよりも威力の高い聖属性の回復魔法を用いて治した。
 無事でよかったが、彼女の危険に臆することなく立ち向かうその精神には脱帽だ。この人がいなければ全員死んでいたかもしれない。

 【蛇竜】は倒した後消えてなくなってしまった。

 あの時の気持ちを正直に言おう———めっちゃショックだった。

 一瞬、ハイネさんの治療よりも先に【蛇竜】を【アイテムボックス】に入れていたら消えなかったかな、なんて不躾なことを考えてしまったほどである。

 まぁ、その後に『蛇竜の杖(ケリュケイオン)』なる物を迷宮の奥で拾ったから、それで良しとしよう。
 見た感じ魔導師が使う魔杖に似ているが、商人である僕は使う機会はない。

 もしかしたら商業をしているときに高値で売れるかもしれない。

 そんなことをハイネさんの前でボヤいたら必死で止められたが。

「ただいま戻りました」
「………」
 僕がユミラさんにそう返事するが、ハイネさんは沈痛な面持ちで何も喋ろうとしない。
 ユミラさんは何かを察したのか、「来てください」と、一言だけ言うと、扉を開け宿の一室に入っていった。
 「………ハイネさん」
 「…大丈夫だ、行こう」
 精神的にはもう限界を超えているはずなのに、彼女はこれから、仲間達に会いに行こうとしている。

———旅立ってしまった、彼も含め。

 ハイネさんは部屋の前で目を閉じ、深く息を吸い———決心したかのように、扉を、開けた。

***

 アースとハイネが中に入る。中には既に【強靭な巨刃(ワイルドダモクレス)】のパーティーの面々が揃っていた。
 一番奥、窓際の方のベッドの脇に腰を掛けるユミラ。
 そのベッドで寝ているのは、包帯が体中に巻かれ、痛々しい姿で苦悶を漏らしながら目を閉じる、剣士のクロード。

 そして———次にもう一方のベッドには、胸の上で手を組み、安らかに眠る魔剣士のアイルの姿が。

 その二者を見た瞬間、ハイネは無意識に膝から崩れ落ちてしまった。

「ハイネさんッ!」
 アースが反射的にハイネの体を支える。しかし、彼女は自分の見を襲う、哀惜、憤怒、空虚の念に耐え切れず、顔を歪めていた。

 守れなかった。己の仲間を。
 防げなかった。最悪の事態を。
 紡げなかった。皆が存在する未来を。

 許せない。
 許してほしい。
 許したくもない。

「……あぁ………」
 遣る瀬無い。本当に、不甲斐ない。

 負の感情が心臓を無遠慮に、容赦なく殴りつけ、その傷を着々と広げていった。

 すまない。こんな自分がリーダーで。
 弱いせいで。
 未熟で。

 自己嫌悪の渦が自分の存在を飲み込み、無にしてしまおうとする。

 ハイネはこんな時に涙の一滴も出ない自分に苛立ってしまう。



 冒険者には死が付き物だ。だが、慣れてはいけない。

 慣れたら最後、人としての何かを失ってしまうからだ。

 だから、肯定する。死の恐怖を飲み込み、一生その痛みを背負っていく。

 その苦痛で倒れてしまえば、それはトラウマとなり、自分の冒険者としての意地と未来を奪い去って行ってしまうだろう。

 だから、歯を食いしばる。それが、自分ら冒険者に課せられた試練の一つ。

 そんなことは、知っていた、知っているはずなのに———



「………」
「……ハイネさん」
 顔を俯きさせ、動かなくなってしまった彼女を心配そうに窺うユミラとアース。と、アースが何か弾かれた様に、アイルのベッド横へ移動する。

 そして、数秒死体を眺めていたかと思うと、何かを決意したかのように、自分の手のひらを徐に取り出したナイフで———切った。

「ッ!?アース君!?」
 ユミラが焦ったような声を出す。
 しかし当の本人は全く痛みを感じていないかのように———むしろこれからの痛みを耐えるような面持ちでユミラの方に笑いかける。

「大丈夫ですよ。———シーツ汚してしまいましたが許してください」

 それだけ言うと、彼はアイルの屍の上着を———剥いだ。

「……!?………え、え!?」
「———」
 ユミラが困惑の声を漏らす。ハイネも、下に向けていた顔をずらし、アースの方を見やる。

 その視線に気付いているのか否か、アースはアイルの腹の上に自身の血で何かの魔法陣を描き始めていた。
 それは心臓部分を中心に、鎖の様な線が至る所に描かれている。
 ユミラは魔法陣など古代の迷宮の罠ぐらいでしか見たことがないが、しかし明らかにこれは異常だ、という事を直感していた。

「………よし」
 黙々と作業を進め、区切りがついたのかアースがそのような声を漏らす。

 そして、両手を広げ、魔力をその指の先々に集める。

 濃密な魔力の奔流が部屋中で動きまわる。

 そして、魔法陣にゆっくりと、着実に吸収されていったかと思うと、描かれた身体上の赤の鎖が蠢きだし、天に向けてその先端を向け———何かを掴んだ。

 神秘的な光を放つ球体。それを引きずり下ろし、無理やりアイルの身体に向かわせている。

 そう、これは———アイルの魂。根源。

 アースは今、アイルを蘇らせようとしていた。

「………はぁ……ふっ!」

 息遣いを、鼓動を速めながら、その額に汗を滴らせながら、アースは魔法に集中する。
 これは、アースが覚えた超常魔法の中で特に難しいと考える三つの魔法の一つ。

 しかし、実はこれは超常魔法ではない。

 失われた、古代の魔法。

 神の奇跡。

 この世で扱える者はおろか、知っている者さえ少ない。

 真の、神聖魔法———





「【死者、蘇生】………ッ!!!」





 光が、収束する。

 魂が、回帰する。

 その神々しさすら感じる輝きに、三者は同時に目を窄めた。



————————————————————————————————————————————
長い。長すぎる。まだ終わらないのか……、この章。

初の神聖魔法のネーミングがド直球になったのは誠に申し訳ございません。
筆者の語彙力の問題ですね、えぇ、そうです。

またなんかいい名前思いついたらそれに変えようと思います。(*_ _)

第二幕 第二章 15話 ( No.38 )
日時: 2020/09/26 11:33
名前: マッシュりゅーむ (ID: W0MEbhZQ)

 そして、何事もなかったかのように静寂が訪れる。
 目を細めていた彼らは目を開き———そして瞠目する。

 彼らの目線の先にあったのは、静かに呼吸をする魔剣士の姿。

「……アイル……ッ!」

 感極まった声を漏らすハイネは、彼の寝ているベッドに駆け寄り、その横顔が良く見える様に屈む。
先程まで青白く、ただただそこに在っただけの物が———文字通り、息を吹き返していた。

「…アース君、これは———」
 ハイネの隣に座り、同じく信じられないモノを見た顔をしていたユミラが顔を上げ、アースに問いかける。アースはその質問に静かに答えた。
「聖属性魔法の【死者蘇生】という魔法です。天に還る途中の魂を、強引に本体に引き戻す魔法なんですが………」

 そう言ってアースもアイルの方を見やる。

「死んでから経過する時間が長ければ長いほど後遺症が残りやすい魔法ですし、魂を無理やり雁字搦めにするので精神面的にもダメージが……」

 そう、その生き物が腐れば腐るほど、魂が離れれば離れるほど、扱う魔力の量も、術者の疲労も、そして生き返った本人の状態異常も大きくなる。だからアースは、できれば死んだ直後に行いたいと思い、脳がまだ生きている3、4分で発動したかった。
しかし、思った以上に【蛇竜】が厄介であり、時間が大分ロスしてしまったのも事実。

「何かしら傷は残ると思います。すみません………」
「……いや、生き返らせてくれただけいいよ。……ってことは、アンネは流石に無理だよな」
 自分の無力さを痛感しながら謝るアースに、大丈夫だ、と安心させるハイネ。そして、彼女はもう一人の死者について、ダメもとで蘇生できないか聞く。
「多分……魂が離れすぎていて………」
「そうか……いやなに、ありがとうな」

 そう言って少し寂しそうに笑うハイネ。

 その後アースは、パーティーの面々だけにさせてあげようと、部屋を出ていった。

第二幕 第二章 16話 ( No.39 )
日時: 2020/10/12 19:18
名前: マッシュりゅーむ (ID: htYXwhzX)

―――数日後。

「……行くのか?」
「えぇ。もう売る商品も補充しましたしね」

 泊まっていた宿の荷台置き場。
 僕が荷物を積み込んでいると、ハイネさんがやってきて話しかけてきた。

「そうか」

 そう、一言いうと、彼女はこちらの顔をじっと見つめてきた。

 僕は彼女が何を言いたいのか察し、先回りして返答を口に出す。

「申し訳ありませんが、僕は商人です。戦いとは程遠い場に身を置くと決めていますから」
「……まだ何も言ってないぞ?」
「ハハハ、貴方が言いたいことは何となくですが、分かりますよ」
「………はぁ、困ったもんだなぁ。このままノリで行けると思ったのに」

―――強いな。

 その物言いに苦笑する。確かに彼女のパーティーの魔術師は亡くなってしまったが、めげずにこんなにも早く勧誘してくるとは。
 流石は冒険者、隅には置けない、と頭では思いながらも、その切り替えの速さと、もう立ち直ったことに素直に感嘆する。

 彼女が人が亡くなっても何も感じない人だという事ではなく、人情に厚い人だと知っているから余計に。

「色々と世話になったな」
「いえいえ、こちらもいい経験をさせて頂きました。それと―――本当にいいんですか?」

 僕が何を指して言っているのか理解したハイネさんは、苦笑と共に言葉を吐く。

「いーんだよ。それは今回の例だ。………つーかお前は商人なんだろ?貰いもんは何も言わずに貰っときゃいいんだよ。その辺に律儀なトコ、ほんと向いてねぇよなぁ」
「ぐっ……。は、ハイネさんもそう言いますか!?」
 昔、肉親にも言われたセリフを言われ、思わず呻く。母と父がいつも言っていた、『お前は商人に変な英雄像をを持っている』という言葉を思い出し、脳内で少し反論をする。

―――商人は清く正しく誠実に―――

「まぁ、その性格が将来足を引っ張らなきゃいいんだけどな」
「ま、間違ってないはず………僕の理想像は……きっと……」
「お、おい?」

 そんなこんなで話していると、馬車の方から声が掛かる。

「アースさーん、準備終わりましたー?」
「はやくはやくー」
「あ、ゴメン!―――すみませんハイネさん、僕急ぎますんでっ!」
「おう、行ってこい!」

 カイとミナに急かされ、急いで荷馬車に乗り込む。そして停止させておいた【ゴーレム】を起動させ、出発する。

「では、お元気で!」
「あぁ、お前もまた来いよアース!」

 こうして、僕は新天地を求めこの都市、ヴルスグルナを出発した。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 お、わった。
 第二章、終わった。
 ちょっと疲れたのと時間が無いので、章末のあとがきはまた今度追記します。



 と、いうことで、無駄に長かった二章が終わりました……っ!
 やったー!
 当初はこんなに長くなる予定ではありませんでしたので、素直にうれしいです。

 最近は私情で忙しく、書ける時間がようやくできたのでこの15,16話を書いたのですが、内心「もう皆さん忘れてるよなぁ……」と思いつつあげたら、予想以上に閲覧数が伸びててビックリしました!
 ここまで見てくださった皆さん、本当にありがとうございます!
 これからも忙しくなる一方だと思いますが、出来る限り書ける時間を見つけ、頑張っていきたいです。

長文失礼いたしました。


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