複雑・ファジー小説
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- もちもちつよつよ旅日記
- 日時: 2024/04/10 16:15
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13631
夏に銅賞、冬に銀賞頂きました!
投票ありがとうございます!!
*誤字、脱字など読みづらい箇所多々あります、許してください。
*ダークな内容混じっているのでご注意ください。
***
もっちもちなスライムと低身長のつよつよ少女。
未熟な一人と一匹の、世界でひとつの旅日記。
出会いと別れの物語。
<<登場人物>>
*少女
年齢不明だが、背がちいさい。自分の本名、親、故郷を全く知らない。
それらを知ることが、旅の目的である。
*スライム
弾力のあるすらいむ。もちもちした触感。
***
[旅日記 目次]
episode 1 >>1
episode 2 >>2
episode 3 >>3
episode 4 >>4
episode 5 >>5
episode 6 >>6
episode 7 >>7
episode 8 >>8
episode 9 >>9
episode10 >>10
episode11 >>11
episode12 >>12
episode13 >>13
episode14 >>14
episode15 >>15
episode16 >>16
episode17 >>17
episode18 >>18
episode19 >>19
episode20 >>20
episode21 >>21
episode22 >>22
episode23 >>23
episode24 >>24
episode25 >>25
episode26 >>26
episode27 >>27
episode28 >>28
episode29 >>29
episode30 >>30
episode31 >>31
episode32 >>32
episode33 >>33
episode34 >>34
episode35 >>35
episode36 >>36
episode37 >>37
episode38 >>38
episode39 >>39
episode40 >>40
episode41 >>41..NEW
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.16 )
- 日時: 2023/02/27 15:54
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 16
昼下がり。
わたしはパン屋で熱々のカレーパンを店頭に並べていた。
親友はパン生地が子ね終わったようで、汗をかきながらビニール袋を脱いだ。
マキコさんのおばあさんのパン作りの方は一区切りついたようで
「これが終わったら余りのミニクロワッサン、おやつに食べましょうね。」と言ってくれた。
「はーい」と作業のスピードをあげてせっせとパンを並べていると、
店の外から「キャー!」と悲鳴が聞こえた。
どうやらだいぶ遠くから聞こえてきた声のようだ。
心配なので、わたしはおばあさんに「ちょっとみてくる」と言って走って店を出た。
親友が「まってぇ~」後から追いかけてきて、わたしの頭にぴょんと飛び乗った。
声が聞こえた方には人だかりができていた。皆に囲まれるようにして中心でうずくまる女の人がいた。
どうやら女の人が泥棒にあったようだ。
「わ、私の大切なペンダント..。母の形見なんです。誰か..」
しくしくと泣く女の人を見て、とても可哀想に思えたので、わたしは聞いてみた。
「泥棒はどっちへいったの」女の人はあっち。と指差したが、
きっと、もう大分遠くにいってしまってる、と諦めた顔で嘆いた。
わたしはすぐに女の人が指差した方に向かった。
屋根にひょいと登って、下をみると思ったより近くで泥棒らしき人物が逃げているのを発見した。
「ははっ。騎士団もまだ来てないし、このまま逃げ切れるぜっ。」
泥棒は右手にたくさんの盗んだものを担いでいた。
わたしは屋根からまっすぐに降りてそのまま泥棒の右手めがけて、高く足を振り上げた。
「おりゃ」
バコ!と音がして、泥棒の右腕の骨が軽く折れる音がした。
その勢いで盗まれたペンダントがポトリと落ちた。
わたしが回収していると「っ..!?」
泥棒は痛みに耐えきれず、しゃがみこみ、驚いた表情でこちらを見上げた。
後ろから「我らが騎士団!泥棒よとまれ!」と声がしたので振り替えると、数名の"騎士団"と名乗る人たちに出会った。
「きょ、協力ご苦労だった。..お、お嬢ちゃん。」
騎士団の人たちは唖然としてわたしたちを見つめた。
その中に、マキコさんと思われる面影の人物がいた。
「わ!うちの店のアルバイト諸君じゃないか!!しっかし、君たちがこの凶悪犯を..?」
たいしたもんだとマキコさんは喜んでわたしたちを褒めた。
「君のような強い者は、ぜひとも騎士団に入団してくれ。..気が向いたらぜひ。」
騎士団の人たちはわたしにそう言うと、泥棒を引っ張って去ってしまった。
最後に、「君たちの活躍をたたえて、今日はごちそうだな!」
とマキコさんは軽快なステップで列の後ろをついていった。
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.17 )
- 日時: 2023/05/03 21:09
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 17
「それにしても、びっくりだなぁ」
おばあさんが作ってくれた豪華な夕食ををむしゃむしゃとご馳走になっていると、マキコさんは言った。
「急に店を飛び出してしまうから、ビックリしたけど。」とおばあさんは笑って言った。
「す、すみません..」親友と謝罪をすると、そういえば、とマキコさんは思い出したようにポツリとつぶやく。
「そこのあんたは、明日から騎士団に特別入団だ。」
マキコさんはわたしの方にビシッと指を指す。
アルバイトは減るけど、この町のみんなを守れるぞー!と勢い良くマキコさんは手を突き上げた。
親友は引き続き、店でパン生地をこねるようだ。
「..ひとりぼっちかぁ」
今までずっと親友と一時も離れることはなかったため、ちょっと寂しい。
「こらマキコ。また勝手に決めて。この子にだって考えがあるだろうに」
おばあさんはマキコさんを叱ったが、わたしは大丈夫です、と返事をした。
「嫌だったら、すぐに断ってきていいからね」とおばあさんは優しく言ってくれた。
次の日の早朝、マキコさんはフライパンをガチガチ鳴らしてわたしたちを起こした。
「さ、今日は午前から騎士団を見学だぞー」
昨日につづき、もちもちパンをたくさん食べさせてもらうと、わたしは親友に別れを告げた。
「すぐ戻ってきてねぇぇえ」悲しそうに親友が泣く。おばあさんになだめられながら、親友は泣き止んだ。
「いってくるね、」とわたしは店を出た。
騎士団の本部はとても大きくて、門が開くと、ギギ..と大きな音が鳴った。
「成人してない見習いはこっちだ。」とマキコさんに案内されて、わたしはちいさな宿舎に入った。
宿舎に入ると、早速「だれー?新入り?」と
わたしより背丈が大きな子供がたくさん回りを囲んできて、言った。
「よわそ、」と誰かが呟いたので、わたしはムッとした。「そんなことないもん!」
ユージと同じくらいの背丈の男の子がいたので、わたしはふと、ユージの事を思い出してしまった。
「仲良くしろよー。午後になったら交代だから」とマキコさんは手を振って宿舎を出ていった。
でも、皆はユージみたいに優しく接してくれず、プイッと向こうをむいて、話してくれなかった。
「..。」
あ、でもユージも、最初はこんな感じで冷たかったけ。
じゃ、じゃあ、この人たちもすぐなかよしに、なれるよね!
そう思って我慢して打ち解けるのを待っていたが、宿舎の中はにぎやかなのに、
自分の周りだけは静かで嫌な空気が漂っていて、なんだか胸がざらざらした。
親友のような話し相手もいなくて、すごく寂しかった。
泣いたらまた何か言われそうだと思って、ずっと床に座っていた。
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.18 )
- 日時: 2024/01/04 21:58
- 名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)
episode 18
静まり返った宿舎で、わたしは体育座りをして、ついさっきのことを思い出していた。
すぐ戻ってきて、と言って泣いていた親友が懐かしくて、懐かしくて_
ついさっき店を出たばっかりじゃないか、自分は弱虫だ、と思い言い聞かせていたが、
やっぱり一刻も早く店に戻りたかった。
それでもわたしは、こんなとこで寂しさに負けてたまるかと、意地を張って座っていた。
すると突然、リン、リンと鐘が鳴って、皆が外へ出ていった。
わたしも慌てて真似をするようについていくと、外には大人の騎士団の人がいて、
町中で火事があったようだ、と教えてくれた。
「皆、消化に向かえ!」と指示があって、宿舎の子供は一斉に火事の現場へ走り出した。
現場の家は勢い良く燃えていて、周りは煙たかった。
親友ならすぐ水を出して消してくれるのに、と作業をしながら思った。
大きなバケツに水道の水をくんで、パシャッと水をかけるという作業を繰り返し行って、
皆ヘトヘトだったが、そんな小規模な消化活動じゃ火はいっこうに消えなかった。
消えるどころか、火はどんどん勢いを増す。
やっぱり、親友の手を借りないと火は消えない!
そうおもったので、わたしは親友がいるであろうパン屋の方へ走った。
急いでお店に戻り、扉を開けると、親友が
「やった!戻ってきた!おかえり~」とのんびりとした口調で出迎えてくれた。
親友の和やかな表情を見て、抱き締めたくなったし、再開を喜びたいところだったが、我慢して「ちょっと来て!」と親友をつかんで店の外に出た。
親友はとびきりおどろいて「うわぁぁぁぁ」と困っていたが、
わたしが火事の現場まで連れていくと「なるほど」と頷いた。
「さっきおばあさんがパンをたくさん食べさせてくれたから、元気有り余ってるよ!」と体をぷるんとさせて、
親友は家の方に大量の水をぶちまけた。
「うぉぉぉぉ」
スライムは出会ったときから、体から水を噴出できる。
ずっと不思議に思っているのだが、何で水を出せるのかな?
こんなに威力のある水が出せるのに、本人の体力があるときと、気が向いたときしか使ってくれないため、いつもは弱いのだ。
ほんとはすごいのにな、とわたしは残念に思ったが、無事火事はおさまった。
騎士団の人たちは、皆驚いて目を丸くさせた。
また役に立てたな、と誇らしく思ったのと、宿舎の皆に認めてもらえる!
仲良くしてもらえるかなと期待した。
けれど。
「なんだ、そいつ。」「変なの。」「お前、勝手な行動すんなよ」「きも」
案の定、皆は冷たかった。逆に否定の言葉を口々に言われて、腹が立ったと同時に悲しくなった。
せっかく火を消したのに。役に立ったのに。
なんで?
少女は気がついたら泣いていた。涙がポロポロと溢れていた。
やっぱり認めてもらえなかった。
悔しい、悲しい。
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.19 )
- 日時: 2024/01/20 10:52
- 名前: sumo (ID: 2cE7k4GX)
episode 19
「うわ、泣いた」「弱」
宿舎の子供たちがわんわん泣く少女の悪口を言うのを見て、スライムは
「弱くなんかないやい!この子はおまえらなんかよりずーっと強いやい!」と言い返したが聞く耳も持たれなかった。
わんわん泣く少女を撫で撫でしながら、スライムは宿舎へわいわい戻る子供たちの後ろ姿をにらんだ。
そこへ、マキコさんが来た。
「おや、アルバイト諸君どうしたってんだ?」心配そうに少女の顔をのぞきこんだ。
全く泣き止まず一言も発しない少女を見て、
マキコさんがおろおろしていると、マキコさんのおばあさんも駆けつけた。
「こら、マキコ何してんだい。この子泣かして。」
おばあさんは「もう、みんな、店に戻ってきなさい」とマキコさんも、少女もスライムも店につれ戻した。
「なるほど」
落ち着いた少女から、やっぱろ親友がいないと寂しいこと、宿舎の皆は冷たかったこと、
火事を消すためにスライムを連れてきたこと、すべてを聞いたおばあさんは、納得した。
「もう騎士団、いきたくない」か細い声で少女はポツリと言った。
それでいいよ、とおばあさんは言った。
「騎士団、そんな嫌なのか..?」マキコさんは困った表情で聞いた。
少女は首をコクリと縦に振って正直に答えた。
「んなことはどうだっていいんだ。アンタって奴は無責任に連れてきて、泣かせやがって」
おばあさんはマキコさんをきつく叱った。
マキコさんもきつく叱られて反省したみたいで、
「宿舎のやつら..自分のことしか考えないんだ。あたしだってそうだった。ごめんね、アルバイト諸君..。」
と二階の自室にこもってしまった。
おばあさんは「辛い思いをさせてしまったね、..もうそろそろお家に帰りなさい。お家の人も心配してるよ」
と申し訳なさそうに言ったのだが、少女は小さな声で「..お母さんと、お父さんは、その、今、探してるから。」と呟いた。
おばあさんは一瞬、少女の言っていることが分からなかったが、
少女の寂しそうな顔を見てすぐ理解した。
「あんた...孤児なのかい?」
おばあさんは驚いていたが、ありゃ、そうか..。と黙り混むと、
「んじゃ好きなだけここでパン食べるがええ。もう泣かせはしないさ」と目を細くしてにっこり微笑んだ。
次の日の朝。
「おっはよーございます!!」
起こされる前に早起きをして、少女は元気に挨拶し、トングでパンを掴んだ。
マキコさんはすまなそうに二階から下りてきたが、
少女は「気にしないでください!悪いのはわたしですから!」と明るく振る舞った。
その日から、少女が騎士団に行くことはなかった。
- Re: もちもちつよつよ旅日記 ( No.20 )
- 日時: 2023/03/06 17:51
- 名前: sumo (ID: 8kWkLzD1)
episode 20
少女が騎士団に行かなくなって
一週間ほどたったある日の朝、おばあさんは言った。
「そこのあんた、買い物に行ってくれないかい。」
「わかりました!」おばあさんからメモとお金を渡されて少女は元気よく返事をした。
「一緒に行こっ」少女はスライムを頭に乗っけた。
もう、スライムを置いていくことはしなかった。
騎士団からかえって来たあの日の夜、少女は約束したのだ。
「これからも、ずーっと一緒だよ..。」
早速、少女はスライムと共に近くの商店街まで、足を運んだ。
「えぇと、まず小麦粉..」米や小麦を売っている店を探して、お金を渡した。
「小麦粉を、3ふくろください。」
小さな身長を精一杯ぐんと背伸びして伸ばして、お会計のカウンターで注文した。
「おや、おじょーちゃんおつかいかい?小麦粉、重いけど大丈夫?」店員に心配されたが、
「だいじょーぶです!」と右腕をぱんぱんと軽く叩いてみせた。
小麦粉を無事購入したあと、少女はじゃがいもとにんじんを売っている"八百屋"に向かった。
その頃、おばあさんは心配しながらカレーパンを揚げていた。
「大丈夫かねぇ..。あの子。」
おばあさんは騎士団にいかなくなってから、笑っているけれど、なんだか少し、元気が無さそうな雰囲気の
少女を心配して買い物をお願いしたものの、危ない目にあってないか、やっぱり不安になったのだ。
「マキコ。あんた見てきて頂戴。」
おばあさんは心配でしょうがないので、マキコに様子を見てこいと頼んだ。
マキコはえぇ..と少しうんざりしつつ、「もとはと言えばあたしが悪いんだし、行ってくるよ」と
少女とスライムの尾行を開始したのだった。