二次創作小説(新・総合)

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【合作】逃走中~ザ・ラスト~【完結!】
日時: 2019/09/06 13:58
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

モンブラン博士の逃走中、最終作!
私、こなくんさん、ヘキサさん、ネクスタさん、名無しさんによる5人の合作となります!
これまでの逃走中で逃走成功した者や無念の涙を飲んだ者、そしてスター流のメンバーが大集合する最後の作品!
果たしてラストに逃走成功を果たすのは誰になるのでしょうか!


逃走者一覧

小泉花陽
矢澤にこ
南ことり
ねこ娘
グレイ
ジェネラルシャドウ
天ノ川きらら
火野レイ
相田マナ
黄金バット
木下秀吉
ミスタークエスチョン
小泉さん
ロディ
川村猫衛門
不動仁王
星野天使
美琴
カイザー=ブレッド

>>1

逃走者リスト
>>21>>22

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.61 )
日時: 2019/09/01 21:59
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

試合開始と同時に突進を仕掛けてきたのはドクロ少佐だった。ゆうきはことりを後ろに控えるように指示を出し、自分が先発になった。中央で向かいあう両者。
静かな睨み合いが続いたが、突如として少佐が大鎌を振り下ろしてきた。ゆうきを一刀両断にする算段だったのだ。しかし、ゆうきはその動きを読んでおり、跳躍して一撃を躱すと、その顔面に全力に蹴りを見舞った。
するとドクロの首が外れ、頭部は海へと落ちていく。
直後に水飛沫が上がり大爆発が起きた。少佐の頭部が爆発したのだ。

「俺は前回お前と闘っているから、戦法は承知なんだよ!」

司令塔である頭を失いフラつく胴体に、ゆうきとことりは同時にキックを浴びせた。

「ダブルキーック!」

強烈な一撃を受けて胴体は吹き飛ばされ、空中で爆散。

「ドクロ少佐!」

参謀が思わず声を荒げて同志の名を呼ぶが、時既に遅かった。

「これで残るはお前だけだぜ?」
「ちゅん♪」
「フフ……ハハハハハハハハハハ」

2対1と不利な状況に高笑いする鋼鉄参謀にゆうきは気でも触れたのかと思ったが、彼は正気だった。己の不利を喜んでいるのだ。

「戦法を知り尽くしていたとはいえ、ただの人間が少佐殿を撃破するとは夢にも思わなかった。その武、認めるとしよう。だが、少佐殿は倒せてもこの俺を倒せるかな?」
「できるさ。ことりちゃんと力を合わせれば、俺は無敵だ!」
「ゆうき君……!」
「ことりちゃん……!」

互いを見つめ合い抱きしめ愛を確かめ合う。その光景をじっと見ていたが、やがて鋼鉄参謀は仁王立ちになると宣言した。

「どこからでもかかってくるがいい」
「それじゃあ、遠慮なくいかせて貰うぜッ」

ゆうきは参謀の胸板に鉄拳を炸裂させ、続いてその足を蹴る。
ことりもロープの反動を活かしたフライングクロスチョップを打つが、参謀の身体は微動だにしない。それどころか逆にゆうきとことりの手の皮が裂け流血する事態となった。その後も休む間もなく攻撃を続ける2人だが、どれだけ攻撃しても決定打を与えられず、疲弊し自分達がダメージを受けるばかりであった。
額に玉の汗が浮かび、息が切れた2人に参謀が目を光らせ、告げた。

「もう終わりか。それでは今度はこちらからいくぞ。スティール!」

独特の叫び声を発し、疲弊しきったゆうきとことりをエルボーで吹き飛ばし、ロープに帰ってきたところをキャッチ、2人同時にベアハッグに捉えた。
鋼鉄の腕で胴を締め上げられゆうきの耳にはメリメリという腰の骨が悲鳴を上げる音が入ってきた。このままあと数分もすれば自分達の全身は砕かれ、地獄へ真っ逆さまだ。苦悶していると偶然にもリングを高波が襲い、激しい波がリングへとなだれ込んできた。その水の威力に参謀は思わず手の力を緩めてしまい、2人の脱出されてしまった。けれどベアハッグで搾り取られたダメージは相当なもので、2人は片膝を突き、立ち上がることもままならない。

「スティール!」

ゆうきとことりに手心を加えることなど全くない鉄の魔人は巨大分銅を振るい、容赦なく彼らを攻め立てる。超弩級の鉄の球がことりの右半身に命中。

ベキッ、ベキビキッ、バキィッ!

乾いた音がしてことりは鮮血を吐き出し、前のめりにダウン。

「ことりちゃん!」
「ゆうき君……痛い……」

ことりは激痛のあまり大粒の涙をボロボロと流した。
彼女は先ほどの強烈な一撃を受け、右腕や右足の骨にヒビが入っていたのだ。
しかしことりは懸命に激痛を堪え立ち上がろうとする。

「ことりちゃん、もういい。ここは俺に任せてくれ!」
「ダメだよ……ことりはゆうき君のパートナーだもの……迷惑、かけられ、ない……」
「迷惑なんて思ってないよ。俺はことりちゃんが居てくれるだけで心強いんだ」

優しい声で言うとキッと鋭い目で鋼鉄参謀を睨み。

「テメェ! ことりちゃんは女の子なんだぞ!? どうしてこんな非道な事ができるんだ!?」
「俺は貴殿らに敬意をもって接しているに過ぎぬ」
「どこか敬意だよ! 思いっきり痛めつけているじゃねぇか」
「相手が誰であろうと全力で相手をし、叩き潰す。それがこの俺、鋼鉄参謀の生き様。背後は向けぬ常に真っ向から勝負を挑む。戦場で情などかけてみろ。それこそ侮辱であろうが」

現代に生きているゆうきと太古の昔より生き、闘い続けてきた武人。両者の価値観は決定的に異なっており、ゆうきは参謀との間に大きな溝を感じた。言葉で分かるような甘い相手ではない。武力で示さないと伝わらないのだ。だが、自分の攻撃が一切通じない相手にどう対処すればいい? ことりちゃんをこれ以上傷つけるわけにはいかない。それなら……
ゆうきは口を軽く持ち上げ小さく笑った。

「玉砕覚悟で闘うしかねぇな。参謀のオッサンよぉ」
「よく言ったゆうきよ! 男とはそうでなければならぬ! 来い、ゆうきよ、貴殿の力、完璧に叩き潰して見せようぞ!」
「うおおおおおぉっ!」

命を懸けた男と男のぶつかり合いが始まる――

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.62 )
日時: 2019/09/02 13:51
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

ガシーン!

鉄と生身の身体がリングの中央で衝突。打ち勝ったのは参謀の方だ。
ゆうきはコーナーポストに吹き飛ばされ、鉄柱に後頭部を強打。
意識が朦朧とする中、重戦車の如き参謀の巨体が肉迫する。

「ゆうきとやら、貴殿の力はその程度のものなのか。大見得を切り、俺を期待させておいて掠り傷さえ負わせられぬほど弱いと言うのか」

鋼鉄参謀の美声にはゆうきに対する失望と怒りが混じっていた。

「男ならば反撃してみせよ!」

首右腕一本だけでゆうきの首を掴んで彼を高々持ち上げる。けれど、ゆうきの腕はだらりと下がったまま。抵抗する力を失ってしまったのだろうか。

「ぬうぅぅ……」

唸った参謀はゆうきの顔面を鉄柱に2度、3度と叩きつける。
額が割れ、鮮血が吹き、返り血を浴びるが参謀は攻撃の手を緩めない。

「ジェネラルシャドウの眼は誤りであったか!」

ゴミのようにゆうきを放り投げ、落下してきたところを、彼の肩を鋭利な角の先で串刺しにして頭上でグルグルと振り回す。

「シャドウがゆうきとことりは優れた格闘技者だと言ったから、黄泉の国から蘇り対戦を希望したというのに。これでは看板倒れではないかーッ」

鋼鉄参謀とジェネラルシャドウは共に武人肌であったので不仲が多いデルザー軍団において比較的良好な関係を築いていた。そのシャドウからことり達の話を聞き興味を持った参謀は、一度闘ってみたいと思っていたのだ。
ゆうきを頭上で回転させつつ、負傷したことりに接近し、その腹を蹴る。

「け……ほ……っ」

目を見開き唾を吐き出し、腹を抑えて倒れたことりを参謀は踏み潰す。

「ことりとゆうきはただの脆弱な人間に過ぎなかったということか。単にこれまでの相手がそれ以下の実力でしかなかったということなのか!?」

何度目かの背を踏みつける時、これまで無抵抗だったことりが身体を反転させ、前面になると、下ろされた参謀の足を両腕で掴まえたのだ。

「今更無駄な抵抗などしても貴殿の株は下がるのみ。大人しく倒されていればまだ可愛げがあるものを。中途半端な抵抗で俺をどこまで失望させる気なのだ! その折れた腕で何ができると申すかーッ!」
「ゆうき君を守る。ことりがゆうき君を守ってみせるーッ!」

大好きな人を守りたい。その一途な想いがことりの身体にある変化を起こした。
彼女の全身が黄金色に発光し始めたのだ。

「ぬぅ……この力は!?」

突然の変化に戸惑いもあり、そのまま足を持ち上げられバランスを崩した挙句、参謀はこの試合初めてのダウンを奪われた。
角もゆうきから離れ、ゆうきとことりは互いに歩み寄り肩を貸し合い、どうにか立ち上がる。参謀は軽快に立ち上がると無表情な顔で両者を見つめ。

「貴殿らは満身創痍。そこからどう足掻くつもりなのか」
「これまでの闘いで分かったぜ。鋼鉄参謀、お前の弱点が!」
「ちゅん!」
「フハハハハハハハ。何を言い出すかと思えば笑止千万。俺に弱点などあるはずがなかろう」
「それがあるんだな。致命的な弱点が!」

ゆうきとことりは参謀から身を翻すと、いきなりザブンと海へ飛び込んだ。

「弱点を見つけたなどとホラを吹いて逃げる気だな。この卑怯者共め!」

彼らに続いて海に入った参謀はゆうき達に追いつくと、ゆうきに体当たりをして深く海へと沈めつつ、海中でその首を締め上げる。しかしゆうきも、その首締めを解き、背後をとると彼をバックドロップのように簡単にひっくり返した。
水の中では陸では重いものがあまり力を入れずに動かすことができるのだ。
参謀の胴を両足で挟み込みパイルドライバーに似た体勢にすると、ことりも鉄の魔人の頭部に首四の字を極め、3人揃って落下していく。勢いよく海底へ着地したところで技を解き、海上へ戻り、息を吐き出す。参謀は技が効いているのか、あがる気配はまだない。その隙に2人はリングへ帰還。
しばらくすると、ロープの外からにゅっと参謀の鋼鉄の指が伸びてきた。
ずぶ濡れでリングへ降り立った彼は眼光鋭く対戦相手を睨み、分銅を手に取る。

「貴様ら、跡形もなく粉砕してくれるッ」

完全に頭に来たのか、分銅を振り回しまくる参謀。それが鉄柱やコーナーポストに当たると飴のように曲げていく。だがことり達は余裕で攻撃を躱している。
何か勝機をつかんだのだろうか。

「鋼鉄参謀。お前はまだ気づいていないのか。自分の身体の異変に」
「異変だと?」

ゆうきに問われるが参謀は意に返さず、分銅を振るう。と、その動きが徐々に遅くなっていった。

「何だ。俺の身体が、動かんっ」

分銅が持ち上がらないばかりか、手も足も自由に動かすことができない。
何が起きたのかと自らの身体を見渡すとその原因が判明した。何と、彼の身体がいつの間には赤銅色に変化し錆びついていたのだ。

「俺が錆びている。まさか、貴様ら謀ったな!」
「そういうこと」

鋼鉄参謀の身体は全てが鋼鉄で構成されている。従って塩分を大量に含む海水に長時間晒された場合錆びつきその機能を著しく低下させてしまうのだ。ゆうきとことりが海中の勝負に持ち込んだのはそれを狙ってのことだった。

「おのれ……!」
「言っておくが俺達はお前の動きをただ封じただけじゃないんだよ」

ゆうきは突進し、参謀の甲板に拳を、ことりは彼の脇腹に蹴りを打つ。

「学習能力のない者共だ。貴様らの攻撃は俺には通じぬと――」

参謀の言葉が止まった。言った傍から受けた箇所がボロボロと崩れているからだ。

「錆びついたってことはその自慢の防御力も年貢の納め時って訳さ」
「ぬぐぐぐ……」
「食らえ、俺とことりちゃんの最強タッグ技を!」

ゆうきはことりを背に担いで、彼女のとさかを向けたまま参謀に真っすぐに突進していく。
技の体勢はキン肉マンのモンゴルマン&バッファローマンのロングホーントレインに近いものだった。ことりのとさかは弱体化した参謀の身体をつき破り、彼を刺したままでロープで空中に舞う。上空で参謀を下、ことりを真ん中、ゆうきが最上段にした姿勢で超高速で落下し、背中から参謀をマットに激突させた。

「ちゅんちゅんブルートレインスプラッシュ!!」
「グハアアアアアッ」

叫び声をあげ、鋼鉄参謀は完全失神。
その瞬間、ゆうき&ことりチームの勝利が決定した。

ドクロ少佐&鋼鉄参謀VSゆうき&南ことり 勝者 ゆうき&南ことり

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.63 )
日時: 2019/09/02 17:48
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

猫娘と目黒はXドームに現れたリング上で手四つに組み合い、膠着状態を続けていたが、目黒は視線を彼女からモニターに移して呟く。

「鋼鉄参謀とドクロ少佐は敗れたか。だが結果的にゆうき達を追い詰めたのだから、良しとするか」
「アンタの相手はこの私よ!」

猫娘は後方に倒れ、巴投げで目黒を投げ飛ばす。目黒は宙高くに舞い上がるが、背中の翼を展開し着地。ダメージを最小限に抑え、冷たい瞳で猫娘を捉える。

「怨めしい。お前に辿り着くまでに何人倒す必要があったか。手間どったものだ」
「何の話よ」
「まだ気づかぬか。これだから野良猫は困る。俺がジャドウ=グレイに依頼されたのは猫娘、お前を始末することだ」
「!!」

猫娘は目を見開いた。これまでスター流や逃走者を容易く倒してきた恐るべき悪魔、目黒怨。彼の狙いがまさか自分の命だったとは。

「主催者のジャドウ=グレイから私の始末を依頼されていたなんて、意外ね。でも、それならどうして最初に私を狙わなかったのかしら」
「お前を狙えばスター流の者達が邪魔をするのでな。そうならないように、片づけたという訳だ」
「邪魔者だから消すって……ジャドウはスター流の一員なんでしょ。同じ仲間を始末するのを許さないはずよ」
「お前の頭の中ではそうなのだろう。だが、真実は違う。ジャドウは俺に告げた。
スター流の門下生が邪魔をしてきたら一切の躊躇いもなく始末せよと。奴には仲間意識など皆無。あるのはただ、スターへの忠誠心だけだ」

猫娘はジャドウが信じられなかった。
主君の為に何万年も共に過ごしてきた仲間をヒットマンに始末させる。
奴には人の心が無いのだろうか。

「……せない……」
「何か言ったか、野良猫風情が」
「許せないって言ったのよ!!」

猫娘は化け猫顔になると十指の爪を伸ばして、四つん這いになるとパッと血を蹴り、物凄い速さで目黒に襲い掛かっていった。

バシュゥゥッ!

猫娘の爪による袈裟斬りが炸裂し、目黒の胸から脇腹にかけて切り傷が出来る。
二発、三発、四発。怒涛の引っ掻き攻撃を受け、ヒットマンは後退していく。

「私の始末の邪魔をするから仲間を切り捨てたですって!? ジャドウ、アンタは仲間を何だと思っているのよ!」

猫娘はここにはいないジャドウ=グレイに向けて怒りを爆発させた。彼女は不動仁王と最初に出会った時、その印象は決して良いものとは言えなかった。
短気で怖くて恐るべき力を誇る男。けれど彼の本質は厳格ながらも弟想いの好漢だった。平和主義者の美琴、仲間を引っ張るカリスマに溢れたカイザー、闘ったことで友情が生まれた星野、テンションは高いが誰よりも仲間想いのロディ……個性は強いが誰もが優しく熱い正義の魂を秘めていた。ジャドウはそんな彼らと何万年という果てしなき時間を共に過ごしてきた仲間ではなかったのか。
気に入らないという理由だけで刃を向けるほど、希薄な関係だったのか。

「だああああっ」

渾身のヒールによるキックで悪魔を吹き飛ばし、跳ね返ってきたところに彼の鼻に膝をめり込ませる。

「ぐっ……」

緑色の鼻血を噴き出し、苦悶の表情を浮かべるが、猫娘は十本の爪の刃を光らせ、目黒を縦に両断した。

「私は仲間を大切にしない男が世界で一番大嫌いなのよッ」
「ぐああああああッ」

怒気を含んだ声で告げ、左右に別れた目黒がマットに轟沈する。
しかし、である。
目黒はすぐさま元の姿に再生すると、彼女の胴を掴み、バックドロップを敢行。

「え……!?」

完全に倒したと油断していた猫娘は敵の反撃に対応できず、大きく弧を描いたバックドロップを受け、脳天を叩きつけられてしまう。それでも俊敏に立ち上がり間合いをとるが、悪魔はニヤニヤと笑っていた。

「何がおかしいのよ」
「決まっているだろ? お前を今から思う存分甚振れることだよ!」

クワッと耳まで裂けた口にずらりと並ぶ鋭い牙。目黒の歓喜の笑みは猫娘の化け猫顔が霞んで見えるほどに禍々しいオーラを放っていた。猫妖怪の動体視力でも捉えきれないほどのスピードで急接近すると、彼女の細い腹に拳を一撃。
痩せた猫娘の腹が大きく凹み、彼女の小さな口から吐しゃ物が吐き出される。

「ゲフッ……ガフゴホッ……」
「美貌で知られる野良猫が嘔吐するとは。汚らしいことこの上ない」

目黒に受けた一撃は過去、どの対戦相手とも比較にならぬほど速く重いものだった。立ち上がろうにも足が震え、踏ん張りがきかない。すると目黒は猫娘の頭を鷲掴みにして無理矢理起き上がらせる。

「どうした? 俺が手を貸してやったぞ。さあ、反撃してみろ」
「ニャアアアッ」

右腕を振るい、斬撃を見舞うが、目黒に直撃する前に掴まれてしまう。
そして頭のてっぺんから顔にシフトした目黒の左腕は徐々に猫娘を握る手に力を加えていく。顔面に電流のように走る激痛に彼女は絶叫することしかできない。そして頭から彼女を勢いよくマットに叩きつける。手を放して己の掌を見ると、赤い血がべったりと付いている。

「妖怪が流すのは妖気だけかと思っていたが、そうではないらしい。人間と同じ赤い血とは。お前は人間に似ているだけあって血の色も近いのかもしれんな」

何とか上半身を起こした猫娘だが、息は荒い。僅か2発の攻撃で意識を失う寸前にまで追い込れたが、彼女の闘志は消えていなかった。爪を収納し、素早い脚払いで転倒させると、得意の逆エビの体勢に入る。立ち技がダメなら関節技という訳だ。メキメキと目黒の骨から乾いた音がするが、彼女は技を解くどころか力を増して搾り上げる。

「クククク、もっとやれ、もっとだ」
「元よりそのつもりよ。アンタみたいな悪党は真っ二つになった方がマシよ!」


バキベキバキバキッ!

背骨が砕け、遂に目黒の身体は横に避け、上半身と下半身が分かれる事態となってしまった。技を解いた猫娘は、凄惨な光景に思わず目を背けた。
いかに許せない敵とはいえ、やり過ぎただろうか……
そう思った瞬間、目黒の下半身から上半身が、上半身から下半身が生えてきた。

「分裂した!?」
「単に再生するだけではつまらぬからな。2人係で痛めつけるとするか。先ほどの礼にな……」

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.64 )
日時: 2019/09/02 21:22
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

1人の目黒が猫娘を背後からチキンウィングに捉え、動きを封じるともう1人の目黒が正面から鉄拳を顔面に見舞ってくる。まともに受けた猫娘の口が切れ、血が噴き出す。目黒は残忍な笑みを浮かべながらパンチのラッシュで攻めていく。暫くしてタコ殴りにするのに飽きたのか彼が拳を下ろした時には、猫娘の顔は晴れ上がり、右目は殴打により潰されてしまい、機能しない。
だが猫娘は一方的に殴られながらも頭を回転させ反撃の策を練っていた。

「アンタに教えてあげるよ。女子の顔を殴ったらどういう目に遭うのかをね」

突如として目黒のチキンウィングを下からするりと抜けると、背後の目黒に一本背負いを食らわせマットに叩きつけ、もう1人の目黒に流星の飛び蹴り。

「ぐおおおッ」
2体の目黒はダウンを奪われ、訳が分からなかった。どうしてあれほどの劣勢からこうもあっさり戦局を覆すことができたのか。ダウンしている目黒に猫娘は間髪入れずにニードロップを2発、3発。強力な膝を食らって悶絶していると、猫娘は腕を腰に当てて化け猫顔で自分を見ろしてきた。これまで散々甚振ってきた相手に見下ろされる屈辱は目黒にとって計り知れないものがある。

「アンタ、まだ分からないの? 元々1人のアンタが分裂して2体に増えたら、力も当然2分の1になるのよ」
「!?」

分身は有利とばかりに高を括っていた目黒だったが、意外な弱点を晒され、唸る。
ならばと分裂から元の1人に戻ると猫娘に再び対峙。しかし、分裂した際のダメージが大きく、立ち上がるのに僅かなロスが生まれた。猫娘は風をまいて突進すると、拳を固く握り、返礼とばかりに怒涛のパンチの雨嵐を見舞ってくる。

「ニャニャニャニャニャニャ……」

北斗百裂拳さながらの無数のパンチに目黒は成す術もなく食らいまくり後退を強いられる。先ほどまでの展開が嘘のような猫娘の反撃に目黒は焦りを覚えた。
まずい。このままでは敗北もあり得る。俺が負けるというのか? プロのヒットマンである俺がこんな小娘に? 負けたら俺の地位は地に堕ち、ジャドウからは見切られ、当然報酬も貰えない。そんなことがあってたまるか。この闘い、どのような手段をもってしても勝利しなければならない。勝つことが、俺の至福の未来に繋がるのだ。目黒は拳のラッシュを受けながらも自らの腰に手を伸ばし――

パァン!

「……え?」

猫娘は己の眼を疑った。下を見ると赤いワンピースが自らの血で真っ赤に濡れている。

パァン!

2発目の轟音が轟く。
痛さよりも思考が追い付かなかった。この至近距離で目黒は何をしたのか。
霞む視界に彼を見ると目黒は愛銃を構え、引き金を引いていた。
猫娘は理解した。
そっか、私、撃たれているんだ。
腹に一発、両肩に一発ずつ。
弾丸を食らう度、身体から血と妖気が噴き出す。
4発目と5発目の銃弾は彼女の細い脚を貫通。
遠のく意識に目黒の笑い声が響く。

「最初からこうしておけば良かったぜ」

ぐらりと傾く猫娘の腹に貫手を炸裂。

ザクッ!

川村を消滅させたそれは猫娘の腹と背を容易く貫いた。
続けて、目黒は彼女の尖った耳の中に指を入れて、聴力を破壊。

「まだ終わりじゃないぜ。この技で片づけてやる」

抜け殻同然となった猫娘を上空に放り投げ、自らもそれを追う。
そして空中で背中合わせとなったところで彼女の頭部を両腕で極め、更に彼女の細い両足を自らの足で固める。そしてそのままの体勢のままで加速をつけ、落下していく。

「マッキンリー颪(おろし)!」

元々はキン肉マンに登場する超人ポーラマンの技だが、目黒はそれを見た際、とても気に入り特訓した結果、自らの技として使用することができるようになった。無情の一撃を食らった猫娘は、白目を剥いて完全に意識を失っていた。
倒れた彼女の耳や腹からおびただしいほどの血が流れ出て、リングはまさに血の池状態となってしまう。限界以上のダメージを受け、猫娘の身体は妖気を放出しながら消滅。後には彼女の人魂だけが残ってしまう結果となった。宙に浮かぶ猫娘の魂を、ガラス瓶に収納し、きつく蓋を閉める。人魂さえも逃がさない完全なる詰めを成し遂げたところで、目黒は瓶を持った手を高々上げた。


「依頼達成―ッ!!」

猫娘VS目黒怨 勝者 目黒怨

Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.65 )
日時: 2019/09/03 12:50
名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)

沖縄は首里城の正殿前に設置されている特殊リングでは、白装束を脱ぎ正体を露わにしたサンシャインと矢澤にこが激しい睨み合いを続けていた。
その身長差は約3倍、体重差に至っては圧倒的な開きがある強敵を前にしても、にこは怯む様子を見せることはなかった。モニターに映し出された目黒怨の掌には猫娘の魂の入った瓶がある。

「猫娘。アンタはよく戦ったわ。あとはこのにこにーに任せるニコ!」
「フン。どんな奴が相手かと期待してみれば、チビの小娘ではないか。お前如きが悪魔六騎士首領格であり砂地獄の番人であるサンシャインを倒せるとでも?」
「やってみなければわからないニコよ!」

ニコは跳躍するとサンシャインの甲板にパンチを一発。先制攻撃が炸裂するが、サンシャインは豪快に笑うばかり。

「グオフォフォフォフォフォフォ。お前の攻撃など蚊に刺されたよりも感じぬわーッ!」
ビックブーツでにこを蹴ってコーナーに吹き飛ばしたところで、再び笑い。

「お前は沖縄でPV撮影をした事があるそうだが、今回はこの首里城がお前にとっての墓場となるのだ。悔しいか?」
「それはこっちの台詞ニコよ!」

再び向かっていくにこに対し、サンシャインは身体をコマに変化させ、自身の体躯を猛烈に回転させながら突っ込んでいく。

「地獄のコマーッ!」

猛回転するコマに身体が触れた瞬間、にこは空高く打ち上げられてしまう。
超人の身体でさえ簡単に舞わせる威力の地獄のコマは、超軽量級のにこにとっては凄まじい力を誇っていた。サンシャインは目を細め、軽口を叩く。

「この分だと宇宙の果てまで飛ばされたかもしれんな」

だが、にこは空中で上昇をストップさせると降下しながら錐揉み回転を加えていき、隕石のように迫っていく。

「にこにーアイドル魚雷!」

転んでもただでは起きない矢澤にこ。サンシャインの攻撃を利用し、手痛い一撃を食らわせる。サンシャインはダウンし大量の砂となってしまった。

「にっこにっこにー♪」

いつもの決め台詞と決めポーズをするにこに、砂の中からにゅっと手が伸びてきて彼女の細い体を掴む。サンシャインは自由自在に砂に変形できる能力の持ち主で、にこが調子に乗るのを待っていたのだ。

「お前との闘いもいい加減飽きてきたわ。という訳で決着といこうか」

飽きの早いサンシャインはスポンジを握るかのように少女を握る。
本来ならこれでKОと思われたが、握りしめた勢いでにこが掌からビックリ箱のように放たれてしまった。宙で回転し、サンシャインの脳天に踵落としを打ち込む。強烈な一撃に砂の超人の顔は真ん中から縦に裂けるが、裂けた傍から再生していく。

「俺に打撃は効果がない。と言っても、変形能力は俺にとっては補助に過ぎぬ。
この俺の主力武器は超人界でもトップクラスの巨体を生かしたパワー攻撃にこそあり!」

バシィッ!

にこの身体の半分ほどはあろうかという手が強襲し、水平チョップを見舞う。
口から血を噴き出し、ゴロゴロと地面を転がり初のダウン。

「どんどんいくぞ、矢澤にこーッ!」

鉄球のような拳を受け、くの字に身体を曲げるにこ。
打撃の連続攻撃にたちまちグロッキーに追い込まれる。
サンシャインは特徴的な笑い声を発し言葉を続けた。

「南ことりとゆうきは鋼鉄参謀との闘いで戦闘不能となり病院送りとなった。
猫娘は目黒に敗れ、魂だけの存在と化してしまった。これが何を意味するのか、お前にはわかるか?
俺がお前を倒せば、残る決勝進出者はカイザーただ1人ということになるのだーッ!」

彼の発言に、にこはハッとした。
自分が負けたらカイザーだけ?
頼れる仲間はいない。
スター流の助けもない。
牢獄では脱落した逃走者達が消滅の危機に瀕している。
そして何よりことりが脱落した今、μ'sのメンバーはにこだけ。
にこが倒れたらμ'sは全滅という結果に終わる。賞金は手に入れたい。
だけどそれ以上にジャドウに馬鹿にされっぱなしで終われない!

「にっこにっこにー。笑顔届ける矢澤にこにこー。にこにーって呼んでね! ラブにこ♪」

脂汗を浮かばせながらも全力の笑顔で矢澤にこは立ち上がる。
彼女は負けられない。負けてはいられないのだ。

「グオフォフォフォフォフォフォ。お前に残されたのは惨めに叩き潰される未来だけよッ」

巨大な掌が迫るが、にこはそれを腕をX型にして防ぎ、両足で踏ん張りを利かせる。マットに足がめり込み、衝撃波が発生するが、にこのガードは崩れない。
そして彼の人差し指を掴むと。

「にっこにっこに~~ッ!」

サンシャインの身体が宙に浮き、轟音と共にマットに叩きつけられたのだ。
これにはサンシャインも目を丸くし。

「馬鹿な。このチビが俺を投げるなどと」

モニターで試合を観戦していたジャドウはその光景に思わず身を乗り出す。
その額には冷たい汗が流れていた。

「サンシャインの体重は1000㎏もあるのだぞ。あの女、化け物か!?」


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