二次創作小説(新・総合)
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- 【合作】逃走中~ザ・ラスト~【完結!】
- 日時: 2019/09/06 13:58
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
モンブラン博士の逃走中、最終作!
私、こなくんさん、ヘキサさん、ネクスタさん、名無しさんによる5人の合作となります!
これまでの逃走中で逃走成功した者や無念の涙を飲んだ者、そしてスター流のメンバーが大集合する最後の作品!
果たしてラストに逃走成功を果たすのは誰になるのでしょうか!
逃走者一覧
小泉花陽
矢澤にこ
南ことり
ねこ娘
グレイ
ジェネラルシャドウ
天ノ川きらら
火野レイ
相田マナ
黄金バット
木下秀吉
ミスタークエスチョン
小泉さん
ロディ
川村猫衛門
不動仁王
星野天使
美琴
カイザー=ブレッド
>>1
逃走者リスト
>>21>>22
- Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.41 )
- 日時: 2019/08/29 13:25
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
遠くの方で大爆発の轟音が鳴り響いた。
ゆうきとことりはあまりに突然のことだったので驚き互いに抱きしめ合う。
そしてお互いの無事を確認しほっと息を吐き出した。
ことり「ゆうき君。今の爆発、何だったんだろう」
ゆうき「俺にもわからない。けど爆発が起きたのは確かだ。ひょっとすると、ハンターと逃走者が闘ったのかもしれないな」
ことり「怖いよぅ」
ゆうき「俺も怖いよ。爆発が起きるくらいだから激しい闘いなのは間違いない。まだ戦いが続いていてまた爆発が起きたら巻き込まれる危険性もあるから、俺達は移動しておいた方がいいかもしれない」
ことり「そうだね」
両者は互いに手を取り合い、ハンターに見つからないように注意しながら駆け出す。爆発音が聞こえた場所からだいぶ走った彼らは疲労もあってか、荒く息を吐き、膝に手をついて呼吸を整えていた。
ゆうき「ここまでくればもう安全だろう。ことりちゃん、大丈夫?」
ことり「ゆうき君と一緒だもん。平気よ」
その言葉にゆうきは顔を赤らめる。と、背後に人の気配を察知。
ハンターか。そう思い素早く振り返ると、彼らの背後にはカイザーが立っていた。
不動よりも一回りも大きな巨体を白のコックコートで包み、金髪を束ねた姿は威厳がありとても頼りがいがある。
ゆうき「カイザーか。背後に立って驚かさないでくれよ」
カイザー「すまない」
ゆうき「俺達のところに来たってことは何か伝えたいことでもあるのか?」
カイザー「……」
ゆうきの問いにカイザーは口を閉ざしてしまった。何か伝えられない事情でもあるのだろうか。ゆうきが考えていると、隣のことりはカイザーが右手に持っているものに気付いた。
ことり「それって……ロディさんの帽子?」
ことりが訊ねるとカイザーは小さく頷き、優しい手つきでテンガロンハットをゆうきの頭に被せ、沈黙を破った。
カイザー「ロディからの遺言だ。友情の証としてコレを渡して欲しいと」
ゆうき「遺言って――」
カイザー「彼は私にテンガロンハットを託し、先ほどの爆発で命を落とした」
ゆうき&ことり「!?」
ゆうきとことりはカイザーの顔を見た。
ロディが息絶えた?
意味がわからない。悪い冗談なのだろうか。仮にも逃走中で絶命することなど、これまで一度も起きたことがない。しかしカイザーは2人に真剣な眼差しで次の言葉を発した。
カイザー「君達は認めたくないだろうが、残念ながら事実だ」
ゆうき「そんな……どうして……」
ゆうきは力なく声を発した。カイザーは嘘を突くような男ではない。しかし、目の前で言われた言葉を信じたくはなかった。ロディは先のスター流主催の逃走中で一騎打ちを繰り広げたことがある。最初はやたらテンションが高くて無茶苦茶な男だとゆうきは思っていたが、闘いを通じて彼は直情的ながらも他者を認めることのできる良い人物であるという印象に変わっていたのだ。その彼が、何故命を落とさなければならなかったのか。そして、どうしてスター流の仲間ではなく自分に愛用の帽子を託したのか。それがわからなかった。
ことり「カイザーさん。話してくれませんか」
ゆうきの代わりに言ったのはことりだ。彼女も知りたかったのだ、先ほどの爆発の前に何があったのかを。カイザーは軽く息を吸って、話し始めた。
遡ること10分前、行動を共にしていたロディとカイザーは一人のハンターと遭遇した。それは本大会で特別ハンターとして参戦した目黒怨だった。
目黒はスコープで2人を見つめた後、落ち着いた口調で告げた。
目黒「お前達から先に始末することになろうとはな。だが、手間が省けて良い」
ロディ「テメェの目的はなんだ!?」
目黒「逃走者の命を奪うことに決まっているだろう。俺は宇宙最強のヒットマン。依頼を受ければ例え誰であろうと確実に命を奪う。それが作者枠の奴らだったとしても」
カイザー「まさか、ジャドウが依頼したのか?」
目黒「他に誰がいるというのだ。奴は約束してくれた。依頼を達成したら莫大な報酬を払うと。だが、その前に前払いでかなりの額を貰ったのでね。そうなった以上、依頼を遂行せねばヒットマンの沽券に関わる」
カイザー「対象者は誰だ? 星野は違うようだが」
目黒「ハンターに確保された奴らの事は今回はどうだっていい。俺はまだ残っている奴らに用があるんだ」
腰から銃を引き抜こうとする目黒にカイザーとロディは臨戦態勢に入る。
しかし共に悪魔を討とうと考えていたカイザーにロディは呟いた。
ロディ「隊長は逃げてくれや。ここは俺が時間を稼いでやるからよ」
カイザー「ロディ。奴の実力は君もよくわかっているはずだ。1人では危険だ」
ロディ「そんなことはわかってらあ。でもよ、万が一2人で挑んで負けちまったら、一体誰が他の逃走者を守るんだ。クエスチョンの爺さんも星野も確保されちまった。きっとこの先、どんどん強い者が減っていく。個性もバラバラ、強調性ゼロ……そんな一筋縄じゃいかない連中を纏められるのは隊長だけだと俺は思っている」
そしてロディはテンガロンハットを取ると、さっとカイザーに手渡し。
ロディ「サイズが合うかはわからねぇが、俺の帽子、ゆうきに渡してやってくれや」
カイザー「ゆうきに?」
ロディ「俺ァ、思ったんだ。この帽子を託しても惜しくないほどにあいつの心にゃ熱い愛が流れているってなァ!」
目黒「何をペラペラと……」
隙を突き目黒が発砲するが、ロディは身体でそのエネルギー弾を受ける。
受けた肩から血を流すが彼はニッと笑い。
ロディ「悪魔野郎。俺が最も尊敬する男に不意打ちかますとは、気に入らねぇな」
目黒「隙を見せたお前達が悪い」
ロディ「なるほどな。テメェの返事を聞いたらますますここで食い止めなくちゃならねぇようだ!」
ロディは放たれる銃弾を跳躍して回避し、目黒に己の弾丸を撃つ。
背中を向けつつ、ロディは言った。
ロディ「何をボーッとしてやがるんだ、隊長。アンタらしくもねぇ!
早くゆうきと合流しやがれってんだ!」
カイザー「ロディ……」
カイザーは踵を返す。後方で行われている激しい銃撃戦。自分が弾に当たらないのはきっと、ロディが自らを盾にしているからだと思った。カイザーは前に足を進め、一歩踏み出す。そしてロディに隊長としての最後の言葉をかけた。
カイザー「私は君という部下に恵まれて本当に良かったと思っている!」
ロディ「ありがてぇ。俺もアンタの元で働けて最高だったぜ!」
それが2人の交わした最後の言葉となった。
全速力で駆けたカイザーは、爆発音を耳にした。
ロディが己を犠牲にして敵と相打ちをしたことを知らせる音だった。
これまでの経緯を話し、カイザーは腰を屈めて2人に語り掛けた。
カイザー「これから私は逃走者達を集め、ジャドウの野望を挫くべく行動を開始する。君達さえ良ければ、協力して貰えないだろうか」
ゆうき「当たり前だぜ! ロディの犠牲は絶対に無駄にしたくない!」
ことり「ことりも怖いけど、ここで立ち止まっていたくない!」
カイザー「ありがとう。それではもっと多くの仲間を集めに行くとしよう」
駆け出すカイザー。後を追うゆうきとことり。
ジャドウの野望を潰す小さな歩みが生まれようとしていた。
- Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.42 )
- 日時: 2019/08/29 17:02
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
爆発が起きたエリアでは白煙が晴れると大きなクレーターが生成されていた。
ロディが自らを犠牲にして起こした爆発によりできたものだ。その穴の中心に1人の男がいた。血のように赤く染まったソフト帽にスーツ、両目の隈にスコープが特徴の殺し屋である目黒怨だ。彼は大爆発を至近距離で受けたというのに全くの無傷だった。軽く服の埃を払うと、背中の悪魔の翼を展開させ、穴から浮遊し、上空に立ち止まると怨みの宿った瞳で街を見下ろす。
目黒「ああ、怨めしい。この程度の爆発で俺を倒せると思っていたのだとしたら、随分とスター流に見下されたものだ。今こそ積年のスター流への怨みを放出させる時だ……」
彼のスコープが新たなる標的に捉えたのは黒髪ポニーテールの和装美少年だ。
目黒「川村か。相手にとっては不足だが、まあ軽く捻ってやるとするか」
目黒は川村の前に降り立ち、不敵に笑った。
川村「お主は目黒怨! ロディ殿と相打ちになったはずでは!?」
目黒「悪魔の俺がそう簡単に倒されると考えるとは実に怨めしい」
川村「それではロディ殿は――」
目黒「1人寂しく自爆し、俺にひとつの傷も与えることができなかった雑魚よ。あの男はな」
川村「お主の物言い、拙者は決して許すことはできぬでござる!」
目黒「だったらどうするというのだ?」
川村「決まっているでござろう。お主を斬る!」
川村は眉間に皺を寄せ、鋭く相手を睨むと腰の斬心刀の柄に手を当てる。
そして神速で刀を引き抜くと、容赦なく目黒に斬りかかっていった。
川村「斬心刀・華麗米斬り!」
しかし、である。川村の刀が目黒に触れようとした刹那、目黒は右腕でガッチリと斬心刀の剣先を受け止めてしまったのだ。川村の剣技は目にも止まらぬスピードで行われるため、並の相手では防ぐどころか軌道を見ることさえできない。
ねこ娘には事前に技の軌道を知られていたので破られたが、目黒にこの技をかけるのは初めてである。にもかかわらず彼はそれを受け止めて見せた。川村は刀を引き抜こうと歯をギリギリと食いしばり、両腕に力を込める。額からは汗が噴き出すが、刀は目黒の掌に吸い付いているかのように離れない。
川村「ぐっ……」
目黒「無駄なことは止めておけ。お前では俺の力には及ばぬ」
目黒は力を込めると、何と斬心刀をポキリと片腕の力だけでヘシ折ってしまったではないか。尻餅をついて倒れた川村は、折られた刃を見て目を大きく見開く。
川村「まさか。拙者の斬心刀が!?」
目黒「お前の自慢の剣は何でも一刀両断にするそうだが、俺の身体を斬ることはできなかったな」
乱暴に川村を蹴り飛ばし、壁に叩きつける。壁には川村の形をした穴が開いていた。目黒は漆黒の爪を出して太陽に照らして輝かせると、妥協なく侍少年の胸を一突き。腕は胸はおろか背中まで貫通し大量の血が地面に滴り落ちる。
川村「かはぁ!」
川村は白目を剥き小さな口から血を吐き出す。それを浴び、目黒の衣服は更に赤く染め上げられる。更に傷口を抉りつつ、目黒は冷酷に告げた。
目黒「万能の刀に頼り過ぎ己の研鑽を怠った。それが貴様の敗因だ」
体から腕を引き抜くと川村は轟沈し、その身体は白の粒子となって消滅した。
目黒「脆過ぎるのは怨めしくあるが、邪魔なスター流が1人減ったことには変わりはない。これで俺の依頼も遂行しやすくなるというものだ」
目黒は再び歩き出す。依頼された獲物を狩る為に。
- Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.43 )
- 日時: 2019/08/29 21:18
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
ぐううぅ~。
お腹を抑えながら、フラつく足取りで小泉は歩いていた。ジャドウにより逃走中の制限時間が消えてから、小泉は空腹を我慢してハンターに見つからないように歩いていた。しかし歩けば歩くほど腹は減り、腹の虫の鳴く音は大きくなってしまう。
「ラーメン……ラーメンが食べたいです」
フラフラになりながら今にも消えそうな声で呟いた時、前方に1人の女性を発見した。黒髪のストレートロングに白の忍者装束。紛れもない美琴だった。
美琴は振り返ると倒れそうになっている小泉に駆け寄り、その肩を貸す。
「どうしたのですか。しっかりしてください」
「空腹でラーメンが食べたいのですが、この辺りにラーメン屋さんはなさそうですね」
「ラーメン屋さんですか……」
ぐったりとしている小泉に美琴は同情を覚えた。彼女はこの世の何よりもラーメンが好きである。その彼女がラーメンを食べられないのはどれだけの苦痛であろうか。美琴は思った。
小泉さんにラーメンを食べさせてあげたいものです。しかし、このエリアにはラーメン店はおろかコンビニさえもありません。一体、どうすればいいでしょうか。
思案していると、彼女の脳裏にある考えが浮かんできた。そして、自らの腰に携帯している巾着の中に手を入れると、中から何かを取り出す。それはインスタント麺を砕いたものだった。
「非常食として持ち歩いているものですが、これでもよろしければ食べてください」
「遠慮なく頂きます」
小泉は美琴から砕いたインスタント麺を受け取ると、口の中に放り込む。すぐさま彼女の無表情の顔が恍惚としたものへと変化を遂げた。例え形や食べ応えが違っていたとしても美琴が渡したものがラーメンであることは間違いなかった。
空腹の限界の末に差し出された救いの手に小泉は涙を流し、喜んだ。
そして涙をふくと真顔で告げた。
「この恩は必ず返します」
「いえ、恩返しなんて。気にしないでください。わたしは当たり前のことをしただけですから……」
「あなたは恩人です」
そんなやりとりをしていると。
ピピッ!
ハンター30「……!」タッ
ハンター29「……!」タッ
ハンター2名に見つかってしまう。慌てて逃げる2人だが途中で小泉は立ち止まり。
「小泉さん!?」
「私のことは気にせず、先に行ってください」
「でも放っておくなんて」
「ここは私に任せてください」
小泉の覚悟を決めた声に美琴は何も言わず、その場を去っていく。
徐々に小泉に詰め寄るハンター。しかし彼女は確保される寸前だというのにポーカーフェイスを崩さない。そしていきなりハンター30の首元に蹴りを打ちこんだ。ぐらりと体勢が傾くハンターに、追撃とばかりに足を使用したラリアートで横転させる。
ハンター30 機能停止
ハンター29「……!」
相方のまさかの撃破に動きが硬直するハンター29の隙を突くと、踵落としで倒すと倒れたハンターを反転させてその背に跨り、顎に両手をかけ、一気に背骨を弓なりに曲げていく。これは中国出身の超人ラーメンマンが得意とする技である。
「私は人類よりも麺類派です」
淡々と告げて容赦なくハンター29の身体をぐにゃりと曲げると、手足を掴んでコンクリの床に打ち付け、ラーメンの生地に変化させてしまう。そしてそれをどこから取り出したのかと思われる包丁で細かく切ると、スープの入ったドンブリの中に入れ、ズルズルと食べ始めたではないか。
ズルズルズルズル……ズズズズズズズッ
小泉が既に原型を留めていないハンターを啜る音だけが辺りに響く。
その光景をモニター越しに眺めていたジャドウは仰天し思わず椅子から身を乗り出す。
「以前から未知の強豪だと警戒していたが、まさかラーメンマンの奥義を再現できるとは思わなかった……」
小泉の並外れた胃袋によりハンター29で作られた麺は全て食べ尽くされ、その場に残ったのはこれほどの惨劇を起こしてもケロリとしている小泉だけだった。
「ご馳走様でした」
平然とした様子で歩き出す小泉にジャドウは只ならぬものを感じ、ハンター達に命じた。
「至急あの小娘を確保せよ。このまま野放しにしていては大変な脅威となる!」
ゲームマスターの命を受けたハンター達は行動を開始し、すぐさま小泉を追跡。
そして。
ハンター28「……」
ハンター27「……」
ハンター26「……」
ハンター25「……」
ハンター24「……」
複数のハンターが小泉の周りを囲む。すると彼女は淡い金色の髪を赤いシュシュで結ってポニーテールにするとコキコキと腕を鳴らし、全身から黄金のオーラを発動した。
「どこからでもどうぞ」
数分後。
「ハァハァハァ……」
息を切らせ、大の字に倒れ込む小泉の姿があった。
ハンター達はいずれも全身から火花を散らし、機能停止に陥っている。
どうにか挑んできた全てのハンターの撃破に成功したものの、全ての体力を使い切った小泉の身体は限界を迎えていた。
「どうやら、もうお箸を握る力も残されていないみたいですね。美琴さん、あなたから受けた恩を少しは返すことはできたでしょうか……」
それだけ言うと彼女は目を閉じ、すやすやと眠りについた。
小泉さん 脱落
グレイ ジェネラルシャドウ 火野レイ 南ことり 矢澤にこ ねこ娘 天ノ川きらら 不動仁王 美琴 カイザー=ブレッド ゆうき 桜木霊歌 ヤード
- Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.44 )
- 日時: 2019/08/30 16:00
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
「ファイアー・ソウル!」
印を組んだ指先から放たれる火炎放射は瞬く間にハンター達を燃やし尽くす。
ハンター23 機能停止
ハンター22 機能停止
ハンター21 機能停止
セーラーマーズに変身した火野レイは強く、彼女の技で3人のハンターの動きが止まった。それを見たマーズは高らかに笑い。
「この私にかかればハンターなんて楽勝よ」
黒髪を靡かせ、次なるハンターを探すべく活動を再開する。と、上空から尋常ではない妖気を察知し、後方に飛び退いた。すると空から目黒が腕組をしながら降り立ち、隈のできた冷たい瞳でマーズを見据える。
「セーラーマーズ。お前の快進撃もここまでだ」
「言ってくれるじゃない。でも私を甘くみないことね」
「ならば試してみるがいい。俺が口先だけの男であるかどうかをな」
「望むところよ!」
マーズが急接近してハイキックを見舞うと、目黒もそれに合わせてキックを炸裂。マーズの長い脚と目黒の鍛え上げられた足が激突する。
ビリビリと痺れる感覚にマーズは顔を苦痛に歪ませるが攻撃の手は緩めない。すぐさま札を取り出すと九字を唱え、目黒の腹に貼り付ける。
「悪霊、退散!」
途端に目黒の身体はキックを打った体勢からピクリとも動かなくなる。
マーズの悪霊退散を受けたものは動きを封じられるのだ。
火星を守護に持つ美少女戦士は跳躍すると、宙で印を組み、指先から1万度を超える火炎放射を放った。
「ファイアー・ソウル!」
上から下に向かって放たれた火炎放射を全身に浴び、目黒は絶叫。
凄まじい炎の中でマーズは悪魔の身体が黒焦げとなり塵と化すのを目撃した。
「やったわね」
技の連発に少し疲労したのだろうか、マーズは額に玉の汗を浮かべていた。軽く息を乱しながらも余裕の態度を崩さないのは彼女の強がりの現れである。
「やっぱり私の手にかかればあなたのような悪魔なんて一発で――」
言葉の途中でマーズは顔を青ざめた。何と、ファイアーソウルを食らい完全に消滅したと思われた目黒が煙の中から現れたからだ。
「そんな! ファイアー・ソウルが効かないなんて!?」
「セーラーマーズよ。悲観することはない。
今の技なら昔の俺なら効果抜群だった」
「どういう意味よ」
「俺は地獄で修業を積み、怨みを食い続け、100倍にパワーアップして地上に戻ってきたということだ。今の俺にとってはお前の炎など火の粉も同然」
「言ってくれるじゃない。だったらこの技はどうかしら?」
マーズの周囲に8つの曼荼羅が浮かび上がり、それらが炎の輪となって一気に目黒に襲い掛かる。
「バーニング・マンダラーッ!」
8つの円は炎の刃と化し、目黒の身体を焦がし切り刻んでいく。
目黒の首や手足が切り落とされ地面に落ちる。悪魔とはいえ、その凄惨な光景に思わずマーズが目を逸らした時、バラバラとなった目黒の身体が集結、融合し、再び元の姿へと復活してしまったではないか。
「再生した!?」
「その通り。如何なる技を食らおうとも俺は再生できる。つまり、お前に勝ち目はない」
目黒は翼を展開し、マーズが放つ火炎放射を躱しつつ距離を詰め、彼女の腹に愛銃を突きつけ、引き金を引いた。紫のエネルギー弾が0距離で撃たれ、マーズは大きく吹き飛ばされる。地面を滑り、片膝を突く。痛めた腹を抑えどうにか立ち上がるが、その息は乱れている。彼女の疲労困憊した様子に目黒は顎を手で触り。
「お前は少しは骨があると踏んでいたのだが、どうやら俺の見込み違いだったようだな。実に怨めしいことだ」
真っすぐに銃口を突きつける。狙いはマーズの額だ。
引き金を引けばその瞬間に自分の命は絶たれる。ヒットマンとして一切の妥協のない彼の冷徹な瞳と銃の前にマーズは最期を覚悟し、ぎゅっと強く目を瞑った。
「あばよ。セーラーマーズ」
パキューン!
引き金を引き、怨みの弾が放たれる音が辺りに響く。しかし、それはマーズの額を貫くことはなかった。何故なら、その寸前にジェネラルシャドウが割り込み、シャドウ剣で弾丸を弾き返したからだ。
地面に座り込むマーズを一瞥し、シャドウはカプセルの奥から目黒を睨むと含み笑いをして低音で告げた。
「目黒怨よ。女と闘うとはお前は騎士道精神の無い奴だな」
「俺は生憎そんなものに縁はない。邪魔者は消し、頼まれた依頼は達成する。それが俺の行動原理だ」
「俺は女とは闘わぬ主義でな。不本意であるが、ここはマーズの肩を持たねばなるまい」
口角を上げると、マントを風に遊ばせながらシャドウは目黒と対峙する。
「勝てると思うか?」
「無論だ。俺とお前はある意味で同族。マーズの攻撃は通じぬとも、俺の攻撃を食らって平然としていられるか、その保証はないでしょうな」
- Re: 【合作】逃走中~ザ・ラスト~ ( No.45 )
- 日時: 2019/08/30 19:14
- 名前: モンブラン博士 (ID: EUHPG/g9)
「フフフフフフフ……」
シャドウは不敵な笑みを浮かべると、巨大なトランプを4枚出現させ、目黒を囲むように配置する。するとトランプの絵柄の中から1体ずつシャドウが現れた。
「シャドウが5人に増えるとはな」
「驚いたかね」
「だが、下手な奇術だ。何人に増えようと本物はこの中の1人なのだから、全員倒せばいいだけのことだ」
「俺の奇術を舐めるなよ」
渋い声で言うとシャドウは四方と上空からシャドウ剣による突きを見舞う。
目黒は避けることなく、彼の剣を全て受け切った。細剣は目黒の身体に深々と刺さっている。普通なら大ダメージのはずだが、悪魔の表情に変化は見られない。
悪魔が僅かに力を込めると全身から剣は引き抜かれ、その勢いでシャドウ達は吹き飛ばされる。地面に倒れた分身達は消滅し、元の1人のシャドウとなった。
靴音を鳴らし、目黒が近づくがシャドウは尻餅をついたまま、立ち上がらない。
「戦意を喪失したか。無理もない。得意の奇術が破られたのだからな」
銃口を向け、引き金を引く。
弾丸は容易にシャドウの透明カプセルを割り、中の額に命中。
するとシャドウの身体は無数のトランプに姿を変えた。
「コレは分身!?」
「俺の奇術を舐めるなと言ったであろう!」
「グアアアアアッ」
突如として背後に現れたシャドウが剣で背後から目黒の身体を貫く。
止めを刺したと思い込み緩み切っていた状態で食らった一撃はかなりの効果があり、目黒の背中や腹からは緑色の血が噴き出す。
「やはり騎士道精神を持たぬ貴様の血は赤ではないようだな」
「おのれ、シャドウ!」
銃を持った手で裏拳を放つも、受け止められ、逆に拳を食らって顔面を歪まされてしまう。再度背後に回られ、剣を引き抜かれると、激痛のあまり目黒は両膝を突いた。それを見たシャドウは剣を鞘に納め、トランプを構える。
自らの優位な状況であるが警戒は解かないのがシャドウなのだ。
「普段冷静な奴ほど予想外の動きがあると対処できなくなるのは本当のようだ」
「流石の実力と言ったところか。だが、俺には再生能力がある」
瞬く間に腹と背の傷が塞がり服も再生する悪魔だったが、それを観察したシャドウが言った。
「まるでトカゲの尻尾のような奴だな。再生能力に頼るなど、己の弱さを隠しているようなもの。真の強者はそのような曲芸は使用しない」
「俺を強者ではないと語るか」
「そうだ。お前など俺から言わせれば下等の悪魔に過ぎぬ」
「過去、様々な相手と闘ってきたが俺をここまで愚弄した奴ははじめてだ」
「ならばどうする。怒りに任せた策のない力だけの無駄な攻撃をするか?」
「いや。俺はもっと別の方法を試す」
幾度めかの銃口をシャドウに向ける。するとシャドウは含み笑いをし。
「お前の怨みの攻撃など俺には通じぬ」
「ああ……だろうな」
「素直に認めるものだな。それは最期の足掻きか、あるいはヒットマンとしての誇りか」
「敢えて言うならば――両方だ」
目黒が引き金を引くと、放たれたのは網だった。
網はシャドウに覆いかぶさり、その動きを封じる。
トランプで斬ろうとするが、切断できない。
シャドウは怨みかエネルギー弾のどちらかが放たれると予想していただけに、捕獲用の網という斜め上の手に、虚を突かれてしまう恰好となった。
「コレでお前は確保となり、牢獄行きだ」
「おのれ……!」
次の瞬間、シャドウは牢獄に転送され空となった網だけが残った。
その網を掌からエネルギー波を放出して消滅させ、今度は負傷して動けないでいるマーズに歩み寄り。
「お前もシャドウと同じく牢獄送りになるがいい、そして仲良く逃走者達の最期を見届けるといい」
「しっかり見届けてあげるわよ、あんたの最期をね!」
マーズは目黒に舌を出して軽口を叩くと、牢獄へと転送された。
1人残された目黒は残っている逃走者リストを確認し、口角を上げた。
「そろそろ本腰を入れて依頼を片付けるとするか」
グレイ 南ことり 矢澤にこ ねこ娘 天ノ川きらら 不動仁王 美琴 カイザー=ブレッド ゆうき 桜木霊歌 ヤード
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