二次創作小説(新・総合)

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ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜
日時: 2024/02/13 00:57
名前: 紅茶 (ID: 3OoKbooX)

はじめまして紅茶です

本作品はゲームダンガンロンパのオリジナル小説です。

この小説の舞台は希望ヶ峰学園ならぬ勝ち組ヶ丘学園です。
本作に原作のキャラクターを登場させるつもりはありませんが、紅茶の都合の勝手で出てくる可能性がありますがお許しください。

ストーリーに関してはまだまだわかりにくり部分があります(特に学級裁判です)。修正したら良い場所などコメントしてくださると嬉しいです。

ストーリー中に登場する落ち武者というキャラクターは原作で言うモノクマです。本作にモノクマが出てくることはありません。

小説は不定期更新です、遅くなったりすることはあると思います。どうかご理解ください。


episode1 士導瑠香編

登場人物紹介 >>2
prologue 〜旅立ち〜 >>1 >>7
chapter1 アンラッキーリフレイン >>8-17
chapter2 超高校級のドM伝説に栄光あれ! >>18-30
chapter3 精神暗転 >>31-41
chapter4 落ち武者式ソナタ第36楽章〜敗北 >>42-50 >>53-56
chapter5 負け組に咲く悲しみの花 >>57-68
chapter6 絆の旋律と負の不協和音の調べ >>69-78

番外編
一話>>80 二話>>81 三話>>82 四話 >>83


episode0 士導静流編

prologue 「ようこそ勝ち組ヶ丘学園」>>85-87 >>91-92
登場人物紹介 >>88-90
chapter1 ほうき星のように闇に消えて >>93-96 >>98-105 >>107-108
chapter2 負け組より生まれた漆黒の怨念 >>109-116 >>117-125
chapter3 人類史上最もロマンなのは絶対的絶望ではなく絶対的爆発 >>126-134 >>135-139
chapter4 絶望の深淵 >>140-154
chapter5 死と恋のバラード >>155-172
chapter6 「アダムが耕しイヴが紡いだ時誰が負け組だったか」 >>173-185

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.181 )
日時: 2022/04/11 01:09
名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: O35iT4Hf)

食堂での情報共有会も終盤に差し掛かっていた。俺たちは用意した情報の大方を共有し合い一旦は議論が落ち着いた。カウントダウンが0になるまでまだ一日残されている。黒薔薇も明日には何らかのアクションを起こしてくるはずだ。目先の優先順位は内通者として暗躍する微山麗奈を明日何としても見つけ出さなければならない。
「明日はどうする?今日出た手がかりについてさらに煮詰めても良いし、同じ場所にはなるが校長室やらもう一回探索しても良いし皆の意見が聞きたい」
結局今日の話し合いでは新たな謎はいくらか出てきたが、解決した謎はほぼなかったと言える。明日同じことをしてもおそらく時間が無駄に過ぎていくだけの可能性の方が高い。それに皆が同じ場所にいると内通者も変な動きをすることができない。微山麗奈のしっぽを掴むためにも一か所に固定させておくよりもある程度自由に行動させた方が良さそうだ。
「俺は新しい手がかりを探しに行く方が良いと思う。ただ情報の共有も必要なのは間違いない。例えばだけど15時まで探索でそれからまた食堂に集まるとか」
「私も士導に賛成だな。朝から集まったところで意味がないだろうしな。足を動かそう」


鍵村が俺の意見に賛成してくれたおかげでそういう雰囲気になり、俺の案が採用された。
早めの夕食を済ませ各自自分の部屋に戻っていった。今日は謎が多かったため、まずは一人で情報を整理しようと部屋に辿り着くやいなや用意されていたホワイトボードに向かった時だった。
「どうした?そんなに慌てて」
俺の部屋にある唯一の椅子に深く腰を掛ける黒薔薇がそこにいた。唐突の対面に俺の鼓動が早くなる。
数日前までならこんなに焦ることもなかっただろう。黒幕だと判明してからの黒薔薇はやはり恐怖に満ちあふれていた。
「俺の部屋に何の用だ?」
「別に大した用はない。ちょっと世間話をしに来ただけ」
笑っているのか笑っていないのか言葉にできない表情で淡々と語る。
ちょっとした世間話なんかで黒薔薇が動くわけがない。何をするつもりだ。
不思議と勝手に体が黒薔薇の次の動きに備えて身構える。周りからするとこの状況で最善の手を打っているようにも見えるが、現実はただ恐怖に耐えられないだけだ。その証拠に口以外身体のどの部分も全く動かない。
「貴方の意見を聞きたいのだけど、このコロシアイは何故行われていると思う?」
「えっ…?」
それが分からないから俺たちはずっと途方のない迷路をずっと彷徨っているんだ、と黒薔薇に対して怒りがこみあげてきた。
「俺たちを殺すためか?」
とりあえず黒薔薇の様子を見るために言ってみた。この意見は今日の話合いでは有り得ないという結論になったが、せっかくの機会だ。間違いは本当に間違いだったと確定させておきたい。ただ返ってきたのは思っていたものとは違っていた。
「まぁ過程としては半分正解かな」
「半分正解?俺たちを殺すことが目的ならば、お前ならもっと手っ取り早くできたんじゃないのか?」
「だから、それは過程なの。過程であって目的ではない。結果的には全員殺すつもりだけど、目的はそれでない。貴方が言った通り殺そうと思えば全員瞬殺。今までに散っていた人たちのように簡単に殺すことができるわ。だけど、どうしてそれをしないのか?例えば、子供に足し算を教えるとするでしょ?理屈をだけを文字で語るのと、理屈を黒板に書いて教えるのとどちらが鮮明に記憶に残ると思う?」
黒薔薇の質問の意味が分からず、俺はただその場に立ち尽くしていた。
「早く答えなさい!」
「こ、後者だ」
俺が答えると黒薔薇は拍手しながら、
「正解。そう人は最初に物事を覚える時、視覚で得た情報を強く記憶するの。だから教科書があり黒板がある。じゃあ、足し算を覚えたとしてそれを今後も使っていくためには?」
「問題で足し算を実践し、身につけていくとか?」
「正解。人は一回きりでは覚えられないから、実践する。反復して行うことでより強く記憶できる。だから、問題集がある。それは何事においても同じ。勉強も仕事もまずは視覚により状況や方法を目に焼き付けなければならない。最初から問題集を解いても何もできないようにね。じゃあ最後の質問。今貴方が直面している状況と今私が言ったことを照らし合わせてみて。このコロシアイは視覚なのか実践なのかどっちだと思う?」
どういうことだ。俺たちはずっとコロシアイをさせられてきた。実践の段階に入ったとも言えるが、視覚の段階を踏んでいない。じゃあ、答えは視覚…?
「視覚…なのか?」
黒薔薇は椅子から立ち上がり入り口の方へ向かっていった。黒薔薇の足音が響き渡る。
最後にこちらに振り返り今までにないくらいの笑顔を見せながらこう言った。
「正解。じゃあ本当に最後の質問。このコロシアイ学園生活を”誰”に視覚させていると思う?」

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.182 )
日時: 2022/04/14 01:00
名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: O35iT4Hf)

コロシアイ学園生活残り1日

ピンポンパンポーン
「………」


眠れなかった。昨夜の黒薔薇の言葉が頭から離れない。このコロシアイ学園生活を誰かに見せている。一体何のために?一体誰に?
そもそも何故黒薔薇は俺にそれを言ったんだ?あの後全員に言って回ったのか?黒薔薇の行動に謎しか生まれない。
俺は芋虫のようにベッドから降りると鏡に映る自分を見つめた。
「カウントダウンは今日が最終日。時間はない」
俺は手早く準備を済ませると食堂に向かった。

可笑しい。華狗也の体調はまだ良くならないのか?いや、仮にまだ体調が悪いままだとしてもカウントダウン最終日の今日は流石の奴でも顔を出すはずだ。それなのに顔も出さないなんて。
食堂に入ったが、俺は進路を華狗也の部屋に向けた。俺たち与えられた部屋は防音が完備されていたため、外部に音が漏れることは一切ないが、一応華狗也の部屋のドアに耳をあててみる。
案の定、音は全く聞こえない。
一応インターホンも押してみるが反応がない。
「非協力的な奴…」
まぁいつものように学級裁判までは知らないふりを貫き通して裁判途中から議論に参加するパターンだろう。それでいつも振り回される俺たちの身になって欲しいものだ。自分だけ全部知っているからって好き放題しやがって。
食堂に戻った俺は朝食を手短にとるとすぐに立ち上がり食堂を後にした。
さて、まず探索しなければならない場所は…。そう言えば黒薔薇は全ての部屋のロックを解除したと言っていた。それが本当ならまだ見ていない部屋があるはずだ。


ー黒薔薇の部屋ー
「本当に開いてる」
黒薔薇の部屋のドアノブに手をかけるとそれは何の躊躇いもなく回転した。いや、本来ならばそれで合っているのだがあまりにも不気味だった。
部屋の間取りは俺たちと一緒だ。ベッドが合って机と椅子が合ってトイレにシャワールーム。不思議なところは何もない。だが、何もないわけがない。黒薔薇は裏でコロシアイをコントロールしてたんだ。黒薔薇が部屋にいた間、何もせずに休んでいたとは思えない。
俺は引き出しやベッドの下などを隈なく探したが、証拠どころか塵一つすら見当たらないくらい何もなかった。
「士導君、傍から見るとその行為変態ですよ。女の子の部屋に勝手に入って引き出しやベッドの下も漁って。これを見たら女子たちは幻滅するでしょうね」
「落ち武者!!というかこいつもお前が操作しているんだろ。どこにいるんだ?入れる部屋は一通り入ったはず。だけど黒薔薇の拠点は見つけられなかった。他の皆からもそんな部屋を見たという声すら聞いていない。お前は普段どこの部屋にいたんだよ」
落ち武者からは反応がない。都合が悪い時だけ狸寝入りしやがって。だが、反応がないということは落ち武者からしても嫌なところを突かれたといったところだろうか。何かが妙に引っかかるが。
ともかく黒薔薇の部屋には何もないことが分かった。つまり、普段の黒薔薇は自分の部屋ではなく別の場所にいたというわけだ。まだ俺たちが見つけることができていない新しい場所に。
動かない落ち武者を放っておいて俺は黒薔薇の部屋を出た。
黒薔薇はおそらく別の場所で俺たちを監視している。だが、最初は俺たちと同じように学園生活を送っていた。ならばいざという時にすぐに自分の部屋に戻ることができる場所にいたはずだ。きっとそう遠くない。
隠し扉のようなものが近くにないか俺は黒薔薇の部屋の周辺の壁を押してみたがどこも普通の壁だ。
隠し扉が違うとなれば一番近い部屋は…。俺は周囲に目を向ける。
食堂だ。確かに食堂は夜時間になると立ち入り禁止になる。誰も入って来ないから姿を隠すにはもってこいの場所だ。
今日幾度目かの食堂に俺は入室したその時だった。
「士導君!!」
突如地近が声を荒げながら食堂にいる俺に向かってきた。
「どうした?そんなに慌てて」
息切れをなくすため一度立ち止まって深呼吸するとまた慌てて、
「今すぐ植物庭園に来て!!」
「植物庭園?」
「説明は後!いいから早く清水君が!」
地近に引っ張られるように俺は足早に階段を駆け上がった。地近のこの慌てよう、華狗也が一体どうしたってんだ。
植物庭園の入り口が見えてくると既に入り口にいた鍵村と同じタイミングで植物庭園に着いた司翼、捕鷹と合流して俺たちはその中に駆け込んだ。


ピンポンパンポーン


「死体が発見されました」

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.183 )
日時: 2023/02/06 00:17
名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: VOI/GMTL)

「ようこそ清水華狗也君、よくぞ来てくれた」
扉を開けたその先に待っていたのは想像よりも遥かに普通の場所だった。
漫画ですらもあるかないか微妙な話だったからもっと意味不明な機械とか薬が置いてある部屋かと思った…。
周りをキョロキョロしながら部屋に入ってくる僕を見て奥にいる男は笑いながら声をかけてくる。
「どうした緊張しているのか?」
「これが緊張に見えますか?」
緊張という言葉は間違っている。理解不能、半信半疑、興味本位。どれも合っているようで合っていない。それほどこの話は意味が分からない。
「まぁ緊張ではないか。何せほとんど考える時間もなく扉を叩いたのだから。実際はどっちなんですか?覚悟は決まっているのか、それとも興味本位なのか」
「僕は…」
一瞬言葉につまる。
「僕は自分を変えたい。そのためにここに来た」
「ありがとう。本来であれば君の行動は誰からも称賛されることではあるんだが、この世界のためにその一歩を踏み出してくれたことに感謝する。だが、”現在”の君とは今ここでお別れをしなければならない。自分を捨てる覚悟ができたら次の扉を開けてくれ。私はそこで…」
僕は男が言い終える前に次の扉に向かって足を進めた。
「ほう、そんなにも自分であることが惜しくないとはな。逆に興味が出てきたよ。計画が上手くいけば今度は是非君のことを聞かせてくれ」
自分のことが大切ならばわざわざこんなとこに出向いたりしない。もう僕のことなんてどうでもいい。さぁ新しい世界を見せてくれ。
希望に満ち溢れる自分へ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「死体が発見されました」
植物庭園に足を踏み入れた途端それは俺の眼前に現れた。巨大な花の茎、そこに吊るされている。
「華狗也!!」
俺は一目散にそこに向かって走り出した。
植物の傍に着いた俺は改めて上を見上げた。緑の植物に所々赤色が目立つ。その発信源は、
胸をレイピアで突かれた挙句植物に磔になっている華狗也だ。
「華狗也!!」
俺は再度呼びかけてみる。もちろん返事はない。いつもだったら笑っていただろう華狗也の顔がどことなく悲しそうな顔に感じた。
「無駄だ。死体発見アナウンスはその名の通り生体では発令されない。つまり清水華狗也は死んだということだ。あっはっはは!残念だったな!」
黒薔薇の笑い声が静かな植物庭園に響き渡る。
「さぁ、そんなに暗い顔してないで。死人が出たらどうするの?そう、学級裁判でしょ?」
「ふっざけんな。お前が殺したんだろうが!!学級裁判なんてする必要なんかない。犯人はお前で決定だろうが!」
「お前は忘れてるんじゃないか?次の学級裁判では学園の謎を全て解き明かすって言ってたよな?清水君の死なんてどっちでもいいんだよ。どっちみち学級裁判は開かれてたんだしさ。あ、でもそういう意味では学級裁判を開くタイミングを与えてくれた清水君には感謝だね、あはは」
黒薔薇はもう一言付け加える。
「もちろん清水華狗也を殺した犯人も学級裁判で議論して投票してもらう。決めつけるのは勝手だが私の盤上にいるのを忘れるな。皆殺しになりたくなければ」
黒薔薇は俺たちに背を向け、手を振りながら植物庭園を後にした。
残された俺たちは数分間何も話さずただ磔にされている華狗也を見つめていた。
華狗也と接触する機会はあったはずだ。体調を崩してからずっとだ。今日の朝だってそう。俺がもっと華狗也の心配していればあいつはまだ生きていたかもしれないのに。
自分の無力さに腹が立つ。俺だけじゃないきっとみんなも同じ気持ちだろう。どこかでみんな華狗也を敬遠していたんだ。
「ねぇ、ずっとこのままじゃ清水君だって辛いんじゃないかな」
最初に口を開いたのは地近だった。
「学級裁判が開かれるなら清水君を殺した犯人を見つけないと」
「お前、俺たちの中に犯人がいるっているのか。犯人なんか黒薔薇で決まりだろ」
「私だってそう思う!だけど、黒薔薇さんが殺したならあの自信はなんなの?」
「俺たちの中に犯人はいない俺は信じてる。だから、俺たちがするべきことは黒薔薇が犯人だという証拠を探すことなんだ。いくら黒幕だからといって一切の証拠を残さないなんてきっと不可能だ。前回の学級裁判を思い出せ、黒幕だろうと手がかりはきっとある!」
「士導の言う通りだな。だが、手がかりは各々で探そう。これは疑っているからじゃない。信じているからだ」
鍵村の言う通りだ。華狗也の死因だけじゃない。他にも探さないといけないことが山ほどある。猶予はないだろう。そんな時間の中で一つでも多くの手がかりを見つけるには分散するのが最適解だ。
俺は拳を握りしめた。華狗也を殺した犯人、そしてこの学園の謎全て解き明かして見せる。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.184 )
日時: 2023/05/06 02:18
名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: 4Xxn38pL)

今にも笑い出しそうな華狗也の死体を前に改めて立つ。正直今でも理解が追いついていない。あの華狗也がそうあっさり殺されるとは思えないからだ。いくら相手が黒薔薇とは言え…。
華狗也の死で言えば疑問点は他にもある。体調不良だった華狗也が植物庭園にいることもよく分からない。あいつのことだから俺たちに嘘をついていた可能性もなくはないが、仮に元気だったとしても今更植物庭園に来る理由がない。
ただまぁ、華狗也の行動に関しては考えるだけ時間の無駄だな。どうせ俺たちに隠している何かを知っていただけだろうし。それならば死体を調査する方が情報の入手が確実だ。
まずは全体的に見ると目を引くのはやっぱり胸に突き刺さっているレイピアだな。他に凶器になりそうなものは辺りに見当たらないし、一旦はレイピアを凶器と仮定するのが無難だな。一つだけ気になっている点をあげるならレイピアが落ち武者から支給された殺人用具の中には確か無かったような…。それに過去訪れた部屋にレイピアが飾られていた部屋も無かったはずだ。凶器は一体どこから持ち出されたんだ。

『レイピア』
華狗也の胸に突き刺さっている。凶器と思われるが、落ち武者から支給された殺人用具には入っていない。

レイピアを凶器に選び、華狗也を刺したうえで、磔にまでする。俺たちに見つからずにそこまでできる人間なんて黒薔薇以外にいるのか?それとも司翼の言ったように超高校級の負け組が他にも潜んでいるのか?
華狗也に刺さっているレイピアにそっと手をかける。確かに金属製の重量感を感じる。犯人が用意したダミーではなさそうだ。
続けて華狗也の腕に触れてみる。殺害からある程度の時間は経っているのだろう。完全に冷え切っているわけではないが、温もりを感じることはできなかった。華狗也の死亡時刻は昨日の夜あたりだろうか。少なくとも朝食堂に来なかった時には既に殺されていたに違いない。
「士導ちょっと見てくれないか?」
「どうした?」
司翼の呼びかけに指さす箇所を目で追ってみる。
「レイピアじゃないか。何か変わったところあるか?」
「レイピアじゃない。清水の出血量だよ。犯人が清水を一突きで殺したんだとしたら流血しすぎじゃないか?それにあれを見ろ」
司翼は磔にされた華狗也から少し離れた場所を指さす。赤い水たまりが緑の中に意味深に浮かび上がっていた。
「あそこにも血がこぼれている。清水を刺した時にいくらかは周りに飛び散っただろうが、流石にこの距離飛散したとは思えない。清水はあの血の位置で一度刺された後、今の位置まで連れて来られてもう一度刺されたと考えるのが妥当だと思うんだが」
「なるほど、確かに刺した後抜きさえしなければここまで酷い出血になることもないか。だが、一度目の突きで心臓を刺しているということはそれ以上刺す必要もないんじゃないか。ここまで連れてくる意味が無さすぎるな」
意味は確かに無いが、心臓を二突きした意味は確かに気になるな。気になるが、死体周辺で気になることはそれくらいか。
念のためポケットにも手を入れてみるがもちろん中には何もない。基本的にはルールに従順だったにも関わらず学生証すら携帯していない。余程慌てて部屋を飛び出してきたということか。華狗也が慌てるなんてこと想像できないが。
植物庭園からは徐々に人数が減っていった。人に踏みつぶされていた草木は人数が少なくなるにつれより一層青々としていた。その中で唯一の遺産だけが深紅に佇んでいた。

植物庭園を後にした俺は華狗也の部屋を次の目的地に設定していた。華狗也が慌てて部屋を出ていったんだとしたら部屋の中は整理されていないはずだ。そうなると直前まで何をしていたのかが明らかになってくる。
思えばここ数日顔も合わせていなかった。死ぬ直前についてはおそらく黒薔薇以外は誰も知らない。天岸の処刑以降確かに様子は可笑しかったけど、それでも人の前では普通を装っていたようにも感じた。俺たちは清水華狗也という人間のことをおそらくほとんど理解できていない。俺たちの中で唯一記憶を保持しているだけじゃなく、裏方の天岸死恋の存在にも最初から気づいていた。
俺は「清水」と書かれたネームプレートが掛けられた部屋の前まで訪れた。

教えてくれ。清水華狗也。お前は何者なんだ。

Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.185 )
日時: 2024/02/13 00:56
名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: 3OoKbooX)

俺は「清水」と書かれたネームプレートの部屋を力強く開いた。扉は反発するようなことはなく自然の摂理のまま無気力にキィという音を立てて俺を出迎えた。
これが清水華狗也の部屋か…と思うこともなくただただ普通の部屋だった。ベッドのシーツが乱れていたり、椅子が倒れたりしているがそれ以外は至って普通の部屋だ。不気味な液体や難しい言葉が書かれたホワイトボードとかそういったのを期待していたわけでないが、少し拍子抜けなのが正直な感想でもある。
俺は引き出しの取っ手に手をかけた。
「何だこれ…」
引き出しの中から現れたのは無数のメモだった。綺麗に纏められておらず、破れているもの、折れているもの、文字が読めないもの、本当に自分だけが読むことができれば大丈夫を体現したようなものばかりだ。
ただし、理解できれば無益ではないものであるのも確からしい。様々なメモに勝ち組や負け組といった文字が書かれている。その中の一つに「士導」と書かれたメモもあった。この散らかったメモの群の中では比較的新しいものに見える。
箇条書きの単語の羅列の中に一際目立つ文章が書かれている。それは現代文の問題のように下線が引かれてる。
「僕は士導静流」
そう書かれた文は他の単語とは違い明らかに力の籠った手で綴られていた。華狗也としても何かに気づいたということだろう。
何故俺の名前が華狗也のメモから出てくるんだ?それも華狗也自身が士導静流かのような書き方で。

『華狗也のメモ』
「僕は士導静流」と書かれたメモ。何故か下線が引かれている。

俺はメモを手に取り目を閉じて思考する。ただ、数秒も持たずして前が見えるようになった。
これについて今何かを考えても無駄だ。俺一人の力では回答なんて何時間考えたって出ない。華狗也がいれば一旦聞いてみたと思うが…。
それよりもこのメモの山を一つ一つに目を通している時間はあるだろうか。華狗也の遺産だ、できる限りこれに時間を割きたい。だが、自分の目で確認したい部屋もある。
悩んだ末俺はメモの山を近くにあった袋に詰め込んだ。

そもそもだ。華狗也はどうして部屋を出た?犯行時間はおそらく夜時間。不自然な血痕から推察するに誰かに呼び出された?筆頭は黒薔薇だが、華狗也も黒薔薇に呼び出されてノコノコ行くような奴ではないはずだ。だとすれば味方だと思い込んでいた人間に呼び出されたのか。俺たちの中の誰かが弱っている華狗也を呼び出した?
夜時間というリスクを冒してまで呼び出しに応じたのだとしたらそれこそ天岸のような隠れた人物でないと説明がつかない。だが、天岸はもう死んだ。学園内にいる人間も落ち武者の言うことを信じればこれ以上いない。
俺は部屋を出ようとした足を止め、再び袋の中を探り始めた。間違いなくヒントはこの中にある。そう確信した。いやそう願った。
そう言えば華狗也は目的がどうとか言っていた。誰かを導くためだとか。何日か前に聞いた時はまだ達成していないような素振りだった。華狗也はその目的を果たして死んだという説はないか。目的が分からないから断言はできないが、黒薔薇が今更華狗也を殺す理由が無さすぎる。
その時だった。俺の目にあるワードが映る。「士導源」この学園の校長の名だ。
士導源と俺の関係性もまだ明らかになっていない。しかし、メモにはかなりの殴り書きがされている。士導源の並びに父親だとか毒殺だとか関連性のある語群だとは到底思えない。それらの下に更なる言葉が書かれていた。
「負け組…」
一際大きく書かれたそれは士導源が負け組だと示唆するような書き方だ。少なくとも初見でこれを見た人は誰しもがそう思うだろう。
勝ち組ヶ丘学園の創設者が負け組なわけがない。が、毒殺という言葉がそれとリンクしていく。
華狗也のメモが本当だとするなら負け組の士導源を誰かが毒殺したんだ。
華狗也はどこから毒殺という言葉を導き出した?校長室の中にそれらしい手がかりはなかったかのように思える。それに手がかりがあったとしてもそれが正しいとは到底言えないはずだ。それなのにも関わらずメモ書きを残しているのは華狗也なりに根拠があったということだ。その根拠とは…。
「信じるしかないよな、華狗也の記憶を」

『士導源の死因』
華狗也のメモに書かれていた。士導源は毒殺されていた。


ー校長室ー
士導源は毒殺だった。それが正だったとして士導源の目的が判明したわけではない。何故士導源は俺たちを集めたのか、黒薔薇とは最初からグルだったのか。今だからこそ見えてくる手がかりもきっとあるはずだ。
「よう士導、お前もここに目星を付けたか」
「ああ、ここにある手がかりが天岸のプロフィールだけとは流石に思えなくて」
捕鷹が先客として校長室に訪れていた。
「手に持っているものは?」
捕鷹は俺の手の袋に視線を向ける。
「華狗也の部屋にあったメモだ。全部目を通す時間がなくてな」
「それでここに来たってことは校長に関わることがメモに書いてあったってことか」
流石に鋭いな。
「そういうこと。このコロシアイの意味を知りたくてな」
「なるほど。そういうことならこれを見せてやる」
そういって捕鷹は俺に一冊のファイルを差し出した。


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