僕は悠久の向こうに 作者/琉世 ◆GbvohmL8bU

【2】



 その日の昼休みだった。
「優介は部活、どこ入るの?」
 母がつくった弁当を貪っていると、智愛が鈴の音のような声で問う。
 弁当箱から顔を上げると、智愛は片手に収まるような小さな弁当箱を持って、僕の前に立っていた。
「座るよ」
と短く言い、智愛は僕の前の席に座る。
「あたしはね、陸上部とか良いかな。って思うんだけど」
 智愛は、運動もカナリ出来るので良いと思う。というか、智愛に出来ない物なんか無いので何でもいい。神の申し子ですか。いう感じで何をやらせても1番になっちゃうような子だ。
「うん。いんじゃない」
「そっか。優介はどうすんの?」
 智愛は、弁当箱の中の鮮やかな色のブロッコリーを少し嫌そうに食べながら言う。
「やっぱ、優介はオカルト系?」
 流石、幼馴染。よく分かっている。
「勿論。オカルト研究部と怪奇現象研究部で悩み中」
「やっぱり、優介は怪しい部活を選ぶんだね」
 智愛は、少し寂しそうに言った。そのせいで、少し気まずい雰囲気になったが、僕は少し間をあけ、
「うん、好きだからね」と答えた。
「知ってるよ。でもさ興味本位で、そういう事はしないほうが良いってあたしは思うんだよ」
 智愛は真剣な顔をして、強い口調で言う。
 僕は、幽霊を見たいだけだ。妖怪が大好きなだけなんだよ?それを、何で智愛が止めるの?智愛は何でも出来るから僕の気持ちは分からないんだね。
「智愛。僕は、幽霊が好きなんだ。興味本位でも何でもないよ。僕は日常の中に、少しだけ非日常がほしいんだよ」
 僕は嫌悪をこめて言った。
 僕は自分の趣味を否定されたように思って不快になった。智愛も『一般的に変』な僕に呆れてか、
「そんなに。そんなに幽霊に憧れる?」
「――え?」
「そんなに日常は嫌?」
 と、溜息交じりに呟いた。
 僕が返事に困って黙っていると、智愛は
「あたしはね、優介が幽霊幽霊って言うたびに、何処か遠くに行ってしまいそうで怖いんだよ」と言った。
 智愛の言い方が、僕にはとても儚く幽霊を危険なもののように思えたんだ。
 多分、僕の錯覚だ。幽霊は危険なんかじゃない。
「智愛?」
 智愛は勢いよく椅子から立ち上がり、教室を出た。

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 結局僕は、『オカルト研究部』に入部した。智愛にも止められたけど僕はこういうのが好きだから。健全には程遠いかも知れないけどこういうのが一番楽しいんだ。

 さっそく、今日の放課後から部活がある。