僕は悠久の向こうに 作者/琉世 ◆GbvohmL8bU

【4】



 5月になり、桜並木だった道は鮮やかな緑の木々となっていた。緑の木々が立ち並ぶ坂道を、僕はゆっくり歩く。いつもより早く家を出たせいか、人気はほとんどなかった。
 現在の時刻は、4時32分。
 こんな早い時間に此処に居るのには理由がある、怠け者の僕がこんなコトをするんだ。勿論、怪奇現象に関わっったことだ。
 僕が見ようと思っているモノは『早朝しか見れない』らしい。うちの高校の七不思議の一つ。『神路』と言うものだ。
 高校の裏庭に草木の生茂った、細い道があるのだが其れを『神路』と読んでいるものだ。因みにその道を進むと御地蔵様があるので、其処から『神路』という言葉が出来たのかもしれない。
 そして、その七不思議というのが『神路を裸足で歩いて、御地蔵様に血を一滴垂らすと、御地蔵様がどんな願いでも叶えてくれる』というものだ。
 最初は、躊躇いがあった。血なんて流したくは無い。
 でも、よく考えると僕にとっては『一滴の血』より『神路』の方がよっぽど大事なのだ。

 学校についた僕は、正門を飛び越えて裏庭へ向かった。とてもドキドキする。始めはは智愛も誘おうと思ったけど、絶対に止められるので一人でくることにした。
 裏庭の神路の前で、僕は靴と靴下を脱ぐ。
 唾を飲んで、足を一歩前に出す。石畳の冷たい感触が伝わってくる。ぴたっ、ぴた。と一歩ずつ歩く。冷たい風が頬を打つ。
 嗚呼。本当に何だか神秘的な気持ちだ。石畳の道を裸足で歩いているだけなのに。
 数分、不思議な道を歩いていると『御地蔵様』が見えた。