僕は悠久の向こうに 作者/琉世 ◆GbvohmL8bU

【3】
「優介。部活、どうだったの?」
帰りのバスで偶然一緒になった智愛と僕は隣通しに座った。
「ん。普通」
「あんなに怪しい、なんか禍々しいような部が普通な分けないよ。何したの?」
智愛は、心配そうに聞いてくる。
昼間の事があったから、少し気まずい。
「優介の夢を否定したけど・・・・・・。あたしはね、優介を莫迦しようってわけじゃなくてなんか怖かったの。昼休みはごめんね。だけど、あたしが言った事は本心で・・・・・・。って意味分かんないよね。でも、こんなコトで仲たがいなんて嫌だからさあたし。さっきのことを無かったことにはできないけど、嫌だからさこんなの」
智愛は一気にしゃべった。
僕も同じように思う。如何してこんな事になってしまったのか。僕と智愛の意見は正反対で妥協もなにも出来ない。けど両方本心だからこうなってしまうんだ。僕は、智愛にかける言葉を探していた。結局見つからなかったけど。
「僕は智愛と一緒にいたいけど、ただの日常に居ることはできないよ。幽霊を裏切ることになるから」
僕は日常を楽しいと思ってはいけないと思う。幽霊を裏切ることになる。妖精を裏切ることになる。怪奇現象を裏切ることになる。この世の、全ての『非日常』を裏切ることになるから。
「だから、僕は日常に少しだけ非日常がほしいんだよ。少しでいいんだ。刺激がほしいんだよ」
智愛は黙っていた。
僕は小さく呟いた。
「あぁ。幽霊が見たいなぁ」
「妖怪が見たいなぁ。怪奇現象も見たいなぁ」
「――幽霊が見たいなぁ」
バスの窓から指す薄桃色の光が僕を半分照らした。

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