コメディ・ライト小説(新)

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透明な愛を吐く【短編集】
日時: 2020/04/16 20:05
名前: あんず ◆zaJDvpDzf6 (ID: ybF6OwlW)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=4705

 
 この透明な指先で、君への透明な愛を綴ろう


***

こんにちは、またははじめまして。
あんずと申します。

明るい話から暗い話まで、何でもありの短編集です。続きやおちはあったりなかったりします。
更新速度は遅めですが、楽しんで頂ければ幸いです。

*お客様*

 *Garnet 様
 *一青色 様
 *いろはうた 様
 *友桃 様

2016年4月9日 執筆開始


*目次(予定含)*

▼透明な愛を吐く >>008

▼青い記憶に別れを >> 改稿中

▼君の消えた世界で >> 改稿中

▼悪役と手のひら >>006

▼春を待つ、 >>007

▼降りそそぐ、さようなら >>009

▼向日葵の揺れる→改稿

▼水飴空 >>015

▼星の底 >>016

▼憧憬 >>017

▼COMMUOVERE >>019

▼HIRAETH(未完) >>020

▼前略、親愛なる彼方あなたへ >>021

▼Litendrop(#7改稿) >>024

▼銀色のさかなの夜 >>027

***

*その他*

▼2017.11 旧コメライ板よりスレッドを移動しました。

▼2018.3.18 #1推敲版を再投稿しました。

▼2018.3.28 #3を一時削除中にしました。

▼2019.7.14 #13を修正しました。

▽2018. 夏の小説大会にて金賞を頂きました。
 
▽2019. 夏の小説大会にて銀賞を頂きました。
 

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Re: 透明な愛を吐く【短編集】 ( No.23 )
日時: 2020/04/17 22:06
名前: あんず (ID: XetqwM7o)

 
 > 友桃さん
 
 はじめまして、あんずと申します。友桃さんのお名前は以前より存じておりました。旧コメライ板から『EnjoyClub』を読ませて頂いていて、感無量です。
 
 地球の終わりを想像するのは昔から好きです。私個人、宇宙や星についてや世界古代史関連を趣味で学んでいるんですが、一生物にすぎない人間がここまで繁栄したことを思うと、逆に終末を思ってやみません。
 認知できる範囲でしか思考できないという意見、僭越ながらとても分かります。私もそう思っている節があります。 
 人間の認知などあくまで一惑星の一生物のものに過ぎないという認識は曖昧ながらあります笑 懐疑的な視点というものを持てるのって、とても大切だなあと思うこともあります。
 
 なんだか字数が多くなりかねないので、詳しくは雑談板の方でお話できたらと思います。
 
 今回は人が旅立つという形式をとりましたが、もちろん人という種が絶滅するのも終わりの一つだと思います。そういうあたりを考えるのって、楽しくて好きです。友桃さんが興味をもって頂けたならとても嬉しいです(*´▽`*) 今後も精進したいと思います。
 
 コメントありがとうございました!
 

Re: 透明な愛を吐く【短編集】 ( No.24 )
日時: 2020/04/16 19:10
名前: あんず (ID: V9.d7PSD)

#14 『Litendrop』
 
 
 透明に生きたい。清らかなままに息をして、何も知らずに瞼を閉じて、そうして涙を流したい。考えるのは空のことだけでいい。宇宙を透かす柔らかな青色を、体いっぱいに詰め込んで息を止める。そういう生き方を夢想する。どこかに転がっていたなら良かった。拾えば記憶が消えるような生き方が。
 
 きっと感情は余分には持たない。僕に色をつける全てを捨てて、透き通る人間でいたかった。たとえばそれを人は幽霊と呼ぶかもしれないし、それでも良かった。色がなくなるなら。だから愛もいらない。情欲に塗れていなくても、純粋に誰かを思うだけでも。それはあんまりに重たいから、記憶がひしゃげてしまう。僕の胸は薄い青色で埋め尽くしておこう。
 
 空は宇宙を透かすから、あれは透明なんだ。
 
 擦り切れた記憶に相槌を打つ。僕を満たす幸せな色は空の色、空は向こうが見えるから、つまりは透明。内緒話をするように耳を擽った声を覚えている。だから僕は溶けてしまう。身体をその色で満たせば、そこに星はいらない。向こう側に星が漂うはずだから。それは空で、夜空で、星だから。あなたならクリスタルと言うだろう。少しだけ洒落た言い回し。
 
 *
 
 目を閉じる。例えば夏の日の窓辺を想像する。たっぷりとした日の光と、眩しいほどの向日葵に憧れた日。息を吸う。記憶の中の、むわりとした張り付く暑さが僕を包んでいく。何遍も何遍も繰り返した、僕の想像の中に浮かぶ夏空。懐かしくはない。ずいぶんと遠くまで来たように思ったけれど、そんなことはなかった。そうだった。そんなことも忘れていた。
 
 太陽の下、青白く透き通るようなあなたの肌が、柔らかく照らされている。普段来ているものと同じ色なのに、まっさらなワンピースはふわふわとしてうつくしい。少し大きすぎる麦わら帽子が、あなたを優しく守っている。揺れる帽子が形作る、足元の大きくまあるい影。覚束ない足取りで、それでもこれ以上ないくらいに楽しそうなあなたが歩いてゆく。遠くへ遠くへ。向日葵畑の奥へ向かって。僕はそれを追いかけながら考える。鮮烈な青。
 
 
 たった一度だけ見た光景だ。もう二度と目にしないだろう夏の日。今でも思い出す、一回きりの蝉の声。あの蝉は死んでしまった。瞼を焼いた青をまだ覚えている。僕らは蝉、あなたはきっとそう言ったでしょう。
 
 *
 
 透明に生きたい。
 
 あの日と同じ色の入院着を握りしめる。ひらひらも、ふわふわも、まるでないこの服を愛おしく思う。白こそ僕らの夏の色だ。あの日の麦わら帽子の影と、鬱陶しい湿った風に揺らされた透明な白。鮮やかな原色が輝く中で、空気は確かに透けていた。吹く風はどこまでも澄んでいたし、肺は透明に満ちていた。知っている。
 
 感情は余分に持たない。僕に色を付けてしまう。白でいたい。透明な白のままで。絵の具をのせる前のキャンバス、そのクリーム色に近い透明。あなたも知っているだろう。それは筆先にのる水に似ていたし、二人で飲んだコーヒーのガムシロップにも似ていた。
 
 
 きみも、わたしも、透明なんだ。宇宙の一つ。空は透明で、わたしはそこに住んでいて、きみもおなじ。懐かしいほどにおなじ。星が産声をあげた、そのときからおなじ。
 
 
 遠い記憶へ頷いておく。微かな吐息。目まぐるしい色彩の洪水。透き通った窓の向こうに、きっと今年も向日葵が見えるだろう。そこには多分、あの日のようで少し違う、湿った夏の風が泳いでいるのだ。想像する。それは透明かもしれないし、そうでないかもしれない。もう透けることは二度とないのかもしれない。
 あなたは向日葵畑から戻ってこない。遠く遠く、奥へと進んだまま今年も見えない。けれどもそこに白が。僕がつめこんだ青色ではない、色が。
 
「……おなじ」
 
 
 透明な白が、ほら、また溶ける。
 
 
 ✱✱✱
 
 
 #7『向日葵の揺れる』改稿。題名は造語です。
 
 

Re: 透明な愛を吐く【短編集】 ( No.25 )
日時: 2019/10/22 21:15
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)


こんばんは。友桃です^^
コメライを開いたらちょうどこのスレが上がっていて、あんずさんの短編だ!と思って再び来てしまいました。
で、前に感想残した時と同様、作品と関係があることから無いことまで色んなことを考えてしまったので、たぶんまた何言ってるかわからない感想になると思いますが、ごめんなさい。

空は宇宙を透かすから、あれは透明なんだ。
という一文が、とても印象的でした。
理科の授業かなにかで空の色の原理を習ってしまったせいで、空が宇宙を透かしているという絵的な発想がなくなってしまっていたなということに気づいてちょっと残念な気持ちになったり、空が宇宙を透かしていると考えた瞬間に、なんていうんでしょう、今私たちがいる地球と宇宙との境界線が一気になくなって、地球の空気が宇宙の一部になるような不思議な感覚を味わいました。
すみません、意味わかんないこと書いてますが、ほんとに読みながらそういう想像をしました笑

あと白って難しい色ですよね。
作品の中に日の光が印象的に出てくると思うんですけど、色をテーマに「日の光」という言葉を見ると、最初にぱっと浮かぶのは「白」で、そのあと「日の光はいろんな色が混ざり合った結果白になってる」ってこれも理科か何かで教わったことが思い浮かぶんです。そうすると、白ってなんにも染まっていない透明な色のくせに、何色にでも簡単に染まるし、むしろ色んな色がまざりあってでもできてしまう色だっていうイメージが個人的にはあるので、透明な白でいたいと言う語り手に対して、存在がすごく不確かな、危ういイメージを持ちました。

まーたなんか変なことばっかり書いてしまった気がしますが、とても楽しませてもらいました。
長文すみませんでしたm(__)m
更新がんばってください。

Re: 透明な愛を吐く【短編集】 ( No.26 )
日時: 2020/04/16 19:32
名前: あんず (ID: V9.d7PSD)

 > 友桃さん

 まず、返信がとても遅れてしまい申し訳ないです。某SNSもそうですが、一段落付いたので改めて返信させて頂きます。

 拙作ですが、読み終えたあとに何か残るものがあったなら、とても嬉しいです。私はひたすらに読後が軽くなるように念じて書いていますが、考えを巡らせ何かを想起するものになっているなら、それはそれで(私としては)面白い話を書けたのかなと思います。

 空は透明だ、というのは以前からたまに使っていた言葉で、自分でも気に入っています笑 幼い頃に空が青くなるのがひたすらに謎で、散乱などの用語や原理も曖昧に覚えているので未だに不思議だなと思います。レイリー散乱などの用語の響きは好きなんですけど……笑
 むかし、地球に膜がない、上にあるのは空気の層で、明確な壁がないと知ったときに同じように思いました。この空は宇宙なんだな、というこれまた曖昧な認識でしたが、創作には役立ったように思います。

 私も光としての白と色としての白の別が好きです。全部の光を混ぜたら白、色としての白は白なのに、と考えると混乱しますが、その複雑さが妙に好きです笑 よく純白な羽、純白な心を無垢に繋げることがありますが、友桃さんのコメントで確かにそれは不安定な感覚にも繋がっていくのかな、と考えたりしました。

 こちらもとても楽ませて頂きました。素敵なコメントありがとうございました!
 

Re: 透明な愛を吐く【短編集】 ( No.27 )
日時: 2020/04/16 23:57
名前: あんず (ID: XetqwM7o)

#15 『銀色のさかなの夜』
 
 
 君を時間で表したら夜になるだろうね、と彼は言った。あんなに頑なに着ていたセーターもついに脱いで、そろそろ半袖にすらなりそうな季節のことだった。
 夜、と私は鸚鵡返しに尋ねる。そう、とこれまた簡潔な答えが返ってきて、私たちの会話は沈黙へ続いた。よる。見上げてみても、鈍く光る雲のせいでどこかぼんやりとした濃紺しかない。春というには緑が活き活きしすぎた季節だったから、朧月夜とも、春霞とも呼べなかった。ひたすらにおさまりの悪いけぶった初夏、生温い風が肌をぬるりと撫でていく、あの夜だ。
 
「季節は?」
「秋」
 
 即答だった。秋。てっきり夏か冬、ああいうパキっとした季節が来ると思っていた私は、思わず隣に目をやった。彼はおもむろに空から視線を外すと、しい、と内緒話をするように人差し指を口に添えた。秋だよ、秋だ。蠍から逃げるオリオンが空に現れる、そのほんの少し前の、夜。秋の夜。君によく似ているよ。
 
 そのときの私にとって、秋なんて曖昧で、よく覚えのない季節だったものだから、その会話も首を傾げて終えてしまった。夜、それも秋の、へえ、そんなものに似ているのか。それはその時の生温いけぶった空気と同じくらい、私にとって良くも悪くもない印象しか残さない言葉だった。だからその会話を思い出したのは、実はつい最近のことだ。
 
 
 その言葉を思い出したとき、私は一人で馬鹿みたいに泣いていた。仕事。友人。恋愛。そのどれもに疲れていたけれど、とどめはビールが美味しくなかったことだった。呆れるようなことだけれど、私にとっては世界一の重大事件だったのだ。仕事帰りに泣きながら飲んだビールが、別に美味しくもなんともない。今までは付き合いで飲むことも、一人で飲むこともあったのに、それが苦い炭酸飲料だと思えてしまった瞬間、何かが音を立てて崩れてしまった。
 うそつき。大学生になる前まで飲んでいたオレンジジュースのほうが、実は何倍も美味しいくせに。うそつき。こんなものが美味しいと思うくらい、わたしは成長していて、たくさん忘れていて、ああ、うそつき。
 
 泣きながら飲んでいたくせに、ビールの味にさらに泣いて、泣いて、お会計をしてすぐに店を飛び出した。消えてしまいたかった。たかがビール、されどビール、あんな苦い一杯のために!
 タクシーに乗った気がした。泣きながら運転手さんと話をしたような気もした。けれどはっきり記憶が残っているのは、昔の高校の近くの丘、我らが天体観測部でよく使っていたあの丘で、星を見ていたということ。
 
 そこで唐突に、そう、本当に唐突にあの懐かしい会話を思い出した。ここで話したのだ、確か。だから。
 見上げた夜空にはやっぱり星がたくさん詰まっていた。それでも、高校時代のあの頃よりも薄くなったようにも思う。このあたりもどんどん開発が進んでいた。街の灯は、あの頃よりも丘に近づいてきていた。星が遠くなる。星。ああそういえばこれは、秋の、夜空だ。
 
 あ、と声が出た。喉が震える。
 
 秋の空は透明だった。あの会話をした初夏の、ぼんやり淀んだ空なんかとは似ても似つかない青。濃紺が澄んでいる。あれは青だ。いや、あれは海だ。そうだ、海に、銀色の魚が飛んでいるんだ。
 
 秋の空に浮かぶ星の、豊かなこと。それに初めて気がついた。あの初夏の会話から、もう随分と経っていた。私は大人になって、それなりに頑張って、それなりに疲れていて、そうしてそれなりにくたびれた人間に育った。きっと彼もそのはず。彼もどこかで、それなりに生きているのだ。
 だから、私がいま秋の空を知ったことも、もう一生伝わることはないし、伝える術もない。ただ、私を秋の空にたとえてくれたことが、私の心に音を立てて突き刺さった。こんなにも。こんなにも。
 
 あかるい豊かな空を、私だとは到底思えないけれど、それでも私は一度、彼の中でこの空になっていたのだ。そう思えるだけでよかった。十分だった。ビールの味が苦かったことなんて、もう頭から消えていた。こんな夜に、酔っ払って丘の上で星を見ているなんて、もちろん疲れきった人間なのだけれど。それは変わらないのだけれど。
 
 
 
 帰りみち、友人に電話をかけた。明らかな酔っ払いからの電話にも付き合ってくれる友人は優しい。よし、大事にしよう、酔って大きくなった気持ちでそんなことを思う。
 
「あのねえ、わたし、次からはオレンジジュースを飲む。わたし、夜だから、秋の。銀色の魚の、海だから。だから、オレンジジュースを飲むよ」
 
 はいはい、と友人の声がした。それを鈍い意識の中で聞いていた。ちょうど自宅の玄関にたどり着いたところで、友人におやすみ、と告げて電話を切る。電気も付けずにふらつきながらベランダに出て、私はもう一度星を見た。
 
 それはもう、青くはない空だった。ここは駅にも近くて、それなりに賑わう通りのそばだったから、灯りは星を掻き消してしまう。それなのに。それでも。空は澄んでいた。夜は透明だった。秋の空は、銀色の魚が泳ぐ海だった。
 あれはね、わたし。むかし、高校生の頃、あれはわたしだった空。ふふ。頬が緩む。ありがとう、もう顔もうまく思い出せないきみ! 
 今度実家に戻ったら、卒業アルバムを見返すから、そのときは名前を見よう。それもきっと、いつか忘れるんだろうけれど。
 
 ベランダから戻り、そのままソファに突っ伏すと、呪文のように頭の中をぐるぐると言葉が巡った。わたしは銀色の海、わたしは透明な空、わたしは、秋、の、夜。
 
 次に飲みに行ったらオレンジジュースを飲むのだ。ビールも飲むけれど、それでも美味しいオレンジジュースを飲む。だって私は、夜だから。銀色の魚がぴょんぴょんと泳ぐ、あの青い海だから。それから、そうだよ、ほら。
 
 
 その日の夢のなか。銀色の魚と、私と、それからあの彼が、透明で青い海で泳いでいた。秋。澄んだ空気。それは私が彼のなかで、秋の夜だった日のこと。ビールがまだ、遠い魅力的な飲み物で、オレンジジュースに飽き飽きしていた、あの頃のこと……
 
 


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