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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*17*
彼は彼女の向かいにある椅子に腰をおろしてゆっくりと手を組みました。
「お前さんは自分のことをどうでもいい存在だと思っていないかの?」
すると彼女はハッとした後少しうつむいて、
「あ、あたしなんか居なくて良い存在ですから…」
「どうしてきみはそういう風に思うのかね。
わしにしてみれば、きみは大切なお客さんじゃがのう」
「……あたし、両親から虐待を受けていたんです。それで自分に自信が持てなくなって…」
小さな声で、ポツリポツリと自分の過去を話す真帆さん。
彼女の話を聞いたぼくは気が付いていたら、あふれでる涙が頬を伝っていました。
まさか、ぼくと似たような経験をしている人がここにもいたなんて…
彼女が体験した悲惨な状況を想像しただけで、心が締め付けれる感覚がしました。
彼女の話を一通り聞き終わったあと、彼は口を開きました。
「虐待というのは言ってみれば、一種の癖ようなものじゃ。
親から子へ伝染する厄介なものじゃ。
そもそもこれは、愛情表現を伝える術をもたないために起こるのじゃが…早く手を打った方がいいじゃろうな。
きみのご両親がまた同じ過ちを犯す前に。
速急に解決するにこしたことはないからの……」
彼はひげをなで少し考えるしぐさをした後、おもむろに携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけました。
「もしもし、わしじゃ。ヘンリーじゃ。もちろん生きておる。わしはまだまだ元気1000倍じゃよ。ところで用件じゃが、お前さんの自慢の弟子のあの子をここへ派遣してもらえんかの。報酬はお菓子で払うからの。それでは頼んだぞい」
相手の言葉も聞かず一方的に用件を告げた後、電話を切った彼は満面の笑みを浮かべ、
「もう大丈夫じゃ。この手のプロが来るのでな」
少し茫然としている真帆さんを尻目に彼は自信満々に告げましたが、果たして彼が頼んだプロとは一体誰のことで、何のプロなのでしょうか?