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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*19*
心配になったあたしが家に帰ってくると、待ち受けていたのは、予想だにしない光景だった。
パパとママからはあの冷たい光が消え、部屋全体が温かい雰囲気で満ち溢れて、ほのぼのとしている。
そんな穏やかで明るい部屋の中には椅子に腰かけ、ふにゃ〜とした顔の川村くんがいた。
あたしは何が何だかよくわからないため、とりあえず聞いてみる。
「あの、川村くん?」
「真帆殿、帰ってきてたのでござるか」
「うん。そうだけど、この光景…一体パパとママに何が起きたの?」
すると彼は鞘から日本刀を少し引き抜き、
「この刀、斬心刀は人を決して傷つけない代わりに、欲や闇に染まった心を断ち切ることができるのでござる」
そして彼は少しため息をついた。
「大変だったでござる。最初は諭すぐらいでなんとかなると思っていたでござるが、次第に母上殿と父上殿が怒りを露わにし、闇の心を露わにしたので斬ったのでござる」
そうだんだ…でも、パパとママが優しくなっていて「お帰り」なんていうなんて思ってもみなかったから驚いちゃった。
「何はともあれこれでお主は大丈夫でござる。
もし何かあったらそのときは、また拙者を呼べばよい」
彼は電話番号を書き記した紙をあたしに渡して去っていった。
あの日から虐待は受けていないし、ふたりがあたしを無条件で愛してくれるばかりじゃなくて、よく褒めてくれる。あたし自身が気づかなかった意外な長所を見つけて褒めてくれる。
パパは以前はあたしに暴力ばかり振るっていたけど、今はそんなこと全然なくて冗談もよく言う面白くて優しいパパになった。
ママも綺麗で優しくて家事がとっても上手なママになった。
これもすべて、ヘンリーのお菓子屋さんのみんなと川村くんのおかげ。
今は自分が大好き、そしてヘンリーのお菓子屋さんのお菓子も、大好き。
あたしはあのお店に行くたびに感謝の気持ちでいっぱい。
そしていつもこう言うんだ。
「あのときは、本当にありがとう!」