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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*43*
「……」
「義息子よ、俺はお前と戦えて嬉しいぞ」
「……」
彼は何も言わない。ただ黒い大きな瞳で彼を見つめるだけだ。
「俺はお前がいなくなってからというもの、世界中を探し回った。せっかくの奴隷…いや、義息子を失ってしまったからな」
この人、クロワッサンくんを奴隷のようにこき使っていただなんて、許せないよ。
「クロワッサン、お前は俺の奴隷であるべき存在であり、それ以外の何者でもないのだ!」
彼は剣を放り投げ、拳を放つ。
その刹那、曲が流れだした。
「…この曲は轟轟戦隊の曲だよ」
うどん好きの子が解説する。
その曲に乗ってクロワッサンくんが敵に猛攻を加える。
「あなたは全てをぼくから奪った。
それでもなお、これ以上ぼくから大切なものを奪おうというのか!最愛の人までも!」
…クロワッサンくんが、初めて、しゃべった…
少し高くて凛と響く声で、彼は続ける。
「ぼくはもう、あなたの言いなりにはならない。なぜならぼくは、この場所で、最愛の人を見つけたのだから!」
「ほざけ!男の娘は全部俺のもんだ!お前の恋愛などたかが知れている!そんな恋愛感情ごとブチ砕いてくれる!」
彼の拳はうなりを上げ、向かってくる。
と、そのとき曲のサビに差し掛かった。
《奇跡の子ども無限の夢を追いかけてみよう〜!》
「ぼくは愛する真帆さんのために、この戦い、負けるわけにはいかない!彼女の応援に声耐えるためにも、ぼくは勝つ!」
彼の拳を避け、連続のパンチを顔面に浴びせる。
続いて飛び上がり蹴りを数発浴びせ、
曲の最後で全身全霊をかけたアッパーをお見舞いした。
「この俺が……まさか負けるとは…!」
拳の威力に彼は盛大に吹き飛び、チェイダーさんはダウン。
そのまま立ち上がらず、クロワッサンくんの勝利が確定した。
そして彼は私の前に歩み寄り、口を開いた。
「真帆さん、ぼくはあなたのことが、大好きです」
真実だけを伝えた飾り気のない真っ直ぐな言葉。この言葉が本当に、本当に嬉しかった。
「あたしもあなたの事が好きです!もし、こんなあたしでよければ、付き合ってください!」
彼は最高の笑顔でコクリと頷いた。
「ありがとう、クロワッサンくん!」
あたしは思わず、彼に抱きつき、その唇にキスをした。
☆
「ほっほっほ、どうやら、わしらの作戦、うまくいったようじゃな」
清水くんの水晶玉を見て、満面の笑みを浮かべるおじいちゃん。
実はすべてはおじいちゃんが、ふたりの愛の強さを確かめあうために用意した作戦だったのだ。
「そうだね、おじいちゃん。ぼく、クロワッサンくんに恋人ができて本当に幸せ!」
ぼくは頷き、おじいちゃんと清水くんと一緒に恋人になったふたりを祝福しに、お店へ向かう。
「おめでとう、ふたりとも!」