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作者: モンブラン博士 (総ページ数: 198ページ)
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*65*
きょうは休日。学校もお店もお休みです。
本来ならば土日の営業というのは普通なんでしょうが、ぼくたち家族のお店はそんなことはしません。
いい天気ですし、散歩でもしに行きますか。
ぼくは両親に一応散歩に行くことを伝えて家を出ました。
そういえば、きょうは確かマーラーくんたちはカラオケに行っていたはず。
少し覗いておくのも悪くないかもしれません。
そんなことを考えながら、のんびり歩いていますと、赤い短髪に額に角が二本あり、血のように赤い着物を着ている女の妖怪がお酒屋さんを襲っていました。
「もっとお酒を出して〜。じゃないとこの店壊すわよ?」
「ひいいいっ、そ、それだけはお許しを!」
可哀想に、お店の人はすっかり参ってしまい、好き勝手暴れる妖怪を止められないようです。
仕方ありません。ここはぼくが止めてあげましょう。
「そこの妖怪、待ちなさい!」
「ああ?あんた誰〜?」
「ぼくは王李。あなたのような悪い妖怪を倒す存在です」
「私は島原咲。鬼よ。あんた、うざい」
彼女はそう言ったかと思うと高速でぼくの横を通り過ぎ、広い通りに出ました。
片手にはお酒の入った一升瓶を持っています。
ぼくも外に出て、彼女に訊ねます。
「妖怪の癖にアル中なんですか」
「うざい子どもね。あたしは不動仁王とかいう人に会いにきたの。
彼氏の妖怪を殺された復讐のために」
「では、ぼくを倒してからにしてください」
「わかった。いいわよ。いでよ、グレムリン!」
彼女が指を鳴らすと、緑色の体にコウモリの羽を生やした妖怪戦闘員、グレムリンが十数体現れました。
「殺れ」
その声と共に一斉に向かっていく彼ら。
「まったく、あなたたちは、どうしてこうも単細胞なんでしょうか」
ぼくは次々と襲い掛かってくるグレムリンたちを、得意の中国拳法で一蹴します。
倒された彼らはアッという間に消滅してしまいました。
「次はあなたの番ですよ、アル中さん」
「へえ、あんたなかなかやるじゃない。もしかして、スター=レスリングジムの弟子のひとり?」
彼女がその名前を口にしたので、ぼくは一瞬警戒の色を強めます。
一般の妖怪は名前さえ知らないのに、彼女はそれを知っている。
これは何かあるなと瞬時に感じ取ります。
「あたしは彼氏の復讐もそうだけど、ある人物からスター=レスリングジムの奴らの抹殺も依頼されたの。真っ先にあなたから殺してあげる」
久しぶりに厄介な敵が現れたものです。
ですが、そうはいきません。
「勝負です、アル中さん」
「いいわよ、中性少年」
ぼくたちは空中で火花を散らしました。