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*26*
「ひっく…シーナ…。」
中性的な名前だが、ナツは素直に良い名前だと思う。
すると、後ろからルーシィが顔を出した。
「どうしたの?」
「ああ、迷ったんだとよ。」
どうしようかと迷う最中、グレイが呟く。
「…村ってここの近くにある『ハルバーの村』のことか?」
「!うんっ…。」
ハルバーの村。
確かそこは父の生まれたところと聞いたことがある。
「…よし、一緒にいこうな。」
「うん…。」
エルザがグレイの肩をつかむ。
その顔は静かな怒りに満ちていた。
「時間がないのだぞ。」
「……、子供を放ってはおけねぇだろ。」
対するグレイも、静かに話す。
エルザはこうなるともう止められないことを悟り、ため息をついた。
「…仕方ない、いくぞ。」
「よーし!じゃあ、村へゴー!!」
ナツの元気な声が響き渡った。
―ハルバーの村―
「おお…!心配したぞ、シーナ!」
「父さん!ごめんなさい!」
父親がシーナを抱きしめる。
そしてナツ達のほうへ頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「いいって!」
ナツが笑顔で答える。
するとシーナの父親が、グレイを見て驚愕した。
「ラヴェ……!!?生きていたのか!!」
ラヴェはグレイの父の名前だ。
シーナの父親は、グレイを見定め、やがて息をついた。
「…もしやだが、ラヴェの息子か…?」
「はい。」
何時の間にか、周りには村人が集っている。
ナツはグレイを守るように、傍に立っていた。
「おお!!まさかここにラヴェのご子息がくるとは!」
「これは奇跡か…!!」
ラヴェというのはそこまで大きな存在なのかと問い詰めたい。
そして近くの村人に父の話を聞く。
どうやらグレイの父、ラヴェは高名な魔導士だったらしい。
何十年前に、倒れていた母を抱え帰ってきたという。
「……。」
「そのときは驚いたさ、なにせ今まで帰ってこなかったんだから。」
グレイは少し口元をおさえる。
昔のことを思い出しそうだ。
『貴方だけでも』
「………。」
グレイはよろめく。
近くに居たナツが気づき、支えた。
「大丈夫か?」
「………。」
グレイは無言だ。
ナツはグレイを引っ張り、エルザに帰ろうと言った。
迷いたくないから、貴方だけでも無事でいて。
このネックレスに願いを託すから。
私たちの愛しい子供。
二話・終