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*5*
三話「封印解除は彼の」
気絶したグレイを抱えて、ギルドへ戻る。
途中に降った雨で、ナツの前髪が下ろされていた。
(…これじゃ、グレイ風邪引くよな…?)
そう気づき、ナツは自分のマフラーを取り、グレイの首に巻く。
気のせいか否か、その表情が柔らかくなった気がした。
「あら、ナツ達…って!何があったの!?グレイぼろぼろじゃない!」
ミラジェーンがバスタオルを持って駆け寄る。
ナツはそれを受け取り、医務室へ行った。
―医務室―
グレイを起こさないように、慎重にベッドに下ろす。
そして、自分もベッドに腰掛けた。
「……泣いてんじゃ、ねぇよ。」
グレイの頬には、涙の痕がうっすらと残っていた。
ナツはそれを見て、悩ましげに顔を歪ませる。
「………う………ぁ…?」
「!!グレイ?」
かすかな呻き声。
ナツの耳には聞き取れたらしくグレイの顔を見る。
「俺……何で…」
「倒されたんだよ。」
まだ頭の回路が回らないらしい。
目の焦点があっていなかった。
するとグレイは自分の胸元をさする。
「…?気持ち悪いのか?」
「ち、がぅ…。」
グレイは意識がハッキリしたが、まだ弱く心配げにナツに問う。
「剣のネックレス……!」
「ああ、これか?ホイ。」
ナツがグレイのそばにネックレスを置く。
グレイは震える手でそれを握った。
安心したのか、顔は笑みを浮かべていた。
「…ナツ。俺の体調が治ったら、勝負してくれ。」
「ああ。いいぜ!」
いつもの笑顔で笑うナツに、グレイは苦笑した。
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