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*81*
ぶくぶくと、人魚のようにグレイは落ちていった。
逆さまに、綺麗に。
未だにそれは、流れ星だ。
「…………。」
音も泣く落ちていく。
だが、誰かがグレイに抱きついていた。
「………!!」
それは、ナツだった。
ナツは、必死にグレイを掴むが非情にも力が抜ける。
もう、駄目だ。
《グレイ―》
ウルの声じゃない、違う声。
《グレイ―》
(…?)
誰かが、またグレイの腕を掴んだ。
顔を上げる。
(レイガ……!)
また目を見開く。
だが、そこにいるのはナツ。
ナツの若草色の目と、レイガの翡翠の目が変にかぶった。
(な、つ。)
「…行かせねぇよ、」
ナツが小さく笑った。
「―お前は、妖精の尻尾の魔導士だ。」
グレイとナツを、水圧が押し上げた。
おそらくそれは。
(ウル…?)
死ぬんじゃない。
そんな、綺麗な声が耳に響いた。
気づいたときには、流星群が大量に流れていた。
祝福するかのように。
あまりの水圧に押され、ナツとグレイは空に浮いた。
またグレイが、流れ星のように落ちそうだからナツが支える。
だが、落ちていった先は。
硬い硬い、地面だ。
「んが!!!」
「わっ、」
ナツがクッションになってしまい、グレイがその上に乗る。
ぐえっ、と苦しげな声がナツから出た。
うつぶせのナツの背中に、グレイが乗る状態だ。
少し戸惑いながら、グレイはナツを見る。
その視線に気づき、ナツはへへ、と笑った。
「…無事だったな!どうだ?」
「…っ!ばか、馬鹿!馬鹿ナツ!お前まで落ちてたらどうするつもり…」
「させねぇよ。」
真剣なナツの声。
「お前が死ぬのは、駄目だ。だから、落ちねぇ。」
「え…、」
「お前はいなくなっちゃ、駄目だっつーことだ。流れ星にさせねぇ。」
真剣な顔は、すぐに笑顔になる。
「破滅の冬の流れ星、だな。」
「…今、ちょうど冬だしな…。」
グレイが、涙ぐみながらナツに微笑む。
それにナツが、大きい笑顔を返した。
冷たい冬に、流れ星が沢山空に、雨のように流れている。
それを、ただただ二人で見ていた。
アイリの持っていた鍵は、ルーシィに渡された。
ルーシィは申し訳なさそうに、もらって喜んでいた。
グレイは、一つの写真を指でなぞる。
外から、仲間の声がした。
(もう、何も犠牲にしない。)
グレイが出て行ったドア。
横の棚に、絵本と一つの人形が笑顔で置かれていた。
END
完結です、ありがとうございました!
グレイばかりなので、次のは違うのにしよう♪