完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
関連タグ: SOUL COLOR  
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*14*


ⅩⅢ、夢と死の距離

悪夢の中にて―神前美波―

 闇の中で待つ事数分…いや数時間のような気もする。
 私はもう諦めかけていた。例え『夢喰』の悪魔を見つけられても、時間がきっと過ぎてしまう。闇の凍え、飢え、苦しみ…。
 私はきっとこの世界で息絶えてしまう。夢と死は限りなく近いって言われている。その距離が段々と縮んでいく気がした…。
 ふと、闇の世界に亀裂が走った。その後、眩しい光が差し込んで私は何がなんだか分からなくなった。その直前に聞いた言葉の意味を、考えながら…。
「『SOUL COLOR』の暴走が…。」

霧隠にて―工藤直人―

「起きて。いつまで寝てるつもり?」
 あぁ、美波さんの声か…ん?美波さん!?
「あ、おはようございます…。」
「やっと起きた。もう放課後だよ?」
「えっ!?」
 僕は辺りを見渡す。日が西に傾いている。
「いつの間に…あ、楓様は?」
「ちゃんと授業に出に行ったよ。直人君の事は、多分どうにかしてくれたと思う。」
「あの後、どうなったのですか?」
「私が目覚めた時、ドリーズとドリーブがいたけど、一旦それぞれの世界に帰るみたい。そういえば、ドリーブから伝言を預かっているよ。」
「何ですか?」
「ドリーズと俺の力の暴走を止めてくれてありがとう、だって。
 私の夢に来ちゃったドリーズも『SOUL COLOR』のせいで暴走しちゃったからね。」
「え?僕は何もしていません。ただドリーブの『SOUL COLOR』を見せるのに協力しただけです。」
「貴方の力、何だか覚えてる?」
「『祓魔』です。」
「そう。それは力の暴走も止められるみたい。おかげで助かったって何度も頭下げてたよ。」
「でも手をかざさなければ発動しないはずです。」
「寝ていた時の直人君の写真、見せよっか?」
 美波さんはニヤリと笑うと、ロッカーからデジタルカメラ(何処から持ち込んだんだ…。)を取り出して僕に見せた。
 床に手を置いて寝ている僕の姿が写っている。でも、置いているというより押さえているようにも見える。
「いつでも魔族対策って感じね。まぁ誰かに向けたら吹っ飛ばすんだろうけど。」
 美波さんは小さく笑いながらデジタルカメラをロッカーに戻した。
「でも今回は私、助けられちゃったね。私が善意を捧げなきゃいけないのに…。まぁこういう時もあるか!
 あ、直人君。そろそろ帰らないと楓ちゃんが心配するんじゃない?」
「そういえばそうでした!執事でありながら情けない…。」
「いや、執事は自称でしょ?」
「それは気にせずに!
 美波さん、また来ますね!」
 僕は慌てて教室を出ようとした。ドアに手をかけたその時、美波さんがとても小さな声で呟いた。独り言だったのかもしれない。
「また、来てね…。」
 僕は立ち止まった。そして僕は悟った。
 美波さんは強がっているけれど、きっと本当は寂しいんだ。
 魔法学園にいた時にも仲間がいたはずだ。その仲間とも会えずに此処にいる。
「必ず来ます。」
 僕は自分でもびっくりするくらいはっきりと言った。美波さんが驚いた表情をしている。
「…ありがとう…。」
 美波さんが僕の方を見る。いつもは凍てつくような青い瞳が、雪解けの水のように柔らかな青に見える。それに、とても可愛らしい笑顔だった。美波さんもこんな笑い方するんだな…。
「それじゃあ、また。」
 僕はドアを開けて、霧隠を後にした。

 それからほぼ毎日、僕らは霧隠に遊びに来るようになった。たまに、人間界に戻ってきたドリーズとドリーブも一緒に…。

13 < 14 > 15