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ⅡⅥ、生死の狭間
「SOUL WORLD」にて―神前美波―
此処は、何処だろう?私は、暗い空間の中にいた。
「此処は生死の狭間。そなたの進み方で、運命が決まる。」
声が聞こえた。この声は、前にも聞いた事がある。私の儀式の失敗や、繋がった『掛橋』の事を教えてくれたあの声…。
「貴方は…?」
「そうか。まだ名乗ってもいなかったな。我は全ての生き物の創造神だ。」
「生き物の創造神…?」
「そう。グレイスの魂も、我が創造した。運命も定まっている。しかし…瀕死の者が生死を選ぶのは、その者自身だ。」
「という事は…私が儀式の失敗をしたのも運命…。なら、何故今まで助言を?」
「世界の創造神であるサトゥレイトに言われたのだ。サトゥレイトは我の父にあたる存在。どうやらグレイスには、特殊な何かがあるらしい。何なのかは分からないが…。それをどうしても明かさなければならない。」
「特殊な何か…。それを明かさないと、『掛橋』が戻らなかったりするの?」
「その可能性がある。世界の運命はサトゥレイトしか分からない。我には知らぬ事が多くある。
それより…生死のカウントダウンは後10分を切った。生に還るか、死へ逝くか、決めるのはそなただ。」
声がかき消える。それと同時に私は考え始めた。
このまま逝った方が良いかもしれないという思いと、まだ生きていなければという思いが巡っている。
生き物って不思議。生きている時はあんなに生を求めるのに、狭間に来ると死も求めてしまう。
「私が行かなければならないのは、何処…?」
問いかけたけれど、返事はない。ただ静寂が包んでいる。
「…美波…美波…!!」
ふと、声が聞こえた。上を見ると、必死に祈っている楓ちゃんが見えた気がした。
そうだ、私はまだ生きなくちゃ。生きて『掛橋』を直さないと!そして何よりも…。
楓ちゃん達と、またいつもの日常を過ごしていたい…!!!