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*5*
Ⅳ、祓魔
霧隠にて―工藤直人―
僕はいきさつを説明した。揺れる炎を見た事、その後から起きる不思議な現象…。美波さんはずっと僕の話を聞いている。
話が終わると、話し出した。
「試しに、私に手を翳してみて。」
僕は、少し躊躇いながらも手を翳した。すると、美波さんが壁まで吹っ飛んでしまった。
「すみません!!大丈夫ですか…?」
「あ〜平気平気。気にしないで。」
そう言いながら僕の方に戻って来た。
「やはり、僕に何か憑いているのでしょうか…?」
それを聞いた美波さんは、いきなり笑い出した。え?何か変な事を言ったのだろうか…?
「何かがずっと憑いていたら貴方はほとんど動けないよ。貴方が今使ったのは力、能力だよ。」
「能力…?」
「そう。人間の中には、不思議な力を持つ人が何人かいるらしいの。多分貴方はその1人。」
「何故僕はその力を…?」
「私にも分からない。神が人間を創造する時に予め備えたのかもしれないし、ある弱点をカバーする為に突然目覚めたのかもしれない。まぁ今のは魔法学園の授業で言っていた事だから、本当か良く分からないけど…。」
「僕のこの力は、一体何なのですか?」
「貴方の能力は多分、『祓魔(フツマ)』だと思う。」
「『祓魔』…?」
「精界にいる聖霊がよく持つ力だよ。魔族の者を遠ざけて、かかった呪いを解く事が出来るの。だけど人間の場合は元々魔力が弱いから、充分な効果は発揮されないかもしれない。貴方の場合、遠ざける力しかないのかもね。」
「でも貴方は魔族の者ではないはずです。」
「私の場合、罪を犯して呪われているからだと思うよ。魔族は昔から、神に見捨てられた罪深き呪われた一族って言われているし…。」
と言った直後、突然美波さんが何かに反応して後ろを振り返った。僕も同じ方を見る。
そこには、あの時にも見た黒い炎が浮かんでいた…。