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SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
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*6*


Ⅴ、黒い炎

霧隠にて―神前美波―

 あの炎が、多分直人君が言っていた魔族の者だね。直人君、魔族の者は見られても、声は聞けない様子だったけど…。
「ごめんごめん、悪気はなかったの。…で、何か用なの?」
「そこの人間に、用があるんだ。」
「その前に、正体を見せて。」
 黒い炎は、黒い犬に姿を変えた。黒い犬は私を突き飛ばして、直人君に近づいてきた。直人君は何故か動かない。まさか、直人君は…。と思った時、黒い犬から強い殺気を感じた。
「ちょっと待って。」
「何だ。」
 黒い犬は止まった。
「まさか、あの人に危害を加えようとしているんじゃないよね?」
「するさ。俺達の仲間を殺した復讐だ!」
「でも殺したのは、あの人ではないはず。」
「あいつの父親が、人間界にたまたま迷い込んだ俺の仲間を皆殺しにしたんだ。俺達は何もしていないのに、魔族だというその存在だけで…。もう良いだろ?」
 黒い犬は尻尾の剣を直人君に向けた。直人君はまるで、剱先に吸い寄せられるように向かってきた。私は反射的に空気中の水分から作った槍で、剣を弾いた。ついでに、直人君の動きを操作魔法で止めた。だけど、直人君はそのまま気絶してしまった。(さっきまで操られていたからかもしれない。)
「何をする!」
「復讐なんかしたら駄目だよ!そんな事をしても仲間は帰って来ない!」
「うるさい、そこをどけ!どかないなら、お前もろとも消してやる…!」
 黒い犬は私に向かって、巨大な炎の玉を作り出した。神の子の力を馬鹿にされてたまるか!
 私は空気中の水分を集めて湿度を上げた。みるみるうちに玉が小さくなっていく。でも黒い犬は再び炎の玉を作り出し、すぐ私に投げ付けた。私は槍を回転させてその玉を消す。それが何度か繰り返されて、お互いにもう疲れていた。
「何故…お前はそこまでしてあいつの味方をしようとするんだ。」
「もし貴方が復讐なんて悪業を為したら、いつまでも魔族が呪われた一族になる。」
「…しかしあの人間の父親は、絶対に許す事など出来ない。仲間を殺された俺には、やはり仲間の仇を討ちたいんだ!」
「ちょっと待って!」
 私は声のした方を見た。そこには、直人君と同じ制服を着た生徒がいた…。

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