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6人の役者
作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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(岳)
「雫・・・」
雫は泣いていた。
オレを、まっすぐ見つめて。
笑顔でいてほしい。
なんて、いえるはずがない。思うことも許されない。
顔をゆがませる事も、声をあげることも、体を震わせる事もなく、涙を流す雫は、まるで、ロボットのようだった。
悲しい?
辛い?
「いえないよね・・・」
「え?」
オレの気持ちを代弁したかのような、華のセリフ。
「私たちは、いつでも隠さなきゃいけない」
「普通が、異常で。異常が、普通で」
「だから」
「出会いも別れも。泣きたくなる」
出会いは、これからの演技の辛さ。
別れは、もうあってはいけない辛さ。
助けは、SOSは、口にだしてはいけない。
禁じられた、Word。
「おかしいかな、私達」
雫が言う。涙は流したまま。
「ふつうじゃないのかな」
少し、口角をあげる。
「普通って何?」
「ダメ!!」
華がとめる。
苦し紛れに、あげた声。
「これ以上言ったら・・・」
「分かってる。ダメだね、私」
何も、いえない。
オレが、今できること。
それは。
「じゃあな」
別れを告げること。
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