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作者: 紫桜 (総ページ数: 86ページ)
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*10*
♯8 「大智 柏(ダイチ ハク) 」
「おはよう、晃。瞳から聞いた、華とデート・・・なんだって?」
俺が、ニヤニヤしながら言うと、晃はいっきに不機嫌な顔になった。
「はあ? 僕、あいつに話した記憶ないんだけど」
「華から聞いたんだろ。華と瞳は仲がいいから。
それより晃、昨日はずいぶん寝るの早かったんだな」
「ああ。『それより』は余計だけどな」
まだ、時々冷たい風が吹く中、今日は春の日差しがあり、ぽかぽかしていた。
晃は、俺の幼なじみで、家が隣ということから毎日一緒に登下校をしている。
寝た時刻がいつもより早かったって分かったのは、俺と晃の部屋も隣同士だから。
晩ご飯を食べてからは、俺も晃も部屋にいる。たいていね。
けど、晃が部屋に戻ってきて灯りがついても、すぐに消えたから寝たんだと思ったんだ。
「何、どしたのよ、華と電話したんだろ?
なんでそんなに不機嫌なわけ」
「ああ? 父さんだよ。夜、2時くらいに電話してきた。
こっちは寝てるっつーの。仕事の合間がここしかなかったって。
だから、いろいろ文句言ったら怒られた」
「へぇ〜」
「なに、素っ気ないね。別にいいけど」
んなこと言われても・・・。
お前がそうなんだって。
「そうだ、お前に頼まれてたことしてきたよ」
「ん、サンキュ」
「はい」
俺は、1枚の紙をわたした。
これは、6年の委員の名前をリストアップしたもの。
「これ、俺の自信作ね。
情報は、直々に俺が仕入れたものだし、誤字脱字も多分ない。
晃の頼みだから聞いてやったんだぞ?」
「いつも、お世話になってます!」
「いいって、俺も晃にはいろいろしてもらってるし」
その後も、俺たちは雑談をしながら学校へ向かった。
歩いて15分ぐらいのところに学校がある。
俺たちは6年だから、教室は2階にある。
2階には、低学年の教室がやたらと多い。
職員室も、6年の教室もあるから、なんとなくは分かるんだけど、そのせいで6年と5年のプレッシャーはすごい。
5年は、来年そうなるっていうことが分かってるし、俺らは今やってるからね。
したから、1年、2年、6年・・・。2階にはこの学年の教室がある。
しかも、今は4月。俺だけかもしれないけど、全員保育園児に見えて仕方がない。
女子は、あの子が可愛いとか言い合ってるけど。
どうせ、その可愛い女の子も、だんだんお前らみたいなずる賢くて、怖い女子になるって、声になんて出せないけど心の中では思ってる。
でも、やっぱり低学年だって女子は女子。
やたらと大人ぶってるやつは、噂話が怖い。
なんで、6年男子が低学年を怖いなんて思わなきゃいけねーの。
ああ、低学年の未来が心配だ・・・。