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*13*
雪は、なぜか怒ったように俺にいう。
雪にそう言われて、やっと本来の目的を思い出した。
でも、雪の見舞いが目的になかったわけではない。そう言っておこうか、と思ったが、きっと「言い訳しない!」とか言われそうなのでやめた。
「あぁ、本当の目的だな。 話していいのか?」
「うん。 多分、大丈夫」
雪は、こくりと優しく頷く。
だから、俺は覚悟を決めて話すことにした。
「へぇ、そっか。 そんなことになってたんだ、夜人」
俺は、あの放課後のことを話した。
すると、雪はすごく冷静だった。俺の方が驚くほどに。
「なぁ、驚かないのか?」
「……そりゃあね、悲しいけど、驚きはしない」
雪は、俯いたままそういった。
「じゃあな、明日か明後日くらいには元気に学校来いよ」
雪が泣きそうなのが分かった俺は、そういって雪からの返事を聞かず、すぐに部屋をでた。そして、廊下を歩きながら、俺は考えた。
雪に放課後のことをいった時、俺は全てを話していない。
夜人がいなくなった事は話した。しかし、 その後の教頭の件は言わなかった。
本当は言わなければいけないと思ったが、それを雪にいう勇気が俺にはなかったのだ。
玄関までくると、リビングの方から梅子さんの「あらー、真人くん、帰るのー? ごめんねー、見送れなくて」
という声がした。
梅子さんが見送りできない理由は、どうやら電話をしているかららしかった。
「いえ、大丈夫です」
俺は、そう答えて玄関を出た。
ドアを閉める間際、「嘘でしょう、夜人が!?」という声と、受話器が床に落ちる音が聞こえた。
【第三話 END】
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