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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*22*

 俺は、慌てて学校に行く準備をする。
朝ご飯、食べてない。最悪だが、そんなことにこだわる暇がない。顔は、とりあえず適当に早く洗い、歯磨きは適当に、歯を歯ブラシで一回なぞりする。
 そして、下におりていく。
「…………」
 母さんは、リビングで音楽を聞いているらしい。
俺は、ダイニングルームにそっと入る。俺の分の朝ご飯はなかった。そして、昼の弁当もなかった。
俺の昼飯は、購買で買うしかなかった。
(朝ご飯は抜きにするしかないか)
「いってきます」と母さんに言ったあと、学校へと走った。多分、母さんには聞こえてないけど。

 学校に到着。授業まであと十分。
なんとか間に合った。慌てて教室に入る。
「あれ?」
その教室をみて、俺は驚愕した。
 俺の机が、ないのだ。
 教室を確認。 この教室は、確かに俺のクラス。
だけど、俺の机はなかった。一番後ろの窓側の席にある筈なのに。
 まわりを見回した。でも、ない。
「あれー? マコトくん、この学校やめてなかったのー?」
憎たらしい声がした。……中西剛だ。

(なんで、ここにいるんだよ)

 俺は、小さく舌打ちをした。だけど、それはあいつに聞こえていたらしい。
ただでさえ強面のゴリラのような顔が、なおさら歪んで醜くなる。
「マコト君の机、どこにあるかなー? 探してみたらー?」
醜い顔のまま、俺になめた口調で喋ってくるあいつ。
(俺が、あんな奴に屈したりするはずがない!)
 教室から出ようと踵を返す。
その時、誰かにぶつかった。
「?」
俺は、上を見上げる。
 その背の高い男性は、メガネをかけていた。
その上、色白。 なんか、弱そうな顔つきだ。
「あ、ごめん。 ねぇ、君はこのクラスの生徒かな?」
優しいが、どこか儚い笑顔で、彼は話しかけて来た。
「はい。 さよなら」
俺は、彼の横から滑り出ようとした。


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