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*23*
「え、いや、ちょっと待って」
男性は、俺の手をつかんだ。
だが、その力は……とてつもなく弱かった。
(本当に男か、こいつ?)
拍子抜けしたが、すぐに腕を振り払う。
そして、走り出す。
俺の向かう方向から、担任が歩いて来た。
(あれ? さっきのあいつ、 担任じゃねーの?)
俺は、てっきりあの若い男性が新しい俺らのクラスの担任になるものだと思っていた。でも、担任は目の前にいる。
どういうことか、頭が混乱する。だけど、深く考えるわけにはいかない。
あまり考えていると、担任に捕まってしまうからだ。
俺は、走って廊下の端の階段にむかう。
担任の驚いた顔が俺の横をすぎていった。
そして、俺は、階段を降りていく。
「よし、脱出成功」
とりあえず、ガッツポーズ。
そして、息を整えるために一旦立ち止まる。
それにしても、あいつは誰だ?
あんなか弱い男の先生は、この学校にはいなかったはずだ。
息がある程度整うと、今度は走らずに玄関から校庭へとでる。この学校の校庭は、他の学校と比べると、小さめだ。だから、校門まではあっという間。
校門から外にでると、すごく安心した。不安が消える。
空を見上げる。 昨日と同じ曇天の空だった。
でも、雲と雲の隙間から日光が覗いているのが、カーテンのようで綺麗で清々しかった。
暫く歩くと、街に出た。
涼しい風が俺のほおを撫でる。
この街は、すっかり寂れていて、居るのは年寄りばかり。若い奴はいないし、人気がなくて怖いくらいだ。
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