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*26*
暫く、グデーッとベッドに寝転んでいた。
静かな部屋の中で聴こえるのは、木々の揺れる音だけ。
俺は、その音に耳を傾けていた。天井を意味もなく見つめながら。
しかし、その静寂は、インターホンの音によって破られた。
「あのー、こんにちはー」
いかにも軟弱そうな男の声がする。
この声は確か……朝に会った奴だ。
俺は、気怠かったが仕方なく立ち上がると、玄関に行ってドアを開けた。
相手を確認する。やはり、朝会った奴だ。
「なんですか?」
敬語で無表情のまま問いかける。いちいち笑顔を作るのが面倒くさかったからだ。
「いや、宿題を届けに来たんだけど……立派な家だね、あはは」
笑いながら、相手は俺の家を見上げる。そして、紙の袋を手渡す。
家が立派?そりゃそうだ。俺の家は、すごく金がかかったらしい。家を立てた当時は、俺の家族はとても仲が良かった。そんな記憶がある。
それは置いておくとして、宿題だって?
まだ、二時間目あたりだろ。 放課後になってからでもいいのに。というか、俺は一週間分の宿題さえ、まだ終わらせてない。
「ありがとうございます」
俺は、さっと紙袋を手に取ると、礼をいっておく。勿論、上辺だけだけど。
「あ、僕は梢 悠馬っていいます。 丸菜学園高校の君のクラスの教育実習生。 よろしくね」
俺が礼を言ったあとで、相手はそういった。
梢 悠馬……どこかで聞いたことがあるようなないような。
ていうか、 教育実習!? マジかよ……こんな奴で大丈夫かよ。
「よろしくお願いします。 俺は」
俺が自己紹介しようとすると、梢さんがその言葉を遮る。
「知ってるよ。 赤崎 真人くんだね。 そういえば今朝、君の机がなかったけど、どうしたの?」
優しく微笑んで、梢さんは聞いた。
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