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*27*
……こいつ、笑ってるが、感が鋭いな。
俺は、そう思い、右手の拳を強く握りしめた。
「いえ、 掃除の時に忘れてたみたいで……」
「嘘はついていないかい? 周りがちゃんとしてるから、忘れはしないでしょ? それに、 君は欠席日数が多いね?」
やばい。やばいやばい。 こいつ、マジでやばい。
事実が分かって、どうする気だ?
剛を怒れば、また俺がなにかされるんだぞ。
お前の善意が、俺の苦しみに変わるんだ。
「……すいません」
俺は、そう言うと、ドアを無理矢理閉めた。
勿論、梢さんの力の弱さは把握している。
なら、閉められる。
……確かに、俺はドアを閉めたはずだった。
だが、ドアはしまっていない。
目の前には梢さんが居た。ドアに手をかけて、真剣な顔をして。
「な、なんですか」
ーーおかしいだろ。 力、弱いはずなのに。
「君、嘘ついてるね。 いじめられているのかい?」
ーー優しく問うなよ。 善意のつもりなのか。
「いじめられてません」
ーーそう。 俺のこの答えが正しいんだ。
「嘘だ。 僕、いじめられてたから分かるよ。 誰にいじめられてるの?」
優しい声のまま、梢さんは首をかしげた。
「……中西 剛」
俺は答えた。
彼の言葉が心に響いたわけじゃない。
ただ、……飽きただけ。 もう、この話し合いはどうでもいいや。
また、明日学校にいかなければ、いいだけ。
「中西って、一つ上じゃないか」
当たり前だろって……なんでこいつ、知ってるんだ。
教育実習生なのに。もしかして全校生徒知っているのか?
「そうです。 理由はわかりませんが、いじめられました。 今日の、朝から」
俺はそう言う。
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