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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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……こいつ、笑ってるが、感が鋭いな。
 俺は、そう思い、右手の拳を強く握りしめた。
「いえ、 掃除の時に忘れてたみたいで……」
「嘘はついていないかい? 周りがちゃんとしてるから、忘れはしないでしょ? それに、 君は欠席日数が多いね?」

 やばい。やばいやばい。 こいつ、マジでやばい。
事実が分かって、どうする気だ?
剛を怒れば、また俺がなにかされるんだぞ。
お前の善意が、俺の苦しみに変わるんだ。

「……すいません」

 俺は、そう言うと、ドアを無理矢理閉めた。
勿論、梢さんの力の弱さは把握している。
なら、閉められる。
……確かに、俺はドアを閉めたはずだった。
 だが、ドアはしまっていない。
目の前には梢さんが居た。ドアに手をかけて、真剣な顔をして。
「な、なんですか」
 ーーおかしいだろ。 力、弱いはずなのに。
「君、嘘ついてるね。 いじめられているのかい?」
 ーー優しく問うなよ。 善意のつもりなのか。
「いじめられてません」
 ーーそう。 俺のこの答えが正しいんだ。
「嘘だ。 僕、いじめられてたから分かるよ。 誰にいじめられてるの?」
 優しい声のまま、梢さんは首をかしげた。
「……中西 剛」
俺は答えた。
 彼の言葉が心に響いたわけじゃない。
ただ、……飽きただけ。 もう、この話し合いはどうでもいいや。
 また、明日学校にいかなければ、いいだけ。
「中西って、一つ上じゃないか」
当たり前だろって……なんでこいつ、知ってるんだ。
教育実習生なのに。もしかして全校生徒知っているのか?
「そうです。 理由はわかりませんが、いじめられました。 今日の、朝から」
 俺はそう言う。

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