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*5*
「え、あ、まぁ。 ありがとう、母さん」
正直な感想をいったら、母が寝込みそうなので、一応お礼をいっておく。
すると、母は尚更ハイテンションで、
「いいのよ、いいのよ! 礼は父さんにいいなさい!」
と俺の背中をばしばし叩く。母さんの黒い長い髪が揺れている。
そうだな、たまには父さんの帰りでも待つか。
いつもなら、11時だから寝たいところだが、今日くらい待とうじゃないか。
俺は、自分の黒い髪をいじりながら、父を待っていた。
しばらくして、机の上にある、母の鏡を使って、いじった髪を直す。
僕は、母さんに似ているらしい。確かに、鏡をみると自分でもそう思う。母さんと同じ黒い髪に、黒い澄んだ目。 自分でいうのもあれだが、整った鼻筋。
だけど、僕は学校へはいかない。学校へいくのは嫌だ。親の思い通り、大人の思い通りにはなりたくないのだ。
母さんは、まぁ優しいから俺は反抗したくない気持ちもある。だけど、問題は父だ。父は、俗にいう金持ちだ。それに、わがままという特典付き。最悪なのだ。
「ただいま」
低い声が玄関から聞こえた。父が帰ってきたらしい。
俺は、玄関に向かって、
「おかえりー」
と、適当に返事を返す。と、横で母も、「おかえりなさい」と返事を返している。
「お、なんで真人も起きているんだ?」
「もぅー、とぼけちゃって! 真人がお礼をいいたいのよっ」
母さんは嬉しそうに父に言う。だが、父の表情は堅いままだ。しかめっ面のままで、
「そんなもの、明日いえばいいだろう」
といったのだ。 流石の母も表情が曇る。
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