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必要のなかった少年と世間に忘れられた少女の話
作者: 琴 ◆ExGQrDul2E  (総ページ数: 66ページ)
関連タグ: 殺人 SF 複雑 罪と輪廻 
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ーー「生」って、なんだろう。
 俺にはもうわからないんだ。
 心臓が動いていて、息をしている。それが「生きる」ってことなんだろうか。なら、他人から見捨てられて、孤独死しそうになっていても、心臓が動いていて息をしているからその人は「生きている」というのだろうか。
 確かに、そうなんだろう。 昔、雪とふざけて「生きる」と、「死ぬ」を時点で調べたことがある。
 完璧には覚えていないが、確か生きるの意味は、「人・動物が命を持つこと」と書かれてあったはずだ。そして、死ぬの意味は、「呼吸や息が止まり、命を失うこと」とあった。
 しかし、その下に、もう一つ「死ぬ」には意味があったのだ。その意味は、「活気がなくなる。 生気を失う」。
 その通りに考えると、「生きる」とは、「活気がある。 生気がある」という意味になる。
 そうしたら、俺は死んでいたのではないだろうか。
 俺は既に生気なんてなくしていたはずだ。しかし、俺自身も、そのことになかなか気づけなかった。だけど、あの時に気づいた。
『君は勘違いしたよね?』
 梅子の言葉だった。
 もう俺は、誰にも愛されてなんかいなかったのだ。柊さんとか、夜人とか……雛とか。 彼らは愛してくれなかった。
 いや、きっと彼らは俺を愛してくれていたのだろう。だけど、それにも俺は気がつかなかった。
「これが当たり前。 平凡な毎日」。俺はそう思い込んでいたから。
 だから、わからなかった。
 もし俺が、こんな不幸の塊じゃなかったら。親孝行で、友達もたくさんいて、学校は皆勤賞をとれる全出席で。そうしたら、未来は変わっていたのだろうか。
 俺がこんな男じゃなかったら、夜人たちは死ななかったのだろうか。
 どんどん、頭がこんがらがってきた。脳が混乱する。頭が痛い、身体中が痛い。苦しい、辛い。

 誰かに、それを分かってほしい。
でも、身体のどこかが分かって欲しくないといっている。
 矛盾している。全て、矛盾している。
 結局、俺がなにを求めても、それは与えてもらえなくて、俺がなにを信じても、周りは平気で嘘をつくんだ。
 でも、それは被害妄想。

 わるいのは、全部「俺」なんだ。

【第十二話 END】

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