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まぁ、だから嫉妬したってわけじゃないけどね。
世話の甲斐もあってか、花はとても綺麗に咲いた。特に、春の一面のチューリップと菜の花は感動した。寿樹って凄いな、って心から思った。
まぁ、寿樹の話はここまでにしよう。
私は、目の前にいる男の子を見下げた。彼は、真人くん。夜人の大事な親友だった子。とてもイイコだった。私のいうこともよく聞いてくれたし、雪の相手もしてくれたし。
でも、もろいよね。 女の握力で死んじゃうなんて。 私の握力なんて35キログラムくらいなのに、それだけで死んじゃった。人間って、本当にもろい。
私……本当は殺したくなかったけど、殺さなきゃだめだったみたい。真人くんは、知っちゃったし、夜人のことも思い出しちゃったから。まぁ、私がそう仕向けたんだけどね。
Die Application。 このゲームアプリは普通ではない。明らかに、現実や当たり前のことを超えてしまっている。私が作ったものながら、あり得ないものだ。
その機能は、表面はただのRPG系で、サイコロを利用したゲームだ。
でも、本当の機能はそんなものじゃなかった。簡単にいえば、「このゲームのプレイヤーを殺す」ってゲームなわけ。それだけでは分からないと思うし、今から、詳しく話そうと思う。
このゲームでは、まずプレイヤー全ての本名とメールアドレスを管理人の名簿に登録される。これは、登録の時の利用規約に書いてあるけど、読んで居ない人が多いんだろうね。沢山のプレイヤーが居るから。
そして、その名簿に書かれたプレイヤーは、ランクが30を超えると生贄リストに登録されるの。そして、ここで出て来た「生贄リスト」。これにも大切な意味があるの。っていうか、これがこのゲームの本質の全てなんだ。
「生贄。 本当にいい響きの言葉」
このゲームのプレイヤーは、ゲームに負けるごとに、そこのボスとよく似た現実の人間に、いじめられたり殺されたりするの。 真人くんなら、剛くんとか殺人鬼のことかな。そして、そのプレイヤーが何らかの理由で殺された時に、その人は生贄となる。
そして、生贄リストに赤字で表示されるんだ。
なんでそれが生贄と呼ばれるか。 それも大切。 それは、プレイヤーの残りの寿命が私と時雨のものになるから。
さっき、真人くんに出した質問。
「どうして私がこんな若い姿でいられるか?」っていうやつ。正解は、これだった。
私と時雨は、沢山のユーザーから寿命をもらってた。だから、容姿もこのままで、ある意味不老不死。
だけど、その仕掛けだけじゃうまくいかない。だって、そうでしょ?「そのゲーム利用者が次々と謎の死」とかなったら、もう利用者はいなくなっちゃう。
だから、私はまた台本の力を借りた。 ゲーム利用者が生贄になったら、 自動的にその人と関わった全ての人からその人の記憶を消すの。
夜人の時もそうだったでしょう?それに、柊さんのときも。 真人くんからも、夜人や柊さんのデータは消えちゃった。 台本の力は、友情や愛情ももみ消してしまう。
この仕組みのおかげで、利用者は減らないし、私たちは不老不死になってるんだ。
私の年齢は、本当は今は59歳になる。だけど、このアプリのおかげで20〜30代の人生を続けられていた。
時雨も、私と同じ人生をおくっていた。
だけど、私たちはある契りを結んでいた。
「光の生まれ変わりである雪を殺さないこと。 そして、雪を悲しませることはさせないこと」だった。
雪は、ゲームの本質について知っていた。彼女は知っていたから、夜人の時も悲しまなかった。 泣きそうな演技をしただけ。
光も、演技が得意だったから。特に、青髪の女の子を死に物狂いで助けようとした演技なんて、本当に最高だったわ。 笑っちゃいそうなくらいに。