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*8*
夜人は、器用に画面をスライドさせている。
(あいつ、なにをやってるんだ?) 俺は、首を傾げる。
「なぁ、そういや妹は?」
あいつのやってることも不思議だが、いつも一緒の妹がいなければ、少しは気になるものだ。
「あぁ、雪? あいつ、風邪で寝込んじゃってさー」
あはは、と苦笑いしながら俺にいう夜人。
へぇ、馬鹿は風邪をひかない、というのは嘘なのか。
夜人の妹、つまり雪は、美少女だ。黒い肩までのショートカットヘアーに、澄んだ黒い目をしている。肌は白い。 丸菜学園の白いセーラー服がとても似合う高校生。だが、残念な美少女のタイプ。なぜなら、馬鹿だからだ。
頭の悪さは俺でもびっくりだ。 一月は何日あるか、そんなことも曖昧だし、難しい文章題なんかは読めやしない。
夜人も、あまり頭はよくないが、ここまでではない。まぁ、落第とかそんなものには絶対にならない。
俺も、悪くない。学校は、夜人に遭わない日は大体休んでいるが、夜人に遭わない日の方が少ない。あ、ちなみに 《会う》じゃない。夜人の場合は、正に“遭う”なのだ。
俺は、遭わないように気はつけているが、何故か行くところ行くところにこいつがいるのだ。だから、学校まで行くわけだ。
「おい、真人。 いいこと教えてやろーか?」
夜人が、“聞いて、聞いて”という犬のように目を輝かせて言う。
「いや、別に教えなくていいよ」なんて言えたら、楽なものだ。だけど、それは流石の俺もできない。
こんなに話したそうにしているのに、聞かない、なんていう選択肢はないのだ。
「なんだ? 」
俺は、さらりとGOサインを出す。すると、夜人は嬉しそうに笑うと、話しはじめた。
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