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*64*
「当り前よ。今日、悪魔がたくさん出たのはわたしのせいでしょうー…?」
ここは、ウィンドミルの紗綾の部屋。今、綾美とれんがいるところだ。
「おまえ…、なんでそんな解釈になるんだよ?」
れんが動揺を隠しきれずに言う。
「悪魔はわたしの精気を吸おうとしてるのよ?わからないの?」
ふっと笑う。悲しみが入り混じった笑顔。
(まるで、あのときのようだ…。)
そう思いながら、れんは綾美に抗議をする。
「でも、おまえは精気を吸われた状態でも上級悪魔に勝った。おまえの精気を吸おうとして
くるようなやつはいなくなるんじゃないのか?」
それは考えていなかったようで、綾美は驚いたような表情をしている。
そして、つぶやくように話す。
「でも、今回はわたしの力じゃないわ。わたしは試作品の薬を服用したの。」
綾美の説明によると、その薬は飲んだ者の力を倍増させるらしい。
「これは失敗ね。あまり時間がもたなかったし…。」
綾美がつぶやく。話がそれてきているので、れんは話を戻す。
「別におまえのせいじゃないんだから、気にすることはない。ほら、食え。」
それでも、綾美は食べようとしない。そして、涙をこぼす。
「もういやよ。みんなに迷惑かけたくないのー…。」
ぽつり、ぽつりと話し出す。綾美が人前で泣くのは、あのとき以来かもしれない。
それを見たれんは、思わずといった感じで綾美を抱きしめる。
「れん…?」
綾美の頬が、少し赤くなる。
「綾美、おまえは1人でがんばりすぎだ。たまには、俺たちのことも頼ってくれよ。」
優しい言葉。それはあのときのように綾美を元の綾美に戻してくれる。
そんな仲間にすがるように綾美もれんを抱きしめる。
静かな時間。綾美が泣く音だけが聞こえる。
しばらくすると綾美は泣くのをやめ、れんに微笑む。
「れん、また助けられたね。あのときも、わたしを立ち直らせてくれたー…。」
「…たいしたことねーよ。」
いつもの綾美の笑顔。大事な仲間のぬくもりを感じながら、話し出す。
そのとき、まだ綾美は知らなかった。自分の胸の奥に秘められた仲間への気持ちとは違う、れんへの甘い感情をー…。