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神様とジオラマ
作者: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: ファンタジー 能力もの 
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*13*

「ご存知のとおり、場合によっては報酬が要ったりするけれど?」

 御影はああ、と長い声を漏らして片手で頭を掻いた。忘れていたらしい。

「ごめん、今回のはツケといてくんない? そんな大層な事じゃないしさあ」
「いいわ。……二倍、ね?」

 くすくすと笑った彼女は、また先程の見えない動作で椅子の上に移動し、我々にも席に着くように進めた。彼が座ろうと言うので私も言葉に甘える。

「ええと、ここらで化け猫が出るって話聞いたり……しない?」
「化け猫?」

 御影は短く、いきさつを話した。
 普段のごてごてした話し方をしないことから、彼は吉祥天という女性と話をするにあたり、少なからず敬意はあるように見える。ただの、恐怖からくる緊張感なのかもしれないが。

「なるほど、子猫が化ける……ねぇ。……核心を付く物ではないけど」
「心当たりがある?」
「親とはぐれた子猫がいるって話。奇妙なんだよね、これが」

 吉祥天はどこからか灰皿を取り出し、テーブルの上に置いた。長い息を吐き、煙が消えるまで、彼女は間を置いて言った。

「親猫、らしき猫。見つかったんだけど……食い破られてたのよ、お腹が」

 彼は何も言わなかった。私も何も言わなかった。
 彼女は続けた。

「そのあとで、ハラワタ咥えた子猫が見つかったって」


 吉祥天の建物を出ると、御影は難しい顔をした。

「これはちょっと残酷な話だな」
「そうね」

 子の親離れといっても、わざわざ殺すようなことはないだろう。
 私は少し、気持ちが悪くなった。彼らの話には容赦がない。

「今日のところは帰ろ……」

 彼の言葉が途切れた。

「うかと、思ったんだけど。そうもいかないみたいだ」

 私は彼の視線を追った。
 子猫だ。ブロック塀の上にあの子猫がいる。目はらんらんと黄色に輝き、体はみるみる大きくなる。
 私は、傘を上から持って構えた。

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