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神様とジオラマ
作者: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: ファンタジー 能力もの 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*22*

*

 建物の中に気を失ったイツキを寝かせ、俺と金堂は御影の下を訪ねた。
 音無の病気のこと。イツキの目のこと。聞きたいことは他にもたくさんあったが、それについては取り合ってはくれないだろう。

「いらっしゃい」

 カップのコーヒーを片手に扉を開いた御影は、微笑みを貼り付けて続けた。

「見えない少女のご相談?」

 隣で唾を飲み込む音が聞こえた。俺は動じない素振りで肯定する。
 案内された、初めに訪れた時と同じ部屋にはコーヒーカップが二つ用意されていた。待ってましたとばかりに湯気をうねらせて。

「あれは病気なんかじゃないよ。誰かの悪意の塊……そんな感じだね」

 無駄な装飾は一切せず、彼は本題を切り出した。

「悪意?」
「そう。コイだよ」

 故意。彼女には誰かに恨まれる部分があったろうか。
 暗い木のテーブルに目を落とし、思い当たる節を探すが見当たらない。口をつける気のしないコーヒーは湯気を出すのを止めていた。

「犯人捜しだ。僕に言えるのはこれくらいかな」
「犯人つったってよ、世間は広いんだぞ」
「そんなことはないさ」

 カップをを空にして机の上に置き、彼は嘲笑うように微笑んだ。

「世間なんてせいぜい、箱庭くらいの大きさだよ」

 御影は見掛けに寄らず多忙なのだそうで、労いの言葉を残して部屋を去った。冷めたコーヒーを飲み干して、俺と金堂も席を立つ。
 謎は解けないまま後味は悪かったが、彼のコーヒーは美味かった。

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