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神様とジオラマ
作者: あまだれ ◆7iyjK8Ih4Y  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: ファンタジー 能力もの 
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「世界は終わらない。終わらせない。やっと作ったんだ。幸せな世界だ」

 自分でも笑ってしまうくらいに、力のない声だった。自分が音無のためにやってきたことは、正しかったはずなんだ。

「聞いて」

 目の前の少女は、強い目で俺を見ている。

「偽物の幸せだって、音無は言った。この世界は神様の、君の自己満足だ。……もう、やめよう」

 やめてくれ。やめてくれ。

「やめよう。露木だって、本当は分かってる」

 夕月は一度息を吐き、そしてもう一度大きく吸った。

「『この世界が偽物だとしても、私は嬉しかった。露木くんの優しさが、嬉しかった。だからこそ、もういいの。……ねえ、思い出して。辛い世界だったから、汚れた世界だったから、不幸な世界だったから、私は露木くんを好きになれたんだよ』」

 音無の声が、夕月の声に重なっていた。

「…………は」

 なんだか力が抜けてしまって。

「はは……俺は二度、間違ったのか。俺は……。俺が、自分自身がこの世界に対する未練でできた存在だった」

 俺は夕月に告げた。

「終わらせてくれ」

 彼女はうなづいて、目を閉じた。
 俺も、目を閉じる。
 目の裏の音無はいつまでも、嬉しそうに笑っていた。

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