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*13*
りんごあめさん
よ、よかったぁあ!
個人的に体もそうしたかったけど、収拾がつかなくなりました・・・
予測不可能といっていただけると、嬉しいです!
五冊目『揺れ動いた若草』
―キブシの森の奥―
「ドーラグ!遊ぼっ」
「おお、エベリカ」
ナツは木にもたれかかりながら、暇をもてあましていた。
偶然レベリカが来たから、暇つぶしにはなる。
「ねえ、ドラグ。私、聞きたいことあるの」
「ん?」
「ドラグは、苦しくないの?」
心の奥底で、ズキンと音がした。
いや、音がした気がする。
「苦しくなんかねぇよ、こうやって世界をリセットするだけだからな」
「ふぅん…私は好きでこの作戦やってるけど…ドラグ、何か憂鬱なんだもん」
だから心配しちゃった。
レベリカの笑みが、妙に心に来た。
―言っただろ?本音を言えってさ。
間違いない、自分の声だ。
諦めかけて首元に、ナイフを押し付けている男―グレイが見える。
駄目だ、これ以上は思い出すな。
ふいにどこかで、止めろと命令が聞こえた。
「…ナツ?」
「あ、ああ。何でもねぇよ」
ドラコーンクローフィなんて知らない、ここには来たばかりなのだから。
もうすっかり、空は綺麗な星で輝いている。
心の端で金色の少女が、泣いていた気がした。
「ここだ」
「ふーん…」
興味が無さそうなグレイは、辺りを見わたす。
エルザは苦笑し、「ここで待っていてくれ」と扉を閉めた。
もちろん何処にも行かない、グレイが戻るのを待つだけ。
「…なんか、落ち着けるところだな」
グレイが好む部屋は、暖かさのある感じだった。
木製でそろえられた家具、タンスの上に乗った工芸品。
それらは全て、グレイの趣味でそろえられたものだ。
すると玄関から、声が聞こえた気がした。
『また、忘れるの?』
『私達、思い出して』
「……?」
不思議に思い、玄関の近くのタンスを見る。
綺麗なオッドアイの人形は、変にグレイの心を惹きつけた。
また、聞き覚えのある声が響く。
『置いていかないで』
『彼を助けてあげて』
「…アリア…アイリ…」
無意識に名前が、でてくる。
知らない筈だ、知らない筈なのに。
それは少し昔に、会った気がする。
シャン、自分の片腕に金属音が聞こえた。
手首を見ると、銀で作られたブレスレット。
『…どんな黒いものでも、綺麗なものを生み出せる』
『ありがとう、………グレイ』
「!!!」
パン、頭の中でシャボン玉が割れる感覚がした。
その隙を見計らって、エルザは扉を開ける。
「グレイ、覚えてるか」
「…エル、ザ」
グレイは、戻った。
目には大人びた、それでいて幼さ残る顔がエルザを捉える。
「…俺、魔法かけられて…」
「記憶の退化と、愛情の激減。それをルーシィとお前はかけられていた」
グレイが戻ったことがあまりに嬉しかったのか、エルザは強く強く抱きしめる。
「苦しいっつーの」とグレイは、苦笑をして見せた。