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*15*
「…な、何よ!苗字で愛情があるとかっ、決めるのは可笑しいわよ!」
ハートフィリアは、友情や愛情といった意味がこめられている。
だがそれだけの意味で、自分にも愛情があるとは思って欲しくなかった。
「そういうのじゃない、君に思い出して欲しかった。君はどれだけ、昔に窮屈な日々を送っていたのか」
長い間、だ。
籠の中の猛獣のように躾けられて、すぐに外に出る事を許してくれない。
それに何度も、涙が零れ落ちた。
「…」
「そして、君は逃げることに成功したんだろう?」
「……うん」
か細いルーシィの声が、ロキに伝わる。
彼女はもう分かっているはずだ、だが後一歩が踏み出せない。
「そしてハルジオンに着いて、ナツと出会った」
「………う、れし…か…た」
ルーシィの目からは宝石のように輝く涙がボロボロと零れ落ちている。
ほら、彼女はこんなにも優しく美しい涙を流せる。
それでも彼女が、自分には愛情がないというのなら。
「嬉しかったんでしょ、『妖精の尻尾』に…仲間として入れた。自分の絆が、出来上がった」
「でも、今…破られた…」
「ナツがそんなすぐに破られるかな、ファントムに君を売らなかったナツが」
誰よりも仲間を思うナツは、ルーシィの憧れだった。
何があっても仲間が戦える状況じゃないときは、自分で戦う。
気絶させてでも休ませる、ルーシィはその行動を絆だと知っている。
ガルナ島でも、楽園の塔でも。
グレイやエルザを助けるために、取った行動は少し乱暴だったがそれがナツなりの思いやりなのだ。
死なせたくないから、泣かせないためにも。
いかにもナツらしい理由で、とても優しく感じる。
「わ、たし…」
「まだ間に合う、ナツを止めにいけるのは君たち最強チームなんだ」
そして僕は、とあるお姫様を手助けだ。
そう言ってウインクするロキの目は、とても穏やかだ。
ふざけた言い方に聞こえるけど、ルーシィにはその真意が分かる。
少しでも勇気付けるために、ルーシィを励ましているということが。
パシャンッ
何かがはじけて、光が溢れた気がした。
「ナツを…助けるんだ…、見失った道を創ってあげるんだ!!」
もう何も屈しない、屈するわけがない。
仲間が道を外したならば、仲間が道を直してあげればいい。
ルーシィの瞳に映るのは暗闇なんかではない、光が映し出されていた。
「僕が君の手助けをするよ」
「ありがとう…ロキ」
やっと名前で、呼んでくれた。
ロキは静かに星霊界へと、自ら扉を閉門する。
きらきらと輝きながら消えていく光は、ルーシィの思いと似ていた。