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*33*
「く、そ」
フラフラと足元が揺れる、グレイは目を腕で覆った。
こうなったら難度は高いが、魔力で探知するしかない。
「……」
どうしても、上手くできない。
普段このようなことをやらないから、という理由もあるが。
グレイは他の魔力に掻き消される感覚が、体の髄を通り抜けた。
「この魔力…、ぐあっ」
後ろから蹴りを入れられ、グレイの体は地を滑った。
手を片手でまとめられるが、造型魔導士にはチャンスだ。
そう思ったが。
「記憶の留め金を失くせ」
拘束しているドロップの片腕を通って、グレイの体にドロップの魔力が流れた。
頭のどこかで、パシンと音がする。
痛い、体が痛くて耐え切れない。
「あ、ぁ。ああ…」
燃えさかる家々
目の光を失った両親
瓦礫の隙間の片手
―――厄災の悪魔
バキリと、どこかで割れた音がした。
「う、あぁあああああ!!!!」
「記憶の留め金を失くせば、嫌な記憶は溢れ出るからな」
苦しいだろう、自分はもっと苦しかった。
コイツの苦しみよりも、ずっとずっと苦しくなっていた。
「お前は、幸せだよ!こうやって、記憶で泣けるんだ!!!」
「ふっ、がっあぁ!はぁっ、はひっあぁあああ…!」
酸素を吸いすぎたのか、グレイは過呼吸になっている。
それをナツは冷めた…否、悲しみながら傍観するしかできなかった。
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