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*34*
十二冊目『似た者同士』
エルザは、酷く大きい傷が出来た腹を押さえる。
血が溢れる、めまいがする。
その条件は、ミラーリも同じだった。
「う、ぐ…魔力が、上がっているのか…?」
「負けない…負けない…」
根性だけで立っているミラーリは、獣に近い瞳でエルザを見据える。
エルザはその瞳に身震いし、刀を持つ手を震わせた。
装束の鎧は、もうボロボロだ。
「私は、負けない!地獄に、負けない!!」
鏡から現れる、魔法の銃弾にエルザはただ避けるしかない。
肩を打ち抜かれる。
アドレナリンが分泌して麻痺しているのか、さほど痛みは感じなかった。
「地獄…この世界は、確かに地獄、だ。だが、それに立ち向かうことが、大切なのだろう?!」
「分からないでしょう?貴方には。地獄から抜け出し、ギルドに入って、幸せな日々」
―この少女の瞳に映るのは、何だろう。
「私は違った。地獄から抜け出しても、することなんて何もない」
―少女の濁った瞳に映るのは、何だろう。
「傭兵部隊にいても、苦しみは変わらない」
―少女は、愛されたかった。
「この地獄は、戦争ばかり。疲れたの」
―少女は、誰かに見られたかった。
「何かを始める戦争なんて、何かを得るわけでもない。奪うだけ」
―少女は、ただ欲しかっただけなのだ。
「なら何かを得られる、終わりを創ればいいのよ」
―居場所が、欲しかっただけなのだ。
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