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*37*
十三冊目『優しく、そっと』
「離れろぉ!」
「っく、」
あまりの力の強さに、エルザは突き飛ばされる。
息が荒い、興奮しているようだ。
「…複雑な気分だな、こうも昔の自分と似たような者が現れるとは」
「!」
エルザの瞳の奥は、偽善なんかでは出来ていなかった。
優しげに細められる目が、見ていられない。
「私も昔は、そう思っていたさ」
「……」
ピキリと、何かがひび割れる音が響いた。
それはおそらく、心の中でだろう。
「…支えてくれる、仲間がいた」
「私には、いない」
「私が支えよう」
「!!」
予想外の答えに、ミラーリは目を見開く。
エルザはさも当然の如く、ミラーリを抱きしめた。
不思議にも今度は、抵抗する気が全くといっていいほど起きない。
(あた、たかい)
「お前には私がいる、そう覚えてくれ」
「や…」
否定の言葉が、漏れた。
エルザの澄んだ瞳が、ミラーリを直視する。
「貴様の思いは、強い。それで私の仲間が傷つくのなら、許すわけにはいかない!」
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