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*54*
「…お前の親のこと」
「!お前、何で知って…」
グレイが、膝を着く。
ああ、目線が同じになった。これなら首も痛くない。
「マグノリア図書館の新聞ファイル、お前ソックリの子供がいた」
「…それがどうしたよ」
「あの真実が他の新聞ファイルを見て…わかったんだ」
真実も何も、簡単な話じゃないか。
父が、おかしくなったんだ。
「そのとき、『腐病』が流行っててな。お前のいた村では数人が感染されていたらしい」
「…」
「よく迫害されていて、ろくに家から出れず」
「…」
ドロップは何も喋らない。
「お前の父さんとか、母さん。何か腐臭しなかったか?」
「……した」
「…お前を、感染させたくなかったんだ。腐病は、死人からはかからないから」
家族全員、賛成したらしい。
ドロップがいないときに、全員が殺された。
父は、ドロップを目の前にして―死んだ。
「…、」
「だから、お前は不運が重なっただけだ」
「じゃあそういうことにしとくよ…でも、それがなんだ?」
ドロップの目から、涙がこぼれる。
「もう戻れない…戻れないんだよ!何もかも、最初からやり直さないと駄目なんだ!!」
「俺だって本当の家族はいない」
グレイは、ドロップに銀のブレスレットをつけた。
これはレイガが、最後に残した形見だ。
茨姫の時、レイガは自分に体に埋め込まれた爆弾から、グレイを最後に助けてくれた。
そのとき、これだけが残ったのだ。
「これ、やるよ」
「え、」
「レイガの形見だ」
にこりと、グレイは笑う。
「なあ、ギルドに来いよ。本当の家族じゃねぇけど、皆が迎えてくれる」
「…俺が、ギルドに…」
「ああ、それで皆で一緒にいようぜ!」
ドロップの涙が溢れる。
そこでは、泣き声を押さえ込む少年がいた。
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